cuc_V&V_第54号
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50業外を含む「サプライチェーン」と「他社との提携(エコシステム)」。大項目の4.で現状の「稼働中のITシステム」を、「受注売上管理」「購買管理」「生産計画」「在庫管理」「人事管理」「財務会計」「売上管理」「顧客管理」「ERP(企業資源計画)」「CAD/CAM」「グループウエア(Teams, サイボウズ等)」。この項目は、YesかNoの二者択一で答えてもらった。 5.は「インダストリー4.0の導入阻害要因」を「投資額が高い」「運用コストが高い」「運用人材不足」「問題解決能力に期待できない」の4つで評価。6.は人間作業として、「何らかの改善活動」と「小集団活動(全員で定期的発表)」の2つ評価した。改善活動について聞いた理由は先行研究で述べたように人間作業者の重要性とリーン4.0との関係を知ることにある。 7.は「現在実施中のインダストリー4.0に関わる活動」について、どの程度「AI活用やビックデータ導入」、「機器へのセンサー装着」、「開発から製造へのデータ共有化」、「生産機器データをクラウドへ共有化」、そして「書類のペーパーレス化」が実践されているかについて問うた。4-2 調査結果今回調査に回答した22企業は資本金6,985万円、売上は38億円、従業員数は118人が平均で中小企業庁の定義の中でも小規模企業である。 質問項目別の回答状況は、1.「関心]については最高点5中、平均3.95、標準偏差1.09。 しかし、「緊急性」は、平均3.09、標準偏差1.06と企業により温度差が大きく相対的に危機意識は低いとみられる。 2.の「インダストリー4.0の効果として期待すること」は、従来からの品質、コスト、納期(QCD)がそれぞれ平均3.86、4.14、4.05と高い。 一方、「フレキシビリティ」は3.45、「グローバル化の推進」は2.91、「他社との業務提携推進」は3.09と相対的に低い評価であった。 3.の「インダストリー4.0の適用分野」は、「製造」が4.50と最も高く「サービス」が3.73、社外を含む「サプライチェーン」が3.59、「他社との連携(エコシステム)」は3.27であった。 「稼働中のITシステム」については、「ERP」稼働中の企業は全体の27%と低い。一方「CAD/CAM」使用中は比較的高く68%(但し、2、3次元の識別なし)であった。「受注売上」は82%、「財務会計」が77%と高く、「グループウエア」が59%と比較的普及している。システムは個別に導入され、それらの連結性は殆ど実現していないと推測される。 5.インダストリー4.0の導入阻害要因は、「運用人材不足」が平均4.10でデジタル人材不足への危惧が最も高い。 6.改善活動の実施状態については、「何らかの改善活動」が平均3.73、「小集団活動(全員で定期的発表)」は2.68であった。リーン生産方式のベースとなる改善活動が低調である。 7.現在実施中のインダストリー4.0に関わる活動の「AIやビックデータの導入」は、平均1.86、「機器へのセンサー装備」は2.67、「開発から製造へのデータ共有化」は2.45、「生産機器データをクラウドへ共有化」は2.05で、IoTによるデータの水平統合や垂直統合、AIやビックデータの導入も低調であるが、一部実施されている模様である。 4-3 考察これまで説明したインダストリー4.0の成熟度(表1)について評価すると、4.「稼働中のITシステム」と7.「現在実施中のインダストリー4.0に関わる活動」の結果から前述した成熟度のステージ1と推測される。 CPSの効果については、CPS活用は当面関心の対象外であるしシュミレーションは行われていない模様。QCDからの価値軸の転換についてはQCD の平均が3.88で高いのに対し、「フレキシビリティ」が3.34と従来型の傾向が強い。適用対象の変化だが「グローバル推進」「サプライチェーン」「他社との連携(エコシステム)」がそれぞれ平均2.91,3.59,3.09であることからインダストリー4.0のオープンモジュール型の目的と適用分野が部分的に理解されていると推測される。人間作業者の役割について、「何らかの改善」が平均3.73で「小集団活動」が2.68。本来強みであるべき日本の改善活動の現状は極めて低調と言わざるを得ない。7.「現在実施中のインダストリー4.0に関する活動」の平均が1.86~2.68あるので一部活動が試みられている模様。 以上の考察からは、参加した中小企業の認識はインダストリー3.0の特徴に近く、これまでとは異なるインダストリー4.0の効果を理解することは必ずしも容易でないことが推測される。先行研究の5項目で解析した如く、インダストリー4.0の新規の内容は多岐にわたり、従来からの経営戦略(例えば、自前主義でブラックボックス化)と相容れない部分もある。 「関心あり」と「導入の緊急性」の間に、平均で約1.0の差がある。この差は、関心があっても行動の第一歩に繋がらない現状を示している。氾濫するマスコミ情報の中で、QCDの価値観と、顧客

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