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コラム

こんにちは。
千葉商科大学で生物学を教えている関口雄祐です。

動物園や水族館に行ってワクワクするのは、子どもだけではありませんよね。「生き物」は老若男女、どんな世代にとっても好奇心を掻き立てられる普遍的なテーマ。生態が明らかになっていないミステリアスな生物を前にすればその謎に迫りたくなり、動物のかわいらしい様子には心を奪われるものです。

今日は、大人でも楽しめる生き物の本を3冊、ご紹介します。彼らの多様な姿は、きっと私たちに多くの気づきを与えてくれるでしょう。

1.『ざんねんないきもの事典』シリーズ 今泉忠明監修(高橋書店2016~2020年刊)

ざんねんないきもの事典

まずご紹介するのは、言わずと知れた『ざんねんないきもの事典』シリーズ。動物から植物、菌まで、幅広い生き物のユニークでちょっとざんねんな特徴をまとめています。

「小学生がえらぶ! ”こどもの本”総選挙」で2回連続1位を獲得し、NHK Eテレ(教育テレビ)でもコーナーがあるほど大人気の本ですが、子どもだけでなく、大人にとっても十分に読み応えのある内容になっていますよ。

私にこの本を教えてくれたのは息子でした。ある日、聞いたことのない生き物の特徴を教えてくれたので、「どうしてそんなことを知っているんだ」と尋ねると、この本を見せてくれました。

息子に借りて読み進めてみると、生き物をとらえる切り口が斬新でどれも非常に面白いのです。ちなみに、私のお気に入りの〈ざんねんな情報〉は、「リカオンはくしゃみの回数で狩りに行くかどうか決める」です。

1ページにつき1つの生き物について、大きなイラストとともに紹介しているのも、わかりやすいですね。忙しい人でも、隙間時間にパラパラと好きなページだけ読めば、いい気分転換になるのではないでしょうか。

こうした単純な「面白い!」という気持ちは、探究心につながります。私も幼少時代、さまざまな秘密を解き明かした漫画本を読んで生き物の魅力に気付いたことがきっかけで、今があります。お子さんと一緒に読んで、「へぇ~」なんて言いながら、新しいことを知る喜びを感じてくださいね。

2.『眠れる美しい生き物』関口雄祐著(エクスナレッジ2019年刊)

眠れる美しい生き物

動物の多様な寝姿を見せることで、誰にとっても睡眠は生きるために欠かせない、重要なものだということを伝えたい。そんな思いで本書をつくりました。

動物の寝姿をきちんと観察したことがあるでしょうか。もちろん動物園に行けば、寝ているライオンを見られるでしょう。しかしそれは、檻の中という守られた環境下での眠り。

野生の動物の睡眠は、気温や捕食者、体質、疲労状態などさまざまな条件で変化し、人間のように安定したものではありません。ですから、動物は「~しながら寝る」ということが多いのです。

例えば牛は、食べた植物の消化に時間がかかるため非常にゆっくりと食事をします。そのため1日のほとんどの時間を食事にあててしまい、まとまった睡眠時間が取れず、結果食べながら寝ます。

イルカは、常に周囲を警戒し、何かあればすぐに行動できるよう、泳ぎながら寝ます。このように、動物の睡眠スタイルには理由がともなうのです。

この本では、90種類以上の動物の眠る写真が収められています。動物が目を閉じ、体を休める姿はとても美しく可愛げがあります。寝姿に癒さると同時に、睡眠行動の背景にある、「生きるため」という必死の思いを汲み取っていただければと思います。

イメージ

3.『楽園の真下』萩原浩著(文藝春秋2019年刊)

楽園の真下

最後に、生き物を題材にしたサスペンス小説をご紹介します。読了後の個人的な感想は、「世界的に大ヒットした恐竜映画よりも面白い!」でした。物語の鍵を握るのは、カマキリと、そこに寄生するハリガネムシです。

ハリガネムシについて、簡単にご説明しましょう。体長が数センチから1メートルにまで達する寄生虫で、乾燥すると針金のように硬くなるのが名前の由来です。

このハリガネムシはカマキリに寄生して、時がくると宿主の神経系をコントロールし、水辺に向かわせます。カマキリは通常泳げませんが、脳を操作されているので入水して死んでしまいます。

そのおしりからハリガネムシは出てきて、水の中で交尾し、産卵。孵化した幼生は、今度はカゲロウなどの水生昆虫の幼虫に寄生します。彼らが成虫になり陸に飛び立ったあと、カマキリに捕食されることによって、ハリガネムシはまたカマキリの体内に戻ってくる、というサイクルなのです。

『楽園の真下』では、ある島で全長17センチもあるカマキリが発見され、その取材に向かったフリーライターが、カマキリの巨大化と島で起こった恐ろしい事件の謎に迫っていきます。

事件とカマキリ、そしてハリガネムシの関係、主人公自身が抱える過去、さまざまなことが絡み合いながら謎が解けていくダイナミックな展開に、時間を忘れて一気に読み進めてしまうこと間違いなしです。男女問わず、思いっきり物語に入り込みたい方におすすめですよ。

ハリガネムシの寄生は非常に恐ろしく思えますが、本来、寄生は共生の一種です。互いに利益を与え合いながら共に生きること。これは人間とすべての生き物の関係、そして人間同士の関係にも置き換えられます。

生き物の本を読むことで、生き物をひとつの大きなくくりの中でとらえ、種別や人種といった違いにこだわらずに「共に生きること」を考える、そんなきっかけとなればいいですね。

関口雄祐(せきぐち・ゆうすけ)
商経学部教授、博士(理学)。専門は動物行動学、睡眠科学。「海で暮らす哺乳類はどのように眠っているのだろう?」という素朴な疑問を持ったことから、イルカの睡眠行動について研究を始める。『眠れる美しい生き物』(エクスナレッジ)、『眠れなくなるほどおもしろい睡眠の話』(洋泉社)、『イルカを食べちゃダメですか?』(光文社)など著書多数。

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