cuc_V&V_第54号
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34を開始する。この時、薩摩藩は琉球王国の独立を保ちつつ、その一部であった奄美群島については、江戸幕府に対しては琉球王国のものとしつつも、実質的な支配権を割譲させている。江戸時代を通して奄美群島は薩摩藩による植民地的な支配を受け、島民の生活はさまざまな制約を受けることになった。農業ではコメではなくサトウキビ栽培を強要され、不平等な条件での取引を行われ、島民の生活は困窮した。このサトウキビの栽培は、当時の日本では薩摩藩だけが独占している事業であり、薩摩藩はこのサトウキビ(黒糖)による商売で莫大な財を築いており、この収入が幕末における薩摩藩の活動を大きく支えることになったといわれている。明治維新後、沖縄とともに奄美群島は「日本」の一員となるが、第二次世界大戦後には再び「日本」から離れ、今度はアメリカによる統治を受けることになる。戦後、アメリカは北緯30度以南の島々を直接統治した。奄美群島では、本土復帰の運動が盛り上がり、島民一丸の陳情活動の成果もあり、沖縄県よりも早い昭和27年に復帰し再び「日本」となった。奄美群島は、その歴史的な経緯から独特な文化を保持している地域である。沖縄を中心とする琉球の文化の要素もあれば、本州や九州のヤマトの文化もみられるが、琉球ともヤマトとも違う文化をもっている。奄美大島だけでも、地域によって踊りや島唄が異なるなど島の環境を反映した特徴がみられる。奄美大島を代表する文化としては、世界三大織物の一つとされる大島紬が挙げられ、かつては奄美大島の一大産業として繁栄を築いてきた。また、食文化では鶏飯やあぶらぞうめんなどが代表的である。このように、「日本」にありながら独特の文化や豊かな自然環境を持つ奄美大島は、「日本」という国を理解するのには適していると考えられる。さらに、島の大きさに対して調査対象地点間の距離が近く、短時間に多くの調査が可能であること、調査時にインタビューする対象となる人が限られるために協力を得やすいことなど、フィールドワークを円滑に行うための諸条件が整っていることも奄美大島に決めた大きな理由である。奄美研修は、2単位科目として設置されている。学部設立当初は国内短期研修、カリキュラム改定後は国際教養学概論Ⅲとして運営している。現地での2泊3日の研修と関連して、事前の奄美の概要や調査方法についての講義と、事後の発表を中心とした講義を行っている。現地での行動、調査は4名のグループで行い、調査項目の決定や発表もこのグループ単位で行う。事前講義は概ね7つの内容の授業を実施している。2022年度の内容は、1.研修の意義、2.奄美の概要について反転授業、3.奄美の自然環境、4.グループワークの手法、5.インタビュー調査の手法、6.グループワークでの調査内容の決定、7.ゲストスピーカーによる講義である。事前講義の特徴は、大学1年生であることを踏まえ、研究の手法であるインタビュー調査についての基本的な事柄を教えている、グループワークを円滑に進めるための手法や作法を教えている、ゲストスピーカーによる現場からのレクチャーを受ける、の3点である。インタビュー調査の手法の講義では、人に質問するときの基本的な姿勢やマナーから、その質問がオープンであるのかクローズドであるのかなどについて教えている。特に、短時間しかない場合にどのように答えを聞き出せばよいのか、効果的な質問の方法について重点的に教えている。グループワークの手法は、そもそもグループワークとは何かという点が重要としている。仲の良いもの同士で楽しくワイワイするのではなく、限られた時間内に効率的にもっとも効果的なアイデア、考えを出すことが重要であると教えている。当然ながらサボらない、迷惑をかけない、積極的に参加するなどについても指導を行っている。ゲストスピーカーによる講義では、設立当初より行っているのが航空会社による講演である。国際教養学部に入学してくる学生の中には、将来の進路として航空業界や観光業界を考えている者が一定数いるため、航空会社の仕組みや使命について説明をしていただいている。本研修ではLCCを利用しているため、設立時には成田空港においてVanila Airから講義をいただき、Vanila AirとPeach Aviationとの合併後にはPeach Aviationに講義をお願いしている。ANAやJALといったフルサービスキャリアと違い、LCCにはLCCなりの企業運営の仕組みがあることや、航空会社として地域創成への協力など社会貢献についても講義を行っている。コロナ禍によりオンラインでのつながりが普及した現在は、奄美大島の方によるオンライン講義も実施している。2022年度は、奄美大島の大島紬村の会長に3講義の方法

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