教員コラム

政治・経済・IT・国際・環境などさまざまなジャンルの中から、社会の話題や関心の高いトピックについて教員たちがわかりやすく解説します。

政治・経済・ビジネス

選挙はうるさい?

選挙が近づくと、街宣車から候補者の名前を連呼する音が気になりますね。日を追うごとにどんどん熱が入ってきて、「清き一票」とか「最後のお願い」とか、聞き飽きたフレーズが繰り返されます。それから、駅に行けば、候補者が演説をしているし、ビラもたくさんもらいます。政治に興味がある大学生でも、うるさいなあ、と思うのが本音かもしれません。ここでは、選挙活動の意味や、これからの選挙における候補者への接し方などを考えていきたいと思います。

ビラはもらいますか?

駅前やショッピングモールなど、人の集まるところに行くと、候補者の名前が書かれたビラを手渡そうとする運動員がたくさんいます。皆さんは、こういうビラはもらう方でしょうか? いろいろな考え方はあると思いますが、選挙に深くかかわるためには、もらった方がいいのではないでしょうか。ビラには、名前だけでなく、経歴や政策がびっしりと書いてあります。また、SNSの連絡先が書いてあることもあるので、主に若者向きのメッセージを確認することもできます。SNSでは、いつどこで演説があるかなどの情報もライブで見ることができるので、本人を見て、感覚をつかむこともあります。今は、写真の修整技術が発達しているので、本人を見るとびっくり、ということもありますものね。あとは、周囲の人への態度なども投票の参考になるものです。私は、本人に会ったら、案外威張り散らしていて、がっかりしたこともあります。(上から目線というやつでしょうか)人柄は隠し切れないものですね。

選挙の先輩、イギリスでは?

イギリスの作家、ジェフリー・アーチャーの作品の中に選挙のエピソードがでてきます。イギリスでは各家庭を候補者が訪ねて歩く「戸別訪問」が禁止されていないので、候補者がピンポーンとやってきます。さて、ある婦人が応対に出て、候補者に「お茶でも飲んでいきませんか?」と聞きました。このご婦人は、その候補者を応援しているのでしょうか? 作品では、候補者は、丁寧にお茶を辞退した後に、リストにバツのしるしをつけます。支持していないという意味です。なぜか? 候補者の時間を奪うということは、他の支持をとりつける機会を奪うということだと考えるわけです。意地悪ですか? そうかもしれませんね。選挙でのいやがらせはいけませんが、選挙もひとつのゲーム。時間や機会の資源を奪い合うのです。ビラについても、嫌いな候補者や政党のものはもらわないのが日本の常識かもしれませんが、イギリス式に考えると、きらいな人のものはたくさんもらって、支持する候補者のものは受け取らない、ということになります。

駅の演説の対応は?

駅での演説のことを駅頭(えきとう)と呼んだりします。この駅頭の反応には不思議なことがあって、候補者が駅頭の感触がいい、と感じたときほど、支持が得られていないという暗黙の法則のようなものがあります。駅では、それほど多くの有権者と会うことはできませんし、握手を求める人が多くても、それほど票につながらないのでしょう。日本では、機会を奪うために握手を求めるような人は少ないと思いますが、ひとりやふたりの握手や応援の声援は票につながらないのですね。

若者にはどんなメッセージが?

さて、2016年から18歳と19歳の若者が参政権を得ましたが、候補者や政党は若者にどんなメッセージを送ったでしょうか? 分かりやすいところでは、大学の給費型奨学金の増加を訴えたりして、教育にお金がかからないようにする政策がありました。また、どの雇用対策も実は若者に向けたメッセージでした。気が付きましたか? 若者は、就職活動で苦労したり、非正規雇用で経済的に苦しい状況に陥りがちです。「雇用」と一言で言われても、自分のことだとは分かりにくいと思うのですが、政治の言葉で言うと、若い人のための政策、ということになります。ちょっと政策の伝え方が上手でないですね。

候補者は誰に訴えている?

老人医療、介護、福祉、相続などに関する政策のアピールは、政策の常道ですが、実はこれらは年齢の高い有権者のためのものだと気づいていましたか? これには投票率が大きく関係しています。日本では、投票率は、若者で最も低く、高齢の男性が一番高い傾向にあります。選挙権を得る年齢が下がっても、若者の投票率は伸びませんでした。皆さんが政治家だったら、誰をターゲットに選挙活動をするでしょうか? 自分を支持してくれそうな人、つまり、選挙に行く人ですよね。2期目以降であればなおさらです。ちょっと悲しいことですが、若い人がハッピーになる政策のアピールや実行に尽力しても、投票という形で恩返しをしてくれない、と政治家は考えます。それよりも、確実に投票するグループのメリットを考える方が自分のためなのです。政治不信や政治ぎらいには理由があるのは充分わかるのですが、選挙に行くことは大切なのです。

自分の世代をハッピーにするためには?

上に書いたように、投票に行きましょう。とはいえ、好きな政党がなかったり、どの候補者も気に入らないこともありますよね。そういう時は、なにも書かずに投票箱に票を入れる白票の投票もありだと思います。賛否はあるでしょうが、行かないよりも、自分の世代の投票率を上げることはとても大事です。期日前投票で都合の良い時に、便利な投票所を選ぶこともできます。さっさと投票して、日曜日はレジャーを楽しめますよ。

投票に行かないのはもったいない?

これまで見てきたように、選挙は自分をハッピーにするものです。嫌ったり、避けたりしてはもったいない。選挙期間を楽しんで、投票で自分の意見を表現しましょう。「政治なんか嫌いだ」というのも立派な意見です。ぜひ表現しましょう。私は中年ですが、ココロは若いので、若い人の幸せのために政治にかかわっていきたいと思います。

解説者紹介

田村 充代