cuc_V&V_第54号
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14図9図11図13図10図12図14説明を受け、宿直室などを見学し、吏員の勤務時間についてもヒアリングすることができた。また、消防艇にも乗船し、海上や河川からの消防活動についての説明を受けた。見学会は半日程度だったため、吏員の業務を全て把握することは難しかったが、車両や資機材は現場で適切且つ最小限に吏員のリスクを抑えるためのものであり、吏員は自身を特別な存在という認識しているのではなく、誠実に業務と向き合うことに日々注力されていることの一端を知ることができ、先入観だけでテーマを設定しようとしていた段階から前進することができた。見学会を踏まえ、デザインの検討を進めたが、結果的にはコロナ禍で大学の活動が制限され、当初の予定が遅延し、デザインの提案に至ったのは2021年11月末となった。制作に取り組んだゼミ生は4名、そのうちの2名が2案を制作し、提案したデザイン案は計6点となった。ゼミ生が検討した各デザイン案の趣意とその印象について、(図9)は淡々と業務にあたる吏員と、やりがいを感じさせる表情の吏員をメインにしながら吏員の服装の配色を用い、吏員を引き立たせる画面構成となっている。(図10)は吏員の写真をイラストのようなエフェクトで加工し、画面分割やパターンを用い、やや可愛らしい雰囲気を演出することでメインターゲットを女性に向けている。(図11)は、大学生は普段よりコミックを見る機会が多いということから、コミックのコマ割りのように画面を分割し、アメリカンコミック的な配色で強い印象を表現しようとしており、大学生の目を引くものとなっている。(図12)は女性吏員の募集が望まれているという点で、男女で画面を二分割し、それぞれが活躍されている場面を紹介するデザインとなっており、業務内容よりも男女という点への絞り込みが感じられる。(図13)は近年多くのキャラクターが登場するゲームのポスター等で用いられる細長い図版でキャラクターの多さを見せる手法を参考に、訓練中の写真などを大胆にトリミングし、余白を活かしつつ写真が持つ方向性を強調したデザインとなっている。最後に(図14)は見学会でヘルメットやボンベを装着した学生が制作したもので、その重さを体に感じながら、前へ進もうとする吏員の力強さを、表情と配色のみで表現したもので、人の骨格に従わない勢いのある表情に実際の体験から得た感覚が感じられる。これら6案のデザイン案は消防局内で検討され、事務方だけでなく、現場の吏員へのアンケート調査も行われた。その結果、一般的なデザインコンペのように、1案に絞られると予想していたが、どの案も高評価を得て、4名それぞれのデザイン案が採用となった。採用案は(図9)、(図10)、(図11)、(図14)である。最終的に完成したデザインは業務内容が見えにくい、ヒーロー感が表現されてしまっている点は否めない

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