学長コラム

本学の取り組みや教育活動、学生たちの活躍などの最新情報を中心に、時折、原科学長の研究テーマである参加と合意形成、環境アセスメントに関連した話題もお届けします。

6月の学長コラムでSDGsについて書きました。SDGsとは、2015年に国連の会議で決めたSustainable Development Goals。日本語では「持続可能な開発目標」と訳されています。これはいま、大変重要な言葉ですが、その意味を正しく理解しなければなりません。

持続可能な開発目標は、全部で17もあります。これら17の目標に共通するテーマは「誰一人取り残さない」。すなわち、全ての人に目を配り、十分な配慮をするということで、武士道の「仁」につながるものです。仁とは、人と人との間のことで、思いやりを持つ、十分な配慮をして、人々に迷惑をかけないということです。だから、SDGsは、武士道精神を重んじる本学の教育目標と同じ方向なのです。実は、千葉商科大学は、SDGsにおいてかなり有名です。

菅首相は10月26日の所信表明演説で、2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにするとしました。EUや中国に大きな後れを取ってきた日本にとっては明るい兆しです。温暖化ガスの排出ゼロを目指すには、石炭火力をはじめ全ての化石燃料は使用を止めなければなりません。原発は事故時の放射能汚染だけでなく、それによる風評被害が生じる厄介なものですが、使用済み核燃料の処分費用が膨大で、真の発電コストは極めて高いことが明らかになりました。また、原発による発電は今でも数%しかありません。2014年は全くゼロでしたが、電力供給の問題は何もありませんでした。原発は無くても大丈夫なのです。

一方、再エネ発電は、人々に迷惑をかけない真っ当な電力です。自然のメカニズムの中で生み出される太陽光や太陽熱、風力、小水力、バイオマス、地熱、潮力、波力など、いずれも厄介な環境汚染は生じません。そして、日本の自然エネルギー賦存量は、風力だけでも国内の電力使用量の数倍にもなります。この事実は、毎年発表される環境省のデータで示されています。本気で取り組めば、日本は電力輸出さえ可能なのです。

再生可能な自然エネルギーによる発電は地域分散型で小規模でもできます。コロナ後の社会は地域分散型が求められ、社会経済活動の基盤であるエネルギーも地域分散型にする必要があります。再エネ発電なら、社会の各主体が自らの責任で対応ができます。SDGの目標12は「つくる責任 つかう責任」ですが、社会の各主体には、人々に迷惑をかけない真っ当なエネルギーである再エネによる電力を「つくる責任 つかう責任」があります。大学も社会の一主体としてこの責任が求められます。

学長コラム12月

この問題に大学として取り組むことには大きく2つの意義があります。まず、大学自らが行動することで、大学以外の企業や自治体、公的組織、NGOなど、他の主体に影響を及ぼすことができます。社会の各主体が再エネ100%を目指し活動してゆくことで、社会が変わってゆく。それを大学が引っ張るのです。そして、高等教育機関の役割として、再エネ100%社会に変えて行く人材を育成する。そのためには机上の学問だけでなく、実学として実際に個々の大学が自然エネルギー100%を実現し、模範を示すことが必要です。だから、本学は再エネ発電に取り組みました。

2019年に本学は、国内780ほどある大学の中で初めて、自然エネルギー100%大学を達成しましたが、私はこれを他の大学にも広げるべく自然エネルギー100%を目指す大学リーグづくりを進めています。

第一段階として電力に関して自然エネルギー100%大学を目標とします。まず、個々の大学が宣言をして一歩一歩進めます。この志を共有する大学、それを目指す教職員、学生、支援する専門家が集い、互いに研鑽する、自然エネルギー大学リーグです。電力消費量が理工系や医学系の大学よりも一桁少ない、文系大学からまず活動の輪を広げて行くことにしています。皆さんも是非、この活動に色々な形で参加をしてください。