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コラム

はじめまして。千葉商科大学教授の西尾淳です。 近年、自然災害が多発していますが、皆さんのご家庭では、非常食を備えていますか?

非常持出袋

非常食=防災用食品 ではない!

まず皆さんは、「非常食」と聞いた時に何をイメージされるでしょうか。
カンパン、アルファ米など、さまざまありますが、防災用に販売された特別なものを買わなければならないと思い込んでいませんか?

もちろん、防災には、何かキットがひとつあれば安心、という考え方もあると思いますが、5年以上もつものだからと置いておいた非常食が、いつの間にか消費期限を過ぎていて、破棄せざるを得なかった、という経験はありませんか?

非常食として大切なポイントのひとつに「ローリングストック」という考え方があります。

日常的に買うレトルト食品やカップ麺など、ある程度長期保存できる食材をストックしておいて、それを普段の食事としても活用しながらどんどん使っていく、つまり、家庭内でローリングしておくという考え方のことです。

今日は、この考え方をご紹介したいと思います。

学食で「レトルトカレー」を開発

「トリさんのカレー カツオだしの香るキーマカレー」は、本学学食「The University DINING」発のレトルトカレーで、DINING SERVICE DESIGN LAB と本学学生が共同開発したものです。

トリさんのカレー

学食では、月や曜日ごとの統計データを元に、利用する学生の数を想定して提供食数を決めていますが、それでも食べ物があまるときもあれば足りないときもあります。

そこで、フードロスにならないメニューを開発しよう!ということで、「レトルトカレー」を思いついたのです。せっかく作るのであれば学生と一緒に開発しようと、30人ほどの学生に声をかけてプロジェクトにしました。

プロジェクトでは、「地産地消で千葉の食材を使おう」、「日本人が慣れ親しんだ出汁の味をベースにしてはどうか」など、学生から数々の意見が出ました。

そんな中で、レトルトカレーであれば、長期保存が可能な上に1,000食ほど常備できるため、非常食としての一面ももたせられるのではないか、と気付いたのです。

非常食は、味気ないイメージが強いものです。しかし、有事の心が安まらない時だからこそ、温かいもの、栄養のあるもの、おいしいものを口にすることで、少しでも気持ちを落ち着けて欲しい。そのためにも、一役買える商品を作り出そうと考えました。

レトルトカレーは、200グラムのパックだけではなく、学食用として1キロのパックを作ることもできます。厨房でわざわざカレーを作る手間や光熱費がかからず、生産効率が上がります。しかも、カレーは週に1回は出す定番メニューなので、倉庫にたまっていくこともありません。

ローリングストックには、フードロスの観点、非常食の観点以外にもこうしたさまざまなメリットがあるのです。家庭でも同様に、家事の時短や負担軽減につながり、日々の暮らしが楽になるでしょう。

美味しい常備食を循環させる

さまざまなメリットがあるこの「ローリングストック」ですが、実現するために大切なのは、やはり味がおいしいことです。おいしいものであれば、日頃から食べたくなって循環が生まれる、というわけですね。

トリさんのカレー

「トリさんのカレー」では、開発に、普段から学食のメニューやサービスのクオリティー管理のアドバイスをお願いしているフードディレクターにも関わってもらい、そのおかげで、多くの人に好評いただけるおいしいものが出来上がりました。

スパゲティにかけてもおいしいという声を聞き、パスタソースや麻婆豆腐など、カレー以外のレトルト食品の開発にも可能性を感じています。一方で、非常食として子どもから高齢者までのいろいろな人が食べるのであれば、少し辛いかもしれないという意見がありました。万人向けの非常食を目指すには、もうひとつ別の味を開発すべきかもしれません。

今回のプロジェクトで得られたこうしたさまざまな反応を踏まえて、来年度からの本格展開に向け、準備を進めたいと考えています。

——以上、「トリさんのカレー」の事例を中心に、「ローリングストック」についてお話しましたが、皆さんの非常食のイメージは変わりましたか?

5年以上持つ非常食は、もう必要ありません。
普段から食べられる、1年間ほどもつものを常にバックヤードに置いておき、それらを循環させていくことで、廃棄もなくせます。

備えあれば患いなし。 気楽に好きなものから導入してみてください。

トリさんのカレー カツオだしの香るキーマカレー
日本人が慣れ親しんだ出汁に合うようスパイスを配合。材料はすべて国産で鶏肉と落花生ペーストは地元千葉県産を使用している。また、防腐剤未使用で1年間の保存が可能となっている。パッケージデザインは学生の案を基に制作。
イートイン(カレーライスとして学食で提供)、販売用(レトルトカレー1食)共に400円。

The University DINING

The University DINING

本学の学食は、学生だけでなく地域住民にもオープンになっており、その使われ方もさまざま。地域貢献の位置づけから、無料のジャズライブやレジャースポーツイベントの地点として多様に使われている。

この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)

SDGs目標3すべての人に健康と福祉をSDGs目標11住み続けられるまちづくりをSDGs目標12つくる責任 つかう責任SDGs目標17パートナーシップで目標を達成しよう
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