学長コラム

本学の取り組みや教育活動、学生たちの活躍などの最新情報を中心に、時折、原科学長の研究テーマである参加と合意形成、環境アセスメントに関連した話題もお届けします。

※今回のコラムは、学生諸君に向けたメッセージです。

これから夏季休業期間が始まりますが、その間に、皆さんには是非本を読んでもらいたいと思います。そこで、学生の皆さんにお勧めしたい本をいくつか紹介します。

まず、本学の建学の理念に関わる本から。
実学に関する基本書は「実学への招待」の授業でも紹介している福沢諭吉の「学問のすゝめ」ですが、読みやすくて面白いのは、福沢諭吉の「福翁自伝」(岩波文庫)です。倫理については、新渡戸稲造が日本のモラルの源泉としての武士道を世界に紹介した英文著書、「Bushido」です。沢山の日本語訳がありますが、代表は矢内原忠雄訳の「武士道」(岩波文庫)。より読みやすい現代語のものもありますから、それらも参照すると良いでしょう。英和対訳のものもあります。

本学は会計学の教育からスタートしました。会計の歴史には興味のある人も多いのでは。社会の変化と共に会計も大きく変わってきました。これを複式簿記の生まれた15世紀以降の世界史の流れの中で説明した本があります。田中靖浩、「会計の世界史」(日本経済新聞社出版)です。ダビンチや鉄道をつくったスチーブンソン、さらには現代のビートルズ、マイケル・ジャクソンなども絡ませて会計の歴史を語る、楽しく読める本です。

楽しい本ではスポーツの本も。昨年のラグビーワールドカップ、日本チームの活躍でにわかファンになった人も多いでしょう。大畑大介、「ラグビー まあまあおもろいで!」(潮新書)で入門。

音楽では、世界の指揮者、小澤征爾の本も1冊。「ボクの音楽武者修行」が新潮文庫から出ています。海外に飛躍したい人には興味深いはず。海外文化に関するエッセイからも1つ。リンボウ先生こと、林望の「イギリスはおいしい」(文春文庫)。イギリス料理はまずいと言われますが、どうでしょうか。環境関係のエッセイでは、1960年代に農薬や化学肥料による生態系への影響をいち早く指摘したレイチェル・カーソンの「センス・オブ・ワンダー」(上遠恵子訳、新潮社)がお勧めです。また、建築に興味のある人はサービス精神あふれる建築づくりの話も。建築家、仙田満の「人が集まる建築」(講談社現代新書)。

経済学と環境についても、少々。経済学の歴史については、中村隆之「初めての経済思想史」(講談社現代新書)。経済学は何のためにあるか。単なるお金儲けではありません。社会を豊かにするもので、それを実践するのがエシカルコマース。末吉里花の「はじめてのエシカル」(山川出版社)が面白い。経済発展の結果、生活は便利になりますが、その陰に沢山の問題があることを半世紀ほど前に指摘したのが、経済学者、宇沢弘文の「自動車の社会的費用」(岩波新書)です。そして、現代、これからの経済のあるべき姿を示したのが、本学の名誉教授、三橋規宏の「環境経済入門」(日経文庫)です。

最後に小説をひとつ。井伏鱒二の名作「黒い雨」(新潮文庫)。広島の原爆投下後、放射性物質を含む黒い雨が降りましたが、これを題材にしたもので、若い皆さんこそ読むべき本です。

武士道
「武士道」
著/新渡戸稲造 訳/矢内原忠雄
出版社/岩波文庫
会計の世界史
「会計の世界史」
著/田中靖浩
出版社/日本経済新聞出版社
センス・オブ・ワンダー
「センス・オブ・ワンダー」
著/レイチェル・カーソン 訳/上遠恵子
出版社/新潮社

原科幸彦学長 お勧め図書

  • 福沢諭吉(著)「福翁自伝」岩波文庫
  • 新渡戸稲造(著)、矢内原忠雄(訳)「武士道」岩波文庫
  • 田中靖浩(著)「会計の世界史」日本経済新聞出版社
  • 大畑大介(著)「ラグビー まあまあ おもろいで!」潮新書
  • 小澤征爾(著)「ボクの音楽武者修行」新潮文庫
  • 林望(著)「イギリスはおいしい」文春文庫
  • レイチェル・カーソン(著)、上遠恵子(訳)「センス・オブ・ワンダー」新潮社
  • 仙田満(著)「人が集まる建築」講談社現代新書
  • 中村隆之(著)「はじめての経済思想史」講談社現代新書
  • 末吉里花(著)「はじめてのエシカル」山川出版社
  • 宇沢弘文(著)「自動車の社会的費用」岩波新書
  • 三橋規宏(著)「環境経済入門」日経文庫
  • 井伏鱒二(著)「黒い雨」新潮文庫