学長メッセージ

千葉商科大学は、建学の精神を有用の学術と商業道徳の涵養としています。
本学が創立された1928年は世界大恐慌の前年でした。本学の創設者、遠藤隆吉博士は大恐慌直前のバブル経済のなか、商業道徳の頽廃を歎き、「まっとうな商い」の教育の必要性を痛感し、本学の前身となる巣鴨高等商業学校を設立しました。
遠藤博士は商業道徳を涵養するために、「武士的精神の注入を」としましたが、これは新渡戸稲造が整理した日本のモラルの源泉である、武士道精神のことです。この武士道精神を教育の基本に据え、単なる学問のための学問ではなく、社会に役立つ実学の教育を推進しました。

私は武士道精神について新渡戸稲造が掲げた7つのキーワード「義・勇・仁・礼・誠・名誉・忠義」のうち、最初の3つが特に重要だと考えています。「義=正しいことを判断する能力」、「勇=実行する勇気」、「仁=他者への思いやり」の3つです。

国連のSDGs(持続可能な開発目標)には17の目標がありますが、それらに共通するテーマは「誰一人、取り残さない」です。すなわち、全ての人に目を配り、十分な配慮をするということで、これは武士道の「仁」につながるものです。仁とは、人と人との間のことで、思いやりを持つ、十分な配慮をするということです。だから、SDGsも武士道も同じ方向を向いているのです。

また、遠藤隆吉氏は本学の前身となる巣鴨高等商業学校の設立理念に「実業は決して己の利益のみを目指すものではなく、社会に奉仕することを目的とする立派な事業である」と記し、高い倫理観を持つ「治道家(ちどうか)」の育成を教育理念としました。「治道家」とは、今日的な意味では「大局的見地に立ち、時代の変化を捉え、社会の諸課題を解決する、高い倫理観を備えた指導者」を意味しますが、これはSDGsに取り組み、エシカルでサステナブルな事業を追求することと捉えることができます。

本学では2017年から学長プロジェクトを起点として幅広く、SDGsをカバーした教育研究と地域貢献活動を推進しています。
2019年には「千葉商科大学SDGs行動憲章」を策定し、SDGs達成への取り組み方針を学内外に公表しました。これは、建学の理念に基づく本学の教育研究及び事業活動において社会的責任を果たす際の指針とすることを目的としています。
これに沿って、本学はこれからもSDGs達成に貢献する様々な活動を推進してゆきます。

原科 幸彦