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2019年11月23日、千葉商科大学で防災講演会を開催。元松茂樹熊本県宇土市長が、熊本地震の被災経験を踏まえ、当時の被災状況や復旧までの経緯、災害への備えなどについて話しました。

熊本地震は2016年4月14日21時26分頃に地震(後に「前震」と呼ばれる)が発生。その後、4月15日0時3分頃に最大余震が発生し、そして4月16日1時25分頃に本震が起きました。

元松市長は「まず大きい地震がきてから小さい余震が何度かあって、徐々におさまっていくというのが通常のパターン。しかし、2つの大きな地震があって、余震がおさまってきたと思った矢先にさらに大きい地震がきました」と熊本地震の特徴を説明しました。

防災講演会

宇土市では前震が震度5強・マグニチュード6.5、直後の最大余震が震度5強・マグニチュード6.4、本震が震度6強・マグニチュード7.3を観測。

「直下型はいきなり揺れが始まるので、何の準備もできません。地震が起きたら机などの下に潜れと言いますが、実際にはまったく動けない。ベッドから振り落とされないようにつかまっているのが精一杯でした。本震の後、息子にガスの元栓を閉めるよう近所に叫んで回ることを指示してから家を飛び出しました。前震後の余震で、庁舎が音を立てて揺れているのを見ていたので、庁舎は倒れているだろうと思いながら市役所に向かいました」

宇土市役所は4階・5階を中心に大きく損壊。庁舎内に入れないため、駐車場にテントを張って臨時の災害対策本部を設置しました。約250人の職員が分担して市内を巡回し、被害状況を把握しました。

宇土市役所
撮影:宇土市役所
宇土市役所
撮影:宇土市役所

本震直後の宇土市の避難者数は、指定避難所が6,455人、自主避難所が2,000~4,000人、屋外退避が1万人以上。

「避難所は少しでも快適に過ごしていただけるように、畳を敷き、間仕切りでプライバシーを確保するなどの工夫をしました。また、体育館の天井にある照明の揺れに恐怖を感じている人が多かったため、安全ネットを張りました」

本震後、余震が長く続きます。4月16日の有感地震は1,223回(1時間あたり50回)、震度3以上の地震は215回観測されました。発災から15日間での余震の回数は3,024回。これは阪神・淡路大震災での230回 、新潟県中越地震での680回を大きく上回る数字です。

宇土市における人的・住家被害は、死者12人(災害関連死10人・水害死2人)、重傷24人、軽傷18人。住家被害は6,483世帯で、全壊119世帯、大規模半壊172世帯、半壊1,645世帯。熊本県全体での死者は272人(災害関連死217人)、全壊は1万2,548世帯でした。

撮影:宇土市役所
撮影:宇土市役所

さらに本震から2カ月後、最大時間雨量136mmの豪雨が発生。土砂崩れが頻発し、冠水や床上浸水などの被害が相次ぎました。

元松市長は災害関連死が多かった原因について、「余震が続いたり大雨が降ったりと、さまざまな災害が重なり避難が長期化したことが一番の原因。家に帰れず車中泊を続けた人のなかには、エコノミークラス症候群になってしまった人もいました」と話しました。

宇土市では備蓄をしていたものの、8,000食あった保存水・保存食は1日で枯渇。福岡からの輸送ルートが断たれ、4月15日朝に県に依頼した2万食の物資が届いたのは4月17日夜のことでした。それ以降、他県からの救援物資も届き始めます。

「当市が実施した試みで成功したのが、物資の配布をボランティアの方に一任したこと。不満や苦情がほとんど出なかっただけではなく、ボランティアの方が私たちに代わって市役所職員たちの活動状況を伝えてくださったので、住民の皆さんに自然と行政に頼らず助けあう姿勢が生まれました」

元松市長はこの日、地震後に実施した住民へのアンケート調査の結果を一部公表しました。
避難した場所については86%が「自動車」と回答。理由は「車が一番安全だと思った」が78.5%、プライバシーを理由にあげた人も多かったです。近隣との協力体制は「近所の人の安否を確認した」が49.6%、「何もしなかった」が44.3%。家庭内での備えは「備蓄していた」が31.7%でした。

3年7カ月経過した現在の状況は、応急仮設住宅143戸、みなし応急仮設住宅346戸、入居総世帯数499世帯、退去済466世帯。再建率は93%。市役所は新庁舎の建設に向けて動き出しました。

防災講演会

元松市長は「大地震なんて身近には起こらないだろうと思っている方がいるかもしれません。熊本地震の震源域とされている布田川断層帯では、今後30年以内にマグニチュード7程度の地震が発生する確率は0~0.9%とされていました。それに対し、首都直下地震の確率は70%。いつ起きてもおかしくないということです」と強く訴えました。

また、「行政の救援は、局地的な災害の場合でこそ可能ですが、エリア全域での災害となったらまったく手が届きません。特に、私たちの場合は庁舎が損壊して拠点をなくしたため、最初は通常業務さえ行えませんでした。だからこそ、『自分の身は自分で守る』という気持ちを持つことが大切です。まずは、皆さんの家庭の備えを見直して、3日分以上の水や食料を備蓄すること。それと日頃から近所付き合いも大事にしていただきたいです」と災害への備えを促しました。

防災講演会

最後に、元松市長は「私たちが体験したことを1人でも多くの方に聞いていただくことが恩返しだと思っています」と熊本地震に対する支援への感謝を述べました。さらに、千葉県内で発生した台風・豪雨災害の復興支援を行う意思を表し、講演会は終了しました。

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