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2019年12月24日
SDGs初心者必見 目標7「クリーンエネルギーの実現」を議論“RE Action For Teachers”パネルディスカッションレポート
「今こそ教育現場から気候変動対策を! RE Action For Teachers」と題したシンポジウムが、 12月2日(月)、衆議院第一議員会館で開催されました。
このシンポジウムは、SDGs(持続可能な開発目標)にも盛り込まれた気候変動問題について、教育業界がどのように対策を講じ、実践していくかを考えることが主旨。当日は先進事例をまじえながら、教育業界が果たす役割について議論されました。
人類は、「化石燃料文明」を卒業しなければならない
基調講演を行った国立環境研究所の江守正多氏は、現在、世界平均気温は上昇の一途を辿っていると指摘。今のペースだと2040年前後には1.5度上昇すると危機感を示しました。
「気温上昇により私たちは、『海面上昇』『洪水』『台風』『熱波』などの8つのリスクを負います。実際、日本では豪雨災害や熱波による健康被害の増加が、実感できるレベルに達しています」
地球規模では、北極域や乾燥地帯、沿岸低平地、小さな島々などに住む途上国の人たちが深刻な被害を受けつつあることが説明されました。
「気温上昇に大きな影響を与える要因はCO2です。CO2は石炭や石油など化石燃料を使ってエネルギーを生み出す際に、その多くが排出されます。CO2を排出しない再生可能エネルギーの活用は急速に伸びているものの、まだ割合的には少ないのが現状。今後、再生可能エネルギーの割合を高めていく必要があります」と、江守氏は強調しました。
最後に、地球温暖化を阻止するためには、化石燃料文明を卒業することが不可欠。それに向けて、単なる制度や技術の導入だけではなく、人々の世界観の大変換が求められていると語り、講演を締めくくりました。
SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の実現に向け、教育業界はどう取り組むべきか
続くパネルディスカッションには、早期に再エネへと切り替え、気候変動対策に取り組む教育機関から以下の5名が登壇。
SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の実現をテーマに、現状の課題や各教育機関の活動内容などについて意見が交わされました。
登壇者
- モデレーター:山根小雪氏(日経エネルギーNext編集長)
- 井上一氏(星槎)
電気代で社会貢献ができる「星槎電力プロジェクト」に取り組む
- 田口努氏(横浜YMCA総主事)
運営する保育園・学童・施設を再生可能エネルギーに変更 - 鈴木康平氏(自由学園 学園長補佐兼環境文化創造センター次長)
幼稚園から大学までの一貫教育にて、持続可能な社会実現に向けた教育に取り組む - 鬼沢真之氏(自由の森学園理事長)
ESDを教育の柱に据える。ユネスコスクールに加盟 - 橋本隆子氏(千葉商科大学副学長)
電力での「自然エネルギー100%大学」を実現
モデレーターを務める山根氏は、16歳のグレタ・トゥンベリさんによる環境活動が世界中で拡大しているのに対し、日本を含めて大人の反応は冷ややかだと指摘。この現状をどう思うかという問いを投げかけました。
これに対し星槎の井上氏は、日本は特に、行動することで世の中を変えられるという感覚が薄い。学校でもそのことを教えられていない。これが今の日本の空気だと答えました。
さらに、千葉商科大学の橋本氏も、世界では若者がリードする形でデモが拡大しているが、日本では若者の反応も薄い。行動を起こすことを教えていないのは、日本の教育の課題だと加えました。
続いて山根氏は各登壇者に対し、再エネ導入のきっかけや導入時の課題について尋ねました。
これに対し、橋本氏は、「環境分野の教授が強い危機感を持っていた」と説明。それをきっかけに、自然エネルギー100%の大学をめざして、2013年から緻密にプランを立てて取り組んできたと話しました。
具体的には、太陽光発電やLEDなどのハードウェアに設備投資し、学内のエネルギーを可視化するソフトウェアも開発。同時に学生への啓発活動も行い、ハートウェアを育むことに注力してきたといいます。結果として、電力における自然エネルギー100%大学(※千葉商科大学は大学所有のメガソーラー発電所などの発電量と大学の総エネルギー使用量を同量にするもので、日本国内の大学で初の試みとして挑戦している)を達成できたことを共有しました。
一方、自由の森学園の鬼沢氏は、再エネ導入に踏み切った決定的な理由が東日本大震災だったことを明らかにしました。鬼沢氏は、福島の原発事故について触れ、「あの震災を経験した私たちは、新しい電線を引いてでも、再エネ化を実現せねばならないと思った」と当時を振り返りました。
リスクマネジメントコストを抑制したことが原発事故を招いた要因のひとつであることから、「安ければいい」という考えを見直し、多少のコスト増となっても再エネに変えるべきだと考えたことを語りました。
また、自由学園の鈴木氏と横浜YMCAの田口氏は、再エネを提供する「みんな電力」に切り替えた際、「顔の見える電力」というコンセプトに魅力を感じたといいます。同社のサービスは、電力を生み出す生産者がどこの誰なのかが分かるため、「電力を大切にしよう」という気持ちが育まれやすいと説明しました。
最後に、井上氏が、「星槎電力プロジェクト」の取り組みについて紹介しました。井上氏は、授業で環境問題やSDGsを学ぶだけでは面白くないと指摘。そこで、再エネに切り替えることでコストダウンできた分を、ブータンやエリトリアの途上国支援に充てる仕組みを構築しました。
背景には、自分たちのアクションが誰かの笑顔につながることを知ってほしいとの考えがあったといいます。アクションを起こすことで、未来は変えられる——これを体験もまじえながら、次世代を担う若者に伝えていくことの重要性が確認され、ディスカッションは締めくくられました。
学生による省エネ活動の紹介
パネルディスカッション終了後には、学生によるスピーチが行われました。千葉商科大学からは、自然エネルギー達成学生機構「SONE(Student Organization for Natural Energy)」の代表者が取り組みの内容を紹介しました。
SONEでは「省エネ活動」「啓発活動」「発信活動」の3つの活動に取り組んでいます。「省エネ活動」では、無駄な電力使用がないかをチェックする教室使用調査や省エネパトロールを実施。
「啓発活動」では、打ち水の実施やグリーンカーテンの設置を行い、冷却効果を確かめました。さらに、「発信活動」として、学会発表にも参加。「学生に無理をさせず省エネをする」ことで、より多くの学生を巻き込んだ活動へと広げていくことが語られました。
この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)
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