cuc_V&V_第54号
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35奄美パーク奄美海洋展示館大島紬村奄美の文化や歴史についての講義をしていただいた。奄美大島の盛衰を体験してきた人による歴史の講義は、一つ一つの項目が重く感じられ、苦難の歴史をより詳しく説明していただくことができた。事後講義では、現地調査から帰ってきてから調査した事柄をまとめ、発表を実施している。現地研修が11月の実施時には、1Q2Qの授業で基礎的な発表のスキルが身に付いていることもあり、ポスターセッションを実施した。各グループがA0サイズのポスターに研究成果をまとめ、1号館1階に掲示し、コアタイムを設定して質疑応答を行った。ポスターはコアタイム以外にも1週間掲示していたため、他学部の学生や教員にも見ていただいたことだと思われる。また、何名かの他学部の教員からコアタイム中に質問をいただいたようで、学生は緊張しながらも良い経験ができていた。コロナ禍により現地研修を4月の入学式直後とした2021年度以降は、学生のアカデミックスキルが高くないこともあり、ポスターセッションではなく、動画撮影による発表としている。発表方法も、パワーポイントによるスライド作成ではなく、スケッチブックへの手書きにより作成したフリップを使った簡易的なものとした。自らの姿を撮る動画撮影には慣れている世代ということもあり、どのグループも工夫を凝らした動画を作成している。2泊3日の行程による奄美大島における現地研修は、奄美の文化、自然を体験し、それらに関係のある人々へのインタビュー調査などを実施できる施設を中心に組み立てている。また、利用するフライトのスケジュールにより現地での滞在時間、利用可能時間が変化するため、多少のアレンジが加わる。訪れる施設としては、奄美パークおよび田中一村美術館、奄美海洋展示館、大島紬村、原ハブ屋、奄美マングローブパーク、黒糖焼酎製造の蔵元が中心である。また、宿泊施設内では島唄や八月踊りのゲストを招いて体験をしている。以下に代表的なものをまとめる。奄美パークは、国際教養学部の前学部長である宮崎緑教授が園長を勤められている鹿児島県の施設である。奄美大島だけではなく奄美群島全体について紹介する展示が充実している。奄美の8島の特徴を展示しており、奄美全体について知ることができ、文化や自然についての理解を図ることができる。奄美空港から近いこともあり、多くの観光客が訪れる奄美の入り口として機能している。また、奄美パークには田中一村美術館も併設されている。奄美パークでは、園長の宮崎緑教授から奄美大島の概略と国際政治学的に見た奄美の重要性についての講義を行っている。講義終了後に、学生はパーク内の職員などに自らのグループの研究テーマに関するインタビュー調査や関連する展示物の記録を行ったりする。奄美市の大浜海浜公園に設置されているサンゴ礁の生態系を中心とした展示施設である。サンゴ礁の配置された水槽の中には奄美大島に産卵におとずれるウミガメが泳いでおり、奄美の豊かな海が再現されている。また、2011年に発見された海底の砂に不思議な模様を作るアマミホシゾラフグに関する展示もある。展示館のホールでは、奄美の自然に関する専門家による講義を行っており、世界遺産に至る過程を踏まえた奄美の豊かな自然とその保護についてレクチャーを受ける。講義後には学生たちが熱心に質問をしている。奄美大島の伝統工芸である大島紬の製造元であり、製造工程を見学することで、大島紬がなぜ世界三大織物の一つとされるかが理解できる場所である。大島紬は、繊細で丈夫であるが、それは複雑で長い工程が必要であるからである。大島紬は、先に糸に柄をつける先染めをする織物であるが、この柄をつける染色作業も時間がかかるものである。さらに、先染めされた糸を順番通りに織り上げて柄を再現するため、緻密な作業を地道に進めていくことが必要である。本研修では、大島紬の製造工程を見学するとともに、染色作業の中心である泥染の工程を体験し、各自がオリジナル柄に染めたハンカチの製作を行っている。泥染は、大島紬を特徴づける染色方法である。鉄分の多く含まれている「泥田」に繊維や布を漬け込むことで、大島紬独特の黒い色合いを出すことができる。この泥田の中に学生は素足で入り、自らのデザインしたハンカチを泥田に漬け込む作業を体験する。イメージしていた柄が再現できているかどうかは染色が終わるまでわから4現地研修

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