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コラム

フェアトレードは、SDGsの実現というテーマにも深くかかわっています。
SDGsの17の目標を達成するために私たちができることは、今までにもご紹介してきました。

SDGsをふまえ、フェアトレードをどう実践していくか。国や地域、企業などのアクションと、私たちにできることをまとめていきます。

ところで、ここまでの文章だけでも「フェアトレード」「SDGs」「エシカル」と、環境関連のワードが複数出てきました。このように、環境に関連する言葉はたくさんあるので、頭を整理するための環境に関連する用語集を文末に掲載しています。

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フェアトレードはSDGsの目標達成のためにも不可欠

SDGsの正式名称は持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)ですが、フェアトレードもまた、環境と社会の持続可能性を達成することが大きな目標です。
目指すものが同じですから、フェアトレードで行われている活動のほとんどはSDGsの17の目標を達成するためのアクションと重なります。

SDGsが国連で採択されたのは2015年ですが、フェアトレードはそれよりずっと前から持続可能な社会実現のための試みを継続しており、SDGsがめざす世界を実現するために欠かせない活動と位置付けられます。

SDGsの17の目標のそれぞれに対応するフェアトレードのアクションを対比させたのが「SDGsのターゲットとフェアトレードの取り組み」の表です。

このような関係性をあらためて確認することで、私たちにできることとして、フェアトレード商品を生活に取り入れることがSDGsの目標達成にもつながるということが実感できるのではないでしょうか。

国や地域が、そして一人ひとりが、フェアトレードについて「できること」を実践していくことが、SDGsの目標達成のためにも大切です。

フェアトレードを推進する各国の取組み

フェアトレードを推進する国や地域をいくつかご紹介します。

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イギリス

世界で最もフェアトレードが浸透しているイギリス。そのフェアトレード市場規模は日本円換算で約2,500億円、国民一人当たりではフェアトレード商品を年間3,670円購入しています(2017年統計より)。
イギリスでは2000年以降でフェアトレード市場が急速に拡大しました。背景にはフェアトレードタウンの増加もあります。イギリスのガースタングという町が2000年にフェアトレードタウン第一号として認定され、その後500以上のフェアトレードタウンが誕生しました。ロンドンもそのひとつです。現在世界全体では2,000以上のフェアトレードタウンが認定されていますが、そのおよそ4分の1がイギリスにあるというのは驚きです。2012年のロンドン五輪ではレストランなどでフェアトレードの食材を使用したり販売してPRにつとめました。

北欧(スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマーク)

SDGs達成度ランキングで北欧4カ国はすべて10位以内にランクイン。世界をリードする"環境先進地域"です。

上記の記事でも紹介しているように、北欧4カ国は1990年代から連携して持続可能な社会の実現に取り組んでいます。
とはいうものの、北欧においてフェアトレード市場が拡大したのは2000年代に入ってからです。2000年代以降、「ミレニアル世代」「Z世代」などと呼ばれる1980年代以降に生まれた若い世代が積極的に環境保護のために行動するムーブメントを起こし、40代以上の世代がそれについていくかたちで、フェアトレードマーケットも拡大しました。

アメリカ

フェアトレードの発祥とされるアメリカでも、環境や人にやさしい商品を求める消費者のニーズに応えて、いくつかのオーガニック商品をメインとするスーパーマーケットがあり、フェアトレード商品も多数取り扱っています。アマゾン傘下の「ホールフーズ」、「トレーダー・ジョーズ」などがアメリカ全土に店舗を展開していて、フェアトレード商品も購入できます。
アメリカで多いフェアトレード認証は、国際規格のフェアトレード認証と異なる、アメリカ独自の「Fair Trade Certified™」というラベルで、これは「フェアトレードUSA」が2011年に国際組織であるFLOを脱退して始めたものです。従来の国際フェアトレード認証ラベルも運用されています。

日本

日本でもこれまで、多くの団体がフェアトレードに取り組んできました。日本で最初にフェアトレード商品を販売したといわれているシャプラニールは1972年設立。その後、欧米でフェアトレードが注目された1990年代には「わかちあいプロジェクト」(1992年)、児童労働をなくすことがテーマの「ACE」(1997年)などが活動をスタート。多くの人がフェアトレードに尽力し、成果を上げてきました。

しかし、欧米ではこの20年でフェアトレード市場がかなり拡大したのに比べると、日本ではあまり広がっていないという事実があります。「日本の消費者がフェアトレードを知らない、選ばない」というのも要因のひとつかもしれません。

欧米に比べて、日本のフェアトレードマーケットは小さく、認知度・浸透度ともに遅れているといえます。フェアトレードの現状を述べた記事でご紹介しているように、一人当たりのフェアトレード商品購入額はスウェーデン4,735円、イギリスが3,670円、アメリカが367円に対して日本は89円となっています。

しかし、この2~3年ほどで少し様子が違ってきました。日本でも若い世代から「環境と人にやさしい商品を選びたい」という声が多く上がるようになってきています。また、後で述べますが、熊本市を皮切りにフェアトレードタウンの認証を受ける自治体も増えています。日本でも、これからようやくフェアトレードが広まっていくことが期待されます。

