cuc_V&V_第54号
9/64

72020年9月から2021年5月までにじゅん菜池で確認された主なカモ類種別カウント結果(田中直義氏(ジュンサイを残そう市民の会会員)によるカウント結果をもとに学生による計測結果を合わせて作図)unknownは学生が判別できなかった数池に飛来したカルガモ写真6図3【水鳥調査】繁茂の様子からその仕組みを実感しながら、理解する。2021年8月には日雨量50㎜を超す大雨が4回発生したこともあり、月合計降水量が343.5㎜に達し、その希釈効果のために8月末には池水のpHは急激に低下した。雨水により大幅に水質が改善されたため、学生は自ら雨水の水質測定を提案して実施し、自然の蒸留水である雨水が良好な水質を持つことを確認した。これにより、雨水を下水に流さずに自然の水循環に戻して地域の水循環を保全することの重要性を改めて理解することとなった。現地で水質測定をおこなっていると一般市民から「何をしているの?」と頻繁に声をかけられる。学生は測定の目的や当日の測定結果などを市民に分かりやすく説明しなければならない。他人に理解してもらうためには、自らが十分に理解していることが必要なほか、聞き手市民の水質に関する知識や理解度を観察しながら論理的に話すことが求められる。この一般市民とのコミュニケーションは意図して機会をつくることはおこなっていないが、重要な学生のコミュニケーションスキルを学ぶ場となっている。   そのほか、水質測定結果は速報値として市民の会に依頼し、池脇の掲示板に掲示してもらっている。掲示板前で立ち止まり見入っている市民を頻繁に見かけ、池脇の掲示板も一般市民とゼミ活動の重要なコミュニケーション場である。池では美しいカワセミが通年見られるほか、10月から5月にかけては多くの水鳥が飛来する(写真6)ため、野鳥の写真撮影や観察を楽しむ市民も多く池を訪れる。面積が小さい上に浅い池ではその水容量に対して冬季に400羽にも達するカモ類の飛来は水質への影響が無視できない。水鳥の糞が池水への栄養塩供給源の一つとなっていることが明らかとなっている(杉田、2021)。水鳥のサイズにより糞の量も異なることから、水鳥の糞による水質への影響を定量的に評価するためには、池にいるカモ類を種別にカウントする必要がある。学生たちの科学的調査の1つとして全員でカモ類の種別カウントに挑戦している。目視により種の判別を行うためには十分な事前学習が必須であるが、現地で実物をみながら、レクチャーを受けることが最も効果的な学習方法である。そこで、可能な範囲で日本野鳥の会会員でもある市民の会会員に具体的な判別方法とそのポイントについて池でレクチャーを受けたほか、資料を提供していただいている。学生によるカウントは計数カウンターを用い、池を周回して視認によりおこなう。計数中にも動き回る水鳥の数の正確な計数は慣れない学生にとっては容易ではない。学生のアイディアで写真撮影をして写真から計数するように工夫をしたクラスもあった。しかし、写真による計数は水鳥が動くことによる二重計数をある程度避けることができるものの、池全体を同時に写すことは困難で、その効果は限定的であることがわかった。また、写真では動きが無いために種の判別が困難になる場合もあった。このような工夫と失敗も学生にとっては良い経験と考えている。池でカモ類のカウント調査を長年続けてきた田中直

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る