学長コラム

本学の取り組みや教育活動、学生たちの活躍などの最新情報を中心に、時折、原科学長の研究テーマである参加と合意形成、環境アセスメントに関連した話題もお届けします。

今回は、2019年にスタートし、今年で全ての学生が受けるようになった基盤教育について書きます。

治道家が強く求められる時代に

ロシアによるウクライナ侵攻の早期の終息を強く願います。しかし、このような地域紛争は世界各地で絶えません。コロナ禍も世界中に広がっていますが、これが収束してもパンデミックが繰返し起こる可能性は残ります。そして、気候変動と生態系破壊という地球規模の環境問題があり、デジタル化の多方面での急速な進展による社会経済の大変革もあります。さらには、資本主義社会の行き詰まり。今はこれらが複合的に絡み合う、先の見えない時代です。

この先の見えない時代にグローバルな視点を持ち社会に貢献できる人材こそが、創設者遠藤隆吉先生の理念に基づき本学が目指してきた治道家です。治道家とは、大局的見地に立ち時代の変化を捉え、社会の諸課題を解決する、高い倫理観を備えた指導者です。治道家には倫理観の高さと共に、人々や社会に対して十分配慮する心、すなわち、仁がなければなりません。

基盤教育と治道家

そこで、本学は現代の治道家を育成すべく、専門教育と基盤教育の二本足での教育体制としました。専門教育だけでは視野が狭くなりがちです。専門力と共に、広い視野を持つ人材を育てる。本学は単科大学の時代から専門力をつけ人間力を養うという伝統があり、その結果、多くの立派な経営者が生まれました。この伝統を継承発展させるのが基盤教育です。

大きく変動する時代において、新たな問題に立ち向かい解決するには、何に義があるか、何が正しいことかを考え、判断する力が必要です。そのためには、幅広い教養と高い倫理観が求められます。そして、義があると判断すれば、それを果敢に実行する勇気、すなわち、行動力が必要です。

基盤教育科目には4つの分野がありますが、まず、【CUCベーシック】は、本学の学生としての基礎を修得します。「実学への招待」や「実学入門」などの科目で、建学の精神と理念を学びます。そして、幅広い教養を身に付けるための【共通教養】の分野。これは従来の社会科学、人文科学、自然科学に加え、歌舞伎や能、講談、落語、あるいは茶道や華道など伝統的な国民教養も含む、幅広い概念です。この2つの分野が治道家への入り 口です。

三言語とコミュニケーション力

3つ目の分野はコミュニケーションと情報に係るもので、自然言語、人工言語、会計言語の【三言語】です。自然言語は通常の言語で、人工言語は電子化した言語。情報処理の能力が必要です。本学の特色は会計言語を学ぶことです。会計の本質は事実情報の記録。正確な記録と保存、活用する力をつけます。

自然言語は日本語と外国語で、どちらも重要です。語学は表現力とともに論理的な思考力もつけてくれます。外国語を通じて世界の多様な文化や歴史、風土、 国民性などを知ることができます。多様性の理解を助け 、コミュニケーション力を養う分野が三言語です。

生涯にわたる学び

さらに、人生100年時代を生きるための基盤づくりも重要です。そこで、4つ目の分野、【生涯ケア】科目があります。人生をどう生きるか、キャリア形成について学び、真っ当なお金の使い方を身につけるために金融リテラシーを修得します。そして、生涯の健康維持のため、体育と健康管理も身につけます。

基盤教育は初年次を中心に、全学の学生が学部を超えて学びます。多様な経験や考えを持っている人がいることを、基盤教育科目のクラスで知ることができます。こうして、初年次に学部を超えた友人ができることが、皆さんの人生を豊かにしてくれます。もちろん、基盤教育科目は2年次以降も学ぶことができます。

基盤教育は本学の教育の二本足のひとつ。もう一本の足、専門教育では専門力をつけるとともに、治道家に向かっての成長を目指します。生涯にわたってこの目標を追い続けて下さい。