フェアトレード商品を販売するだけではない、企業のアクション

食品や衣料品のメーカーは自社製品をフェアトレード商品に変えていくことができますが、途上国との貿易を行わない企業もフェアトレードに参画しています。
いくつかの事例をご紹介します。

DNP(大日本印刷)

2006年に、社内の応接室やカフェなどで提供するコーヒーとして、フェアトレード認証製品を採用。このフェアトレードコーヒーの社内消費が2018年に100万杯に達し、認証組織である特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパンから、「社内消費のパイオニア」として表彰を受けました。また、DNPのオリジナルキャラクターをモチーフに、フェアトレード認証コットンを使用したトートバッグ等を制作し、2014年から販売中。フェアトレードの取り組みを日常の暮らしや仕事に取り入れることで、社員と家族の理解も進んでいます。多くの企業・パートナーとの対話も増え、フェアトレードの意義を広く浸透させる一助となっているほか、サステナブルな取り組みを進める会社としてのイメージの向上や、採用への良い効果などにもつながっています。

NTTデータ

NTTデータグループは、2007年よりフェアトレードに取り組み、社員食堂やイベントで多くのフェアトレード商品を採用。フェアトレードだけでなくサステナビリティを実現するための多様な取り組みを継続することで、ESG投資指標でも評価をされています。

これらの試みのメリットは以下の通りです。

フェアトレードを広める効果がある

企業の社員食堂で提供するコーヒーやユニフォームにフェアトレード商品を使用すると、自然に社内全体にフェアトレードが知られるようになり、社員の家族へも広まります。フェアトレードをPRする活動として効果的です。

CSR活動の一環として実施され、企業価値を上げる

フェアトレードへの取り組みは、世界的なSDGsの目標達成にも貢献するもので、投資対象としての企業の評価が上がります。企業イメージアップはいい人材を採用するためにも役立ちます。

日本でも増えてきた「フェアトレードタウン」とは

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フェアトレードタウンとは、地域の行政・企業・商店・市民などすべての主体が一体となってフェアトレードに取り組む町のことです。
発祥はイギリスで、現在世界にはフェアトレードタウンが約2,000あり、パリやロンドンも含まれています。
日本では「日本フェアトレード・フォーラム」がフェアトレードタウンの認定を行っています。日本のフェアトレードタウンは以下の6都市です。(2022年4月現在)

  • 熊本市(日本初、2011年認定)
  • 名古屋市(2015年)
  • 逗子市(2016年)
  • 浜松市(2107年)
  • 札幌市(2019年)
  • いなべ市(2019年)

このなかで、静岡県の浜松市を取りあげて、フェアトレードタウンの取り組みについてご紹介します。

フェアトレードタウン~浜松市の事例

東京と名古屋の間、静岡県の西部に位置する浜松市は、人口約80万人の政令指定都市。
2017年にフェアトレードタウンに認定されました。また、同市内の静岡文化芸術大学は2018年に日本初のフェアトレード大学に認定されました。
2018年と2019年には市民がフェアトレード商品に親しむイベント「アースデイはままつ」を開催。2019年には静岡文化芸術大学で「フェアトレード全国フォーラム」を開催し、他の地域や大学との交流を図りました。

現在フェアトレードタウン認定を目指して活動している市区もあるので、今後日本のフェアトレードタウンはさらに増えていくとみられます。フェアトレードを推進する地域が増えれば、日本のフェアトレードマーケットも拡大していくと期待ができます。

フェアトレードでは一般消費者の行動こそ大事。私たちにできることは?

企業や自治体のフェアトレードの取り組みを簡単にご紹介しましたが、同様に大切なのは消費者である私たちの選択です。
私たち一人ひとりがフェアトレード商品を購入することで、途上国の生産者を支援することができます。

私たちにできることは、フェアトレード商品を生活に取り入れること。

「何を選んだらいいのかわからない」「取り入れたいフェアトレード商品がない」という人は、欲しいと思える商品を探してみることから始めましょう。

1.店頭で、フェアトレード認証ラベルを探してみよう

日本ではフェアトレード認証の商品を売っている店が少ないとはいうものの、チョコレートやコーヒー、紅茶などのフェアトレード商品はときどき見かけます。買い物に行ったら「フェアトレードラベル」があるかどうか探してみましょう。

2.ネットなどでフェアトレード商品の新しい情報を探そう

フェアトレード商品は大量生産されないことも多いので、常に商品が入れ替わっています。通販サイト等で「フェアトレード」で検索するとさまざまな商品が見つかります。また、環境に配慮した商品を紹介・販売する専門サイトもあります。

3.買いやすく身近なコーヒー、チョコレート、紅茶から始めてみよう

単価が低い「コーヒー」「チョコレート」「紅茶」のフェアトレード商品は初めてのフェアトレード商品としておすすめです。主原料をフェアトレードで調達しているだけでなく、他の原材料にもこだわっているフェアトレードコーヒーやチョコレートはひと味違います。フェアトレードだから購入してみたけれど次は「おいしいから」もう一度買う、そんな商品に出会えることがベストです。商品のバリエーションが豊富で、選ぶ楽しみもあります。

