cuc_V&V_第54号
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46ステージ1.(コンピューター化)。繰り返し作業や高精度作業はコンピュータにより自動化される。しかし、CNC付きフライス盤のように、デジタル化で加工精度が高いが、設計システムと連結されていないため加工データの挿入が人手でなされる。個別のITシステムは、すべてがERP(Enterprise Resources Planning)に統合されていない。つまり、個々のオペレーションやシステムはコンピュータ化されているが相互に連結されていない状態にある。ステージ2.(連結化)。個別のシステムが部分的に連結している状態。設計のCADデータは製造のCAMと接続して自動的に挿入される。OT(Operational Technology System:制御技術システム)は、IT(Informational Technology System:情報技術システム)と結合し始めているが部分的である。IP(インターネットプロトコール)は普及し、IPv6の出現でIPv4より飛躍的(340潤、潤は100京×100京)にアドレス数が増加した。ステージ3.(見える化)。工場全体のデジタル・モデルを構築している。IoTによりオンライン、リアルタイムでオペレーション情報を収集し、工場で今何が起こっているかを把握(稼働状況の見える化)している。デジタル・シャドー(CPS)が稼働している状態。ステージ4.(透視化)。ある異常事態が何故起こっているかの理由(Why)の真因分析をする。そのために大量に収集されたデータをビックデータ手法で、その意味や文脈を分析する。ステージ5.(予知能力化)。将来に関するさまざまなシミュレーションを行い、最もあり得るシナリオを見つけることが出来る。デジタル・シャドウと組み合わせ、そのシナリオがどの位の確率で起こるかを知ることもできる。これにより企業は将来の状況を予測し、適切なタイミングで適切な手を打つことができる。但し、対策を打つのは人手による。ステージ6.(自律化)。デジタルシャドウの継続的な適用により会社は幾つかのタイプの意思決定をITシステムに任すことが出来る。これにより変化の激しい環境に素早く順応可能となる。自律化のレベルは意思決定の複雑さとコスト・ベネフィット比により決まる (Schu,et.al,2020)。インダストリー4.0と3.0の違いについて理解することは重要である。日本の大手製造業はインダストリー3.0の範疇であるファクトリー・オートメーションは先進レベルにある企業が多いが、インターネットを介してコンピュータを使うクラウドの使用は限定的であるようだ。日本はPLC を中心とするOT(Operational Technology)市場に優位性を持つがCPSを含むIT(Information Technology)市場を視野に入れた展開が今後必要と指摘されている(ものづくり白書、2021)。完全自動化工場思想では人間疎外が危惧されたのと異なりインダストリー4.0では、人間の能力は計画、管理監督、統括などに重要とされ人間作業者との協労が志向されている(Fraunhofer IAO,2013)。このようにCPSの活用等これまでの自動化製造とは次元が異なるものと位置付けられている。インダストリー4.0を代表とする製造業のデジタル化は多面的であり、これまでの製造戦略と相対する価値観が多い。多くの中小業経営者にとってわかり難く混乱を招く原因と推測される。本章において、1.トヨタ生産方式をベースにしたLean生産方式、および、それをデジタル化したLean 4.0 (VDMA,2018)、2.設計思想を示すアーキテクチャー戦略、3.近年著しく普及が始まった製造業のサービス化、そして、4.多面的な顧客要望を満たすためのプラットフォーム戦略について整理することでインダストリー4.0の特徴となるこれまでとは異なる価値観を考察する。最後にインダストリー4.0が狙う5.顧客価値について考える。これらの要因を考察することで中小企業経営者へのインダストリー4.0導入戦略に関するアンケート調査の項目選定の参考とする。3-1 トヨタ生産方式とLean 4.0トヨタ生産方式は第二次世界大戦の敗戦で、日本の生産性がアメリカの9分の1であることを知らされてからスタートしたといえる(大野、1978)。基本思想は「徹底したムダの排除」でジャストイン・イン・タイムと自働化(ニンベンのついた)の2本柱からなる。その思想は営々と改善に改善を積み重ね組織能力を構築する。現在も進化し続けている。大部屋によるすり合わせ、垂直統合による取引、自前主義、継続的改善などによる品質(Q)、コスト(C)、納期(D)を3.先行研究

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