常見陽平著(平凡社2024刊)
「ちょ、待てよ」とキムタク風につぶやきたいことがあります。それは、私が50代になってしまったことです。私自身が、そして「最後のマス」と言われる団塊ジュニア世代、第二次ベビーブーマーが50代になるこのタイミングで、これからの50代の生き方、あり方を提案するべく、この本を書きました。
今どきの50代の置かれている状況、生き方は実に多様です。SNS上で定期的に話題になりますが、『サザエさん』の波平さんは54歳、フネさんは49歳なのだそうです。それに比べると、今どきの50代、60代は健康面においても、見た目においても、若いことは明らかです。一方で、加齢とは肉体的、精神的なものであるだけでなく、社会的なものです。特に人材マネジメント方針の変化により、組織内でのビジネスパーソンとしての加齢が大きく変化しています。管理職の数やあり方が見直されたこと、年下の上司が増えたこと、組織内の年齢構成の変化などから、社会的加齢が変化しています。結果として、いつまでも若手のような感覚で生きてしまいます。そんな私もいつまでも若手だと思っていたら、ある日の会議で職員から「ベテランの常見先生」と言われ戸惑いました。一方、高校や大学、会社員時代の同期は今後の身の振り方を考えています。
執筆の上では、当事者としての視点と、労働社会学者の視点をともに大切にしました。みんなが薄々感じている疑問を代弁しつつ、専門家としてデータや理論、ケーススタディで説明することを意識しました。
50代の置かれている環境の説明、なかでも就職氷河期の影響について詳述した上で、事例をもとに50代の可能性を提示しました。悲観論はいったんおやすみにして、明るい希望を中心に書きました。
特に読者に響いたのは、実際に転職や移住をするつもりがなくても「エア転職」「エア移住」をしてみて、自分が何を大切にしているか、どのような可能性があるか確認するという提案です。また、誰でも「中の上」くらいのスキル、経験があればコンサルタントとして独立できる可能性があることも反響が大きかったです。なんでも自分が悪いという「自己責任グセ」からいかに脱却するかも大きな問題提起でした。
50代が元気にならなければこの国に未来はありません。元気の出る人間讃歌です。ぜひ、ご一読を。
常見 陽平(つねみ・ようへい)
千葉商科大学基盤教育機構准教授。専門は労働社会学。著書に『僕たちは育児のモヤモヤをもっと語っていいと思う』(自由国民社)、『社畜上等! 会社で楽しく生きるには』(晶文社)、『なぜ、残業はなくならないのか』ほか多数。大学生の就職活動、労使関係、労働問題、キャリア論、若者論を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。
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