MIRAI Times社会の未来を育てるウェブメディア

インタビュー

CSR

「CSR」はCorporate Social Responsibilityの略で、「企業の社会的責任」と訳されます。しかし、これまで日本では「社会貢献」という意味合いで捉えられることが多く、CSR=大企業が行う慈善活動と考える人も多かったように思われます。

ところが、グローバル化の進展と共に、日本の企業にも国際的な観点からのCSR活動が求められるようになりました。これまでCSR活動を行っていなかった中小企業の場合は特に、CSRの定義、そしてどのようにCSR活動を取り入れていけばいいのかが分からず、悩むことも多いでしょう。

そこで今回は、CSR/SDGsコンサルタントの笹谷秀光さんに、CSRの意味、日本企業の具体的な取り組みや国の政策との関連性などを伺いました。

—「CSR」「企業の社会的責任」とは何なのでしょうか。改めて、先生のお考えをお聞かせいただけますか?

笹谷秀光氏

企業は社会の中に存在することから、「企業活動に経済・社会・環境の3つの要素を盛り込み、自社の利益を追求するだけではなく、社会や環境にプラスの影響を与えるよう尽力する必要がある」という考えです。20世紀の終わり頃からヨーロッパを中心に広まり、日本には2003年に入ってきました。

—日本においてCSRはどれくらい浸透しているのでしょうか?

社会や環境に配慮しながら企業活動を行うということに関しては、かなり定着しています。というのも、日本のビジネスでは、近江商人の心得である「三方良し(自分良し・相手良し・世間良し)」が浸透していて、道徳性や倫理性が重視されてきました。つまり、昔からCSR活動は行われていたんですね。

一方で、これも日本特有なのですが、「わかる人にはわかる」「良い行いをしていれば自然と伝わる」という、「陰徳善事(いんとくぜんじ)」の考え方があります。せっかく「三方良し」の企業活動を行っていても、それを発信しないがために仲間は増えず、イノベーションも起こらない。これが日本のCSR活動の最大の課題だと感じています。

現在ICTの進化によって、グローバリゼーションが加速しています。ヒト・モノ・カネ・情報が日本だけにとどまらず、世界と密接につながっている状況下で、陰徳善事の殻に閉じこもっていてはとても立ち行きません。そこで私は、自分が行っているCSR活動の内容をきちんとステークホルダーに発信するべきであると「発信型三方良し」を提唱しています。

—例えばどのようなCSR活動が行われているか、ここ数年の例を具体的にご紹介いただけますか?

笹谷秀光氏

私が以前在籍していた株式会社伊藤園では、「茶畑から茶殻まで」をモットーにCSR活動に注力しています。調達から製造、 販売まで一貫した生産体制を構築しており、大量に出る茶殻も、紙や樹脂製品にリサイクルする仕組みを確立しました。

茶葉の調達では「茶産地育成事業」として、農家の方と品質向上に取り組む契約栽培と、耕作放棄地を活用して畑づくりからサポートする新産地事業を行っています。これにより、伊藤園は高品質の茶葉を確実に調達することができ、農家の方々は安定的な経営が可能になりました。

地域においては、耕作放棄地解消や自給率向上、雇用創出につながり、世の中には環境に配慮した製品が提供されています。まさに「三方良し」で、持続可能性な生産と消費の体系を実現した代表事例です。

—企業がCSR活動を考える上で必要なことはどのようなことでしょうか?

まずは、自社のビジネスに「三方良し」の考えを組み込み、それをどう実践してくのか戦略を立てること。そして構造ができたら適切な方法とタイミングで実行、発信します。

発信するといろんな人からリアクションがきます。多種多様な意見を取り込むことによって化学反応が起こり、ビジネスは確実に変化・進化していくでしょう。CSR活動は、経営の改革にもつながるものなのです。

—伊藤園の事例もそうですが、自社のビジネスに合った活動を行うことが大切なんですね。

笹谷秀光氏

はい。2010年にISO(国際標準化機構)が発行した「ISO26000(社会的責任に関する手引き)」で、本業を軸にCSR活動を行う有効性が明確に打ち出されました。自社のビジネスを少し工夫することで、ノウハウを活かしながら社会や環境の持続可能性に貢献でき、かつ無理なく継続することができます。

—経済産業省がCSR活動を推奨しているのはなぜでしょうか?

健全な企業経営が健全な社会につながる。それぞれの企業が社会的責任を果たしてイキイキとビジネスを行うことが、世の中全体の福利につながると考えているからです。

推奨しているだけでなく、国が良い方向へ進むような取り組みもしています。企業の情報開示によって、投資家をはじめとするステークホルダーとの相互理解を深めることやイノベーションの促進を目的とした「価値協創ガイダンス」を2018年に策定しました。この情報の中にはCSR活動も含まれます。

—国の政策は企業経営やCSRにどのような影響を与えますか?

「価値協創ガイダンス」に沿った活動をした企業は、公式のロゴマークの使用が可能になります。また、ステークホルダーは経済産業省のウェブサイトから、各社がガイダンスをどのように参照し、活用したかを閲覧することができます。

CSR活動は、間違いなく自社のアピールや価値向上につながり、新たなビジネスチャンスを生み出すでしょう。だからこそ、「発信型三方良し」を今こそ実践してほしいですね。

笹谷秀光(ささや・ひでみつ)
CSR/SDGsコンサルタント、社会情報大学院大学客員教授。学校法人千葉学園評議員。農水省・環境省出向・外務省出向など31年間行政に勤め、退官後の2008年、伊藤園に入社し、取締役、常務執行役員を務めた(伊藤園は政府の「第1回ジャパンSDGsアワード」で特別賞を受賞)。2019年より現職。SDGsを自分事化して発信する「発信型三方良し」を提唱している。

Q&A SDGs経営

著書紹介

『Q&A SDGs経営』(日本経済新聞出版社)

SDGsへの対応がなぜ必要か、経営の視点からQ&A形式でわかりやすく解説。SDGs第一人者である著者が、豊富な事例とともにSDGs経営の導入から実装までを説明します。

この記事に関連するSDGs

SDGs目標1SDGs目標2SDGs目標3SDGs目標4SDGs目標5SDGs目標6SDGs目標7SDGs目標8SDGs目標9SDGs目標10SDGs目標11SDGs目標12SDGs目標13SDGs目標14SDGs目標15SDGs目標16SDGs目標17

関連記事