地域活性化に対するアートの役割について

研究目的

我々の研究目的は、「アートの力に着目した上で、地域の持続可能性の一つのモデル(仮説)を導出すること」である。その手段として、市川市を対象とし、地域に密着したアート・プロジェクトを実施し、アートや創作活動を通じて人々が地域に対してどのように関わりを深めていくのかについて、彼らの心理や行動を観察・分析していく。具体的なアート・プロジェクトの内容は、美術を専攻する学生や若手アーティストを主体としたワークショップを開催し、市川市在住者をはじめその他の地域の人々に対して、アート創作活動の機会を定期的に提供する。その後、アート作品を対象とした「蚤の市」を実施し、そこでは、当ワークショップで創作した作品だけではなく、美術を専攻する学生や若手アーティストの作品も出品可とする。但し、ここで重要な点は、その際に出品される作品は市川市で作られたものであり、「Made in ICHIKAWA」ブランドを明記したものに限るという点である。以上のようなアート・プロジェクトを通じて、地域におけるアート創作活動によって人々が地域との関わりをどのように深めていくのかについて理解していく。このことは、近年、直島(香川県)や湯布院(大分県)のようにアートによって地域活性化を実現している地域がある中で、「なぜアートによって地域活性化が実現したのか」といったメカニズムを理解することであり、つまりは、地域の持続可能性の一つのモデルを提示することに繋がると考えている。

また、本研究においてアート・プロジェクトの実施は単なるイベントの開催ではない。近年、社会学の分野では写真や映像、音楽、演劇、パフォーマンスなど文字以外のメディアを用いた調査あるいは調査結果の公表という新しい方法論に関心が集まっており、こうした手法はArts-Based Research(アートベース・リサーチ)と呼ばれ、日本においてもその実践が端緒についたところである(岡原他 2016)。本研究において、「なぜアートによって地域活性化が実現したのか」という問いは、問いの対象でもあるアートという技芸と切り離されることなく追求される。本研究の最終的な目的は「なぜアートが」だけではなく、「どのようなアートが」地域の活性化に寄与する力を持ち得るのかを明らかにすることにある。この時、そのアートの姿形は、報告書や論文といった文字メディアによって説明されるだけでなく、アートあるいはアート・プロジェクトそのものとして表現されることによって、別の地域に対する実践的な応用性を獲得することになるだろう。

研究員

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