View & Vision No55
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千葉商科大学サービス創造学部 准教授中村 聡宏NAKAMURA Akihiroプロフィール1973年生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒。日本スポーツマンシップ協会代表理事会長、東日本大震災復興支援財団理事、沖縄スポーツ関連産業協会理事、日本陸上競技連盟指導者養成委員会委員。主な著書に『スポーツマンシップバイブル』(東洋館出版社)。ⅰ ビデオリサーチ『2022年 年間高個人視聴率番組30(関東地区)』ⅱ IT MEDIA NEWS『サッカーW杯クロアチア戦、日本はPKで敗北 ABEMA視聴数は2300万超え』  https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2212/06/news068.htmlⅲ FIFA(国際サッカー連盟)公式サイト『Stadium 974』  https://www.fifa.com/fifaplus/en/articles/stadium-974ⅳ ビデオリサーチ『全局高世帯視聴率番組50(関東地区)』昨年末、2022FIFAワールドカップがカタールで開催された。中東地域での開催は史上初、アジアでの開催は、2002年日韓大会以来20年ぶり2度目となった。森保一監督率いる日本代表チームは、ドイツ代表、スペイン代表とワールドカップ歴代優勝国を次々と破りベスト16に進出、「Bravo!」の声が飛び交い、日本国内はサッカーブームに包まれた。ビデオリサーチが発表した2022年年間高視聴率番組によれば、1位は「日本対コスタリカ(30.6%)」、3位「日本対ドイツ(23.2%)」、5位「日本対クロアチア(20.1%)」と日本代表戦が高い視聴率を残すなど、その注目の高さは窺い知ることができようⅰ。また今大会は、動画配信サービス「ABEMA(アベマ)」で全64試合が無料生中継されたことも話題を呼んだ。ベスト8をかけた「日本対クロアチア」は、視聴数2,343万人ⅱを記録。これもサーバーダウンのリスクを回避するために、視聴制限が行われた上での数字であることから、潜在的な視聴者数を考えるとさらなる視聴数の確保も期待できたことがわかる。動画配信サービスで視聴するというスタイルが日本でも確立してきたことが伝わる結果となった。これまでのワールドカップは欧州の主要サッカーリーグがシーズンオフを迎える6月から7月に開催されるのが通例だったが、中東地域は夏の暑さが厳しくプレーヤーの身体的負担が大きいことなどから、例外的に時期をずらすこととなり、結果的に今大会は2022年11月20日~12月18日の期間で開催された。全8会場のスタジアム中、7つのスタジアムが新設、残りの1つも改装され、暑さ対策も考慮した空調設備完備の屋根付きスタジアムが整えられた。鋼製フレームの外壁に974個の輸送用コンテナを建築資材として差し込むように構成した「Stadium 974ⅲ」は、大会閉幕後に完全解体できるように設計されており、国際サステナビリティ評価システム(GSAS:Global Sustainability Assessment System)の設計・施工について5つ星の評価を獲得した点も含めて大変特徴的であった。このように、FIFAワールドカップもその周辺や細部に注目すれば、現在のスポーツやスポーツビジネスが抱えるさまざまな課題や問題点、そしてその先にある未来への期待感も見てとることができる。本稿ではごく一部にはなるが、スポーツビジネスの今後の展望を見据えながら、そのあり方について一考する。表1ⅳは全局高世帯視聴率番組、いわゆる歴代テレ311)スポーツ中継の視聴態様変化勝ち以上の価値をもたらす治道家とスポーツマンシップはじめに1.スポーツとメディアスポーツビジネスの今と未来を考える

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