4.お気に入りの商品を見つけたら、プレゼントにも使ってみよう

買ってみたけれど好みの味ではなかったという商品を無理に再購入する必要はありませんが、試したなかでお気に入りの商品を見つけたら、その後も購入して楽しみましょう。友人や家族にプレゼントすれば、フェアトレード商品の良さを知ってもらえる機会にもなります。

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【関連用語集】フェアトレード、SDGs…関連する用語のまとめ

地球環境保護へのとりくみに関連する用語を以下にまとめました。

フェアトレード

市場価格よりも高い価格で生産者から作物を買い入れるフェア(公正)なトレード(取引)により、生産者の生活を助けるしくみのこと。厳密には「フェアトレード商品」と呼べるのは「フェアトレード認証ラベル」が表示された商品のみである。

SDGs

英語のSustainable Development Goalsの略称で、エスディージーズと読む。日本語訳では「持続可能な開発目標」。2015年の国連サミットで採択された、国際社会全体で取り組む目標のこと。17の目標が定められていて、特に「13 気候変動に具体的な対策を」が急務とされている。

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サステナビリティ(持続可能性)

地球環境や社会が将来も損なわれることなく維持されること。「地球温暖化」は人の経済活動によって持続可能性が損なわれた状態であり、これを改めて「持続可能な地球」にすることが急務である。

エシカル

英語のethical、直訳すると「倫理的な」という意味。人・社会・環境にやさしい商品やサービスを表す。フェアトレード、寄付付き、オーガニックなどの商品・サービス全般を幅広く形容する言葉として、最近よく使われている。

ソーシャルグッド/ソーシャルビジネス

英語のsocialは直訳で「社会的な」という意味。持続可能な社会の実現に配慮された商品やサービスのこと。この言葉も厳密な定義はなく「エシカル」と同様に、幅広い対象を表すときに使われる。

ロハス

Lifestyles of Health and Sustainabilityの頭文字をとった略語。健康的な生活と社会の持続可能性とを大切にするライフスタイルを指す言葉。

スローライフ/スローフード/スローファッション

イタリアのローマに進出した「ファストフード」がきっかけとなり、その対義語として「地産地消の素材」「伝統的なレシピ」「丁寧に作られた」などの要素を持つ食べ物を「スローフード」と呼んだ。「ファストファッション」に対して「スローファッション」というときは、良質な服を1シーズン限りでなく愛着を持って長く着続けることなどをいう。日本では、地方で暮らすこと、身の回りのものや食材をできるだけ手づくりして暮らすことなどを「スローライフ」と呼んでいるが明確な定義はない。

エコ

地球環境に配慮すること。また、環境に配慮する意識のこと。具体的には、省エネルギー・リサイクル・生態系の保護・使い捨てをやめる・製品の原材料を生分解可能な素材に切り替える などがある。

オーガニック(有機栽培)

国際基準に基づき、日本では「農薬や化学肥料を2年以上使用していない農地で、農薬や化学肥料を使わずに生産された作物」などの基準を満たしたときに農林水産省の有機JASマークが付与される。認証を受けていない商品が「有機」「オーガニック」の文言を表示することはできない。

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コミュニティトレード

フェアトレードが「公正な価格」で取引するしくみで、国際フェアトレード基準を満たした商品しか表示できないのに対して、コミュニティトレードは生産者・地域と向き合う取引といった意味で使用され、厳密な定義はない。たとえば、第3世界ショップは地域の問題を解決する取引のことをコミュニティトレードと呼んでいる。

サーキュラーエコノミー(循環型経済)

CO2排出や廃棄物などで地球に負荷をかけることなく、資源を再利用して循環させる持続可能な経済のこと。

カーボンフットプリント

カーボンとは二酸化炭素(CO2)のことで、直訳すると「CO2の足跡」の意味。製品が製造されて使用され廃棄されるまでにCO2をどれだけ排出するかを表す数値。商品やサービスだけでなく、企業の活動などについてもカーボンフットプリントで環境負荷を数値化できる。

ESG投資

E(Environment=環境)、S(Social=社会)、G(Governance=ガバナンス)を基準に企業を評価して投資すること。投資家も地球環境保護に配慮した「責任投資」をすべきいう考え方が背景にある。

この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)

SDGs目標1貧困をなくそうSDGs目標3すべての人に健康と福祉をSDGs目標4質の高い教育をみんなにSDGs目標8働きがいも 経済成長もSDGs目標10人や国の不平等をなくそうSDGs目標12つくる責任 つかう責任SDGs目標13気候変動に具体的な対策をSDGs目標14海の豊かさを守ろうSDGs目標15陸の豊かさも守ろうSDGs目標16平和と公正をすべての人にSDGs目標17パートナーシップで目標を達成しよう
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