cuc_V&V_第54号
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14プロフィール1991年Waterloo大学大学院博士課程修了(Ph.D.(Earth Sciences))1995年より千葉商科大学商経学部、現在 第25期日本学術会議連携会員(地球惑星科学分科会)、日本地下水学会副会長、国際地下水文学会日本支部副会長著書 「地下水水質化学の基礎」等谷津の最奥部にある池は左右を台地に挟まれた細長い形状を有す。写真1 じゅん菜池千葉商科大学商経学部 教授杉田 文SUGITA Fumi「水環境ゼミナール」と呼ばれる著者が担当する研究ⅠとⅡ(2、3年生のゼミ)では毎年水環境に関するテーマを1つ選定し、クラス全員で調査・解析に取り組んできた。1年間の授業で学生全員が野外調査、室内実験(水質分析等)、データ解析、発表の4つを体験する構成となっている。これまでのテーマは酸性雨などの地球環境問題から地元の湧水までさまざまであったが、2018年度より大学近郊の市川市じゅん菜池緑地公園内にある「じゅん菜池」の自然環境再生をテーマとして活動している。じゅん菜池(写真1)は千葉商科大学から北へ徒歩で15分ほどの距離にある住宅地に囲まれた都市公園池である。池の水面面積はおよそ2×104m2と小さいが、環境省による「日本の重要湿地500」の1つにも選定されており、絶滅危惧Ⅰ類に分類されるイノカシラフラスコモをはじめとした数多くの希少な水生植物や昆虫の生息地として知られる。周囲には遊歩道が整備され、日中は登下校の小中学生、散歩やジョギングを楽しむ人の姿が多く見られる。冬季には多数のカモ類が飛来することもあって、池は都市にあって近隣住民の貴重な自然との触れ合いの場となっている。じゅん菜池はもともと谷津頭(台地に食い込んだ谷の最奥部)や周辺崖下からの湧水により形成された沼であった。市川市によると昭和の初期頃まで食用となるジュンサイという水草(写真2)が自生していた。戦後には水田として利用された沼は政府の減反政策と周辺都市化の影響による湧水枯渇により荒地と化し消滅してしまった。1979年に住民らの要望により市川市が人工的に揚水した地下水で池を再生した。現在の池は井戸からの給水により昭和初期と同様の姿となっているが、水質悪化のためにジュンサイは消滅したままである。水質悪化の主原因は給水地下水に含まれる比較的高濃度の栄養塩(窒素やリン)による富栄養化である。高栄養塩濃度のため、池では夏季にはアオコ等藻類が大繁殖してpHが上昇し、濁り、悪臭が発生する。また、外来種であるアメリカザリガニの繁殖も加わって、中性から弱酸性を好むと言われるイノカシラフラスコモやジュンサイに代表される在来の水草の生育には適さ「じゅん菜池」再生活動地域の自然環境再生活動に学ぶ水環境ゼミナール

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