cuc_V&V_第54号
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15図15図17図16図18図19が、それぞれの学生がテーマを絞り、そのテーマを表現するためのコンセプトを設定したことで、依頼されていた新卒生の目を引くという点では、4案採用という結果から、一定の評価を得たものと考えられる。ポスターデザインの依頼を受けた場合、依頼者からは伝えたい多くの情報が提供される。また、今回の場合は見学会を実施したことで、ミーティングだけでは得ることができなかった情報や自身の身を持って体験した情報が追加されることとなった。紙メディアで提供された情報を伝える場合、雑誌などのページで展開できるものは多くの情報を伝達することができるが、ポスターのようなひとつの画面のみで情報を発信するものは情報の絞り込みが重要となる。情報の取捨選択、それを伝えるためのテーマやコンセプトの設定といった点で、学生にはとても貴重な機会になったのではないだろうか。採用されたポスターはA2サイズで印刷され、市川市内の消防署及び出張所に4案がランダムで掲示されており、また、市川市のウェブサイトにも掲載されている。(図15/デザイン案プレゼン風景、図16・17/ポスター掲示)前項の事例では学外からの受注制作についての報告だったが、本項では学部内のゼミ合同プロジェクトを報告したい。このプロジェクトでは筆者(グラフィックデザイン)のゼミと、政治・社会経済学を通して地域学を学ぶゼミが協働し、街づくりシミュレーションゲーム(シリアスゲーム)を4タイトル、制作した。このプロジェクトで制作したゲームは単に娯楽のためのものではなく、ゲームを通して、街づくりや行政、企業に関わる仕組みを理解するためのもので、ゲームの構成は地域学を学ぶゼミ生が企画、設計し、そのゲームで使用するカードやボード、ルールブックのデザイン制作に筆者のゼミ生が取り組んだ。プロジェクトの第一段階として、企画を立てた学生が手描きで作成したカードやボード、コマやチップの代わりに身近な文具を用いて、ゲームをプレイしつつ、ゲームの内容を理解する検討会(図18・19)を2021年4月に設けた。そこでは、企画や構成がある程度完成形に近いゲームが紹介され、どのような意匠を施すかを検討する機会だと考えていたが、実際に説明を受け、プレイすると、ルールが複雑で説明されても理解しきれない、プレイ時間が長い、想定されているアイテムが使いにくい、接戦になりにくいといった意見が筆者のゼミ生から出された。これは企画を担当した学生の企画力や構成の検討が不足していたということではなく、単なる娯楽にとどまらないゲームにおいて、学びの要素を踏まえつつ、ゲーム性を高める難しさの4.2ゼミナールでの取り組み事例紹介②

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