cuc_V&V_第54号
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3111 小口(2021)では、日々の食卓と社会のつながりを整理し、どのように持続可能な食卓が実現できるか分析した。これは、筆者がいちかわごちそうマルシェやフードバンク学生チームを発足させた背景になる。参考文献小口広太(2020a)「農村ツーリズムin 岩手県花巻市大迫町の活動記録:1年目の成果と課題」『千葉商大論叢』58(1)、pp.189-199小口広太(2020b)「大学と地域の連携活動をめぐる現状と行政の役割に関する一考察:岐阜県中津川市『域学連携事業』を事例として」『千葉商大論叢』58(2)、pp.181-196小口広太(2021)『日本の食と農の未来:「持続可能な食卓」を考える』光文社新書桜井政成(2007)『ボランティアマネジメント:自発的行為の組織化戦略』ミネルヴァ書房白石克孝・西芝雅美・村田和代編(2021)『大学が地域の課題を解決する:ポートランド州立大学のコミュニティ・ベースド・ラーニングに学ぶ』ひつじ書房千葉商科大学人間社会学部編(2020)『はじめての人間社会学』中央経済社中央教育審議会(2012)「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」文部科学省中井俊樹編著(2015)『シリーズ 大学の教授法3 アクティブラーニング』玉川大学出版部成田秀夫(2016)『アクティブラーニングをどう始めるか』東信堂溝上慎一・成田秀夫編(2016)『アクティブラーニングとしてのPBLと探求的な学習』東信堂山浦陽一(2022)「地域運営組織とモチベーション・デザイン」中塚雅也・山浦陽一編著『地域人材を育てる手法』農山漁村文化協会、pp.192-213的な仕組みをつくることではないだろうか。そのためにも、「モチベーション・デザイン」の視点から、前述した学びのプロセスがより重要になる。ALは学生の主体性を伸ばし、発揮させる教育手法のひとつである。ALの成果が発揮されるのは、就職後、そこで何ができるかではないだろうか。例えば、SDGsに熱心な企業に就職が決まり、その取り組みを発展させていく、就職した企業でソーシャルビジネスに関する企画提案ができる、企業が取り組む社会貢献活動を積極的に担うことなどが想定できる。地域で活動する団体などに所属して二足の草鞋を履き、地域活性化の担い手になる、日々の暮らしで持続可能な社会に向けて行動に移すこともひとつの姿である11。大げさなことを言えば、ALでの経験を活かし、地域や社会、企業を変える人材になって欲しいというのが一教員としての率直な願いである。大学での学びがすぐに役立つ人もいれば、10年後、20年後に役立つ人もいる。さらに言えば、就職先だけが帰属先ではない。地域に生きる一員として、社会に生きる一員として何ができるか考え抜く力を身に付けることができる広い視野を持った教育にしたいと日々考えている。その先にあるのは、「地球市民」という感覚である。現代社会は、目まぐるしく変化している。SDGsやサスティナブルという言葉は浸透しているものの、いまだ数々の犠牲の上に私たちの暮らしがある。社会の動向を俯瞰し、見極めながら「人にやさしい社会=持続可能な社会」に向けてそれぞれの現場で考え、行動に移すことができる人材が求められる。人間社会学部のALは、そのために必要ないくつもの「引き出し」を提供してくれるだろう。6むすびにかえて

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