cuc_V&V_第54号
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288 小口(2020a)では、2019年度に実施した公募型AL「農村ツーリズムin岩手県花巻市大迫町」を事例として取り上げ、担当教員の役割や立ち位置などについて分析した。9 今後も研究発表会をオンラインで実施するかどうかは、検討の余地がある。コロナ禍がおさまれば対面実施も視野に入れるが、オンラインのほうが学生、教職員ともに負担なく実施できるというメリットもある。資料:筆者作成注:※は、公募型ALの発表である。表4 オンライン研究発表会のタイトル一覧(2)コロナ禍における主体的な学びの模索2つ目は、「事前学習」「事後学習」を実施することである。事前学習は「なぜ、この活動が必要なのか」などの動機付け、事後学習では活動の振り返りを行い、その中身を改善、発展させていく。こうした流れは、 「学びのプロセス」と言い換えることができ、後ほど詳しく述べる。3つ目は、企画した担当教員が指導できることである。ALの主導者は学生で、教員はその「伴走者」である。この関わり方は、学生に全て丸投げにするという意味ではない。そうなると、責任を負ってしまった学生が疲弊していくという事態を生んでしまいかねない。担当教員は学生がスムーズに活動できるように社会的、物理的な環境を整えながら、直接的、間接的なサポートを行い、一当事者として学生とともに活動することが求められる8。2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響に伴い、フィールドでの活動が多い公募型ALは一部を除いて中止に追い込まれた。2021年度はコロナ禍が続く中、活動を模索し、徐々に再開した。こうした状況のもと、AL委員会では「学生の自発的な学びをサポートしたい」という思いから、「オンライン研究発表会9」を企画した。目的は、「オンライン上でALを実施する」「人間社会学部での学びをまとめ、発表し、学びを共有する」「今後の学業や活動につなげていく」ことである。学期ごとに年2回開催し、全学年を対象に誰でも参加できる(個人、団体いずれも可)。発表時間は10分で、パワーポイントを使用する。研究テーマの条件は、以下の3点である。① 「SDGs」「ソーシャルビジネス」「サスティナビリティ」をテーマにする。② 人間社会学部のコンセプトである「人にやさしい社会」の実現を目指す。③ 人間社会学部での授業やゼミ、ALなどの内容を踏まえる。 研究内容のポイントは、以下の3点である。① 設定したテーマにおける現状と課題を調査する。② その課題解決に向けた具体的なビジネスプラン、もしくは政策提言を考える。③ 実際にそのプランや施策を実施することの効果を考える。募集の際は、関心のある研究テーマ、実際に取り組んでいる活動を分析し、掘り下げ、発展させることを強調して伝えている。そのため、AL委員会に所属する教員がアドバイザーを担い、研究のサポート体制をつくった。アドバイザーの割り振りは、なるべく扱うテーマと教員の専門が重ならないようにし、異なる視点からアドバイスを送るようにしている。例えば、ALの発表の場合、その担当教員ではない教員がアドバイザーとしてサポートする。オンライン研究発表会では、アドバイザー教員の指導や他の研究発表を聴くことができ、貴重な学びの機会になる。発表会当日は、AL委員会の教員が発表ごとに講評、終了後に審査を行う。審査員は、AL委員会の教員に加え、学部長やソーシャルビジネスを専門にする教員、事務課職員である。審査内容は、「内容」「姿勢」「プレゼンスキル」について5段階で評価する。その後、学部長などが全体講評を行う。終了後は審査員のコメント、発表スライドなどを収めた報告書を作成し、参加学生に配布する。表4は、オンライン研究発表会のタイトル一覧である。2020年度から開始し、これまで計20本の発表があった。そのうち、公募型ALの発表は7本になる。参加者が最も多かった1回目は、個人やゼミ活動で自らテーマを設定した発表がほとんどであった。コロナ

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