cuc_V&V_第54号
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29資料:筆者作成図1 ALにおける学びのプロセス(3)「学びのプロセス」の重視禍で全ての授業がオンラインになり、活動が制限されていた当時の状況が反映されている。2021年度以降は、ALの発表が大半を占めている。ALは、単なるイベントを手伝うスタッフではなく、準備されたプログラムに従って動くものでもない。学生自身の手でつくり上げていくものである。ALに取り組む学生のモチベーションとして、「楽しさ」は重要である。その楽しさがなければ、とりわけ常時活動型のALは継続できない。その源泉は、友達との関わり、仲間づくり、地域や企業の人たちとのコミュニケーション、プロジェクトや企画運営のやりがいと達成感、メディア取材のように外部からの評価など様々だろう。一方で、大学側は教育の手法としてALを位置付けている。そのような楽しさと同時に、「学び」も深めていくことが求められる。この学びが活動の充実化、さらには楽しさにつながっていくことが理想的である。そのためには、活動をやりっ放しにせず、学びにつなげる仕掛けやアプローチを準備しなければならない。学生の様子を見ていると、活動の当事者としてプロジェクトの運営に忙しくなり、立ち止まって振り返る、すなわち「言語化」する機会がほとんどない。正課科目の場合は、授業内でグループワークなどを実施し、振り返りの機会をつくることができる。ただし、非正課の場合は学期の区別なく、走り続けている状態で、自ら「学びのプロセス」をつくることが難しい。この点については、学部として取り組むことができず、課題として共有されていたが、コロナ禍での主体的な学びの継続を目的に始まったオンライン研究発表会が、結果としてALでの学びを深める機会になっている。オンライン研究発表会を有効活用しながら、ALに研究の視点を取り入れることで、関心のあるテーマの問題意識を掘り下げることができ、活動にも説得力が増す。また、小学校、中学校、高校の教育現場では、SDGs が一般的に扱われている。「SDGs世代」という言葉があるとおり、SDGsをすでに知っている世代が大学生になる。それを前提に大学教育も組み立てていく必要がある。ところが、学生がそのような言葉について理解しているかといえばそうではない。筆者が担当する現代社会論の小レポートで、「SDGsについて学んだことがあるが、なぜ必要なのか、具体的にどのような活動が広がっているのか知らなかった」という意見が散見される。大学入学前にSDGsや関連する言葉を知っていたとしても、その中身、背景、意義、実践までは学んでいない。大学では、高校までの学びを深め、さらにALで課題と向き合う当事者として実践し、自身に落とし込んでいく作業が重要になる。研究的な視点からそのようなALを振り返り、分析する姿勢は欠かせない。図1は、ALにおける学びのプロセスについてである。中間振り返りと全体振り返りは、オンライン研究発表会で実施する。中間振り返りでは、春学期に行った活動の課題を整理し、秋学期以降はその課題と向き合い、改善する。その後、全体振り返りを行い、翌年の活動やプログラム全体にフィードバックし、より魅力あるALに発展させていくという流れである。また、AL委員会や学部事務課によるフォロー体制の構築も求められる。この点については、現時点でうまく対応できていない。学生の募集を終えて活動が始まると、外部と協働しながら学生と担当教員間でプロジェクトをまわすことになる。見方を変えると、そこは第三者の介入がほとんどない閉鎖的な空間でもある。「学生と担当教員が一緒に活動を行う」と言いつつも、教員の発言や立場が強くなってしまうことは容易に想像がつく。こうした非対等な関係性は、教員が無意識のうちにつくられている場合も多い。学生と担当教員間で何かトラブルが起きたとしても、学生は限られたネットワークの中で解決が求められ、身動きが取れず、活動から離脱してしまうことも

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