学長コラム

本学の取り組みや教育活動、学生たちの活躍などの最新情報を中心に、時折、原科学長の研究テーマである参加と合意形成、環境アセスメントに関連した話題もお届けします。

皆様、こんにちは。
朝晩と気温が低くなり、晩秋の訪れを感じています。キャンパスでは創立90周年記念事業が盛んに行われています。来月には瑞穂祭や市川海老蔵氏による特別講義、創立90周年記念式典などがあります。皆さまとともに90周年を祝い、本学のビジョンや未来を共有したいと思っています。

90周年を機に「全国高校生 環境スピーチコンテスト」再開

全国高校生環境スピーチコンテスト

9月23日、本学で「第5回 全国高校生 環境スピーチコンテスト」の本選を行いました。このコンテストは第1回目を2007年に開催しています。本学は2003年にISO14001(環境マネジメントシステム)の認証を取得するなど、環境問題こそ今世紀最大の緊急を要する解決問題であるとの認識で、環境問題に先進的に取り組んできました。全学を挙げて環境意識の高い人材の育成に取り組み、このコンテストもそのような環境教育の一環として始まりました。4回目の開催から暫く間があきましたが、昨年表明した「日本初の自然エネルギー100%大学」をめざしている本学として、創立90周年を機に再開しました。

これからの日本社会を担う高校生の皆さんに、地球温暖化対策やエネルギー問題などの重要社会課題を考え、どのようにしたら持続可能な社会を築いていけるのか、自分自身の考えを述べてもらう場として「自然エネルギーと私たちの未来」と「持続可能な暮らしのために、今、私たちができること」の二つのテーマを設定しました。応募期間(2018年7月17日~8月17日)に53件もの応募があり、厳正なる審査の結果、選ばれた12名が本選に出場しスピーチしました。

本選は、スピーチと審査員による質疑応答により、内容の独創性、説得力、表現力(言葉の正確性等)を総合的に審査し、最優秀賞1名、優秀賞3名、特別賞1名を決定しました。いずれのスピーチも優劣つけがたく、僅差の結果となりましたが、その中でも審査員を驚かせたのは最優秀賞の阿部好葉さん(市立札幌旭丘高校/北海道)の「自然エネルギーと私たちの未来」と題したスピーチでした。阿部さんは北海道で冬の厄介者である雪が自然エネルギーとして活用されていることを知り、「地震のエネルギーも自然エネルギーに活用できるのではないか」という問題提起でした。巨大な地震のエネルギーが大きな被害をもたらすのだから、そのエネルギーをなんとかうまく使えないかという逆転の発想はとてもすばらしいと思います。出場者のみなさんのスピーチは夢があり、未来に向けてマイナス面をプラスへ変えていくといった発想が多くありました。スピーチを聴かれたみなさんも、日本の未来に期待を感じたのではないかと思います。阿部さんの表彰式は、11月17日の本学創立90周年記念式典で行います。

国際影響評価学会(IAIA) 特別シンポジウム(マレーシア)で、本学のプレゼンス向上

創立90周年記念事業の一環として、10月1日~2日にマレーシアで開催された国際影響評価学会(IAIA)の特別シンポジウム「アジアのSDGsとインパクトアセスメント」に企画参加しました。本学からは、私のほか、橋本隆子副学長、笹谷秀光客員研究員(CSR/SDGsコンサルタント)、安藤崇専任講師、齊藤紀子専任講師の5名が出席し、本学の取り組みをアピールしてきました。本学もこのシンポジウムのスポンサーになり、エシカル・コマースのセッションを企画実行しました。また、ファイナル・プログラムにも本学の自然エネルギー100%大学の広告や大学のロゴが記され、会場でも本学のロゴが大画面に映されるなどしました。

IAIAは世界120カ国以上の会員が所属する、インパクトアセスメント分野で最も権威ある学会です。国連でもこの分野の代表的な組織として認定されており、発言も国際的な影響力を持ちます。インパクトアセスメントとは、インフラ整備や都市開発など様々な開発行為の判断を、持続可能で健全なものとするためのコミュニケーションプロセスで、SDGs(持続可能な開発目標)達成のための重要なツールです。

SDGsは2030年を区切りとして、経済・社会・環境の3側面について、世界中の国が地球規模で考え、自国や世界の問題に取り組むことで、持続可能な世界をめざすものです。
特別シンポジウムは年次大会と異なり、特定のテーマについて行われるものです。アジア太平洋地域を中心に18か国から140人が集まりました。日本からは20名近くが参加し、存在感を高めました。アジアにおけるSDGs達成に向けてどう役立つか。持続可能な世界を実現するための17の目標に多様に関わる重要な問題としては「エネルギー問題」があり、そこに焦点を絞り、本学が中心になって協力しました。

10月1日の開会式では、私が基調講演(タイトル「Creating Sustainable Energy Societies - Impact Assessment is the Key-」)を行いました。また、当日午後に行われたプレナリーセッション(全体会議)の企画も依頼され、日本の再生可能エネルギーの問題をテーマに多方面の専門家が発表。私も本学の自然エネルギー100%大学の取り組みを紹介したところ、ハートウェアに関する質問も出て、世界各国の専門家とともに議論が深まりました。

本学が取り組んでいる自然エネルギー100%大学計画や、学長プロジェクトへの取り組みには、日本だけに留まらず、アジア、世界が注目し始めています。大変充実して帰国の途に着きました。引き続き、これらの活動に全学一丸となって取り組んでいきます。

IAIA特別シンポジウム Kuching, Malaysia, 2018
IAIA特別シンポジウム Kuching, Malaysia, 2018

SDGsと「RE100大学」計画についての講演(IAIA特別シンポジウム Kuching, Malaysia, 2018)