睡眠の仕組みとは?
—睡眠の仕組みについて教えてください。
「寝る子は育つ」「寝て治す」と言われるように、睡眠は体や脳の回復はもちろん、体温や免疫機能、ホルモン分泌などの調節といった各種メンテナンス、記憶の整理など、ここでは伝えきれないほどたくさんの役割を担っています。睡眠って本当に大事なんですよ。
そんな睡眠のメカニズムは、疲労蓄積による「睡眠欲求」と体内時計から発せられる「覚醒力」の2つから成り立っています。まずは脳に疲労が溜まってくると大脳からの指令で睡眠欲求が発生。そして眠ると、深い眠りの「ノンレム睡眠」と浅い眠りの「レム睡眠」を一定のリズムで交互に繰り返し、体内時計あるいは目覚まし時計にて覚醒します。
効果的な睡眠とはどんな睡眠か
——しっかり寝たつもりでも、寝た気がしない時があるのはなぜですか。短時間で質の良い睡眠をとる方法はあるのでしょうか。
寝始めにちゃんと眠ることです。詳しく言うと、1回目、2回目の「ノンレム睡眠」「レム睡眠」がとても重要なのです。ここがしっかり眠れていれば、睡眠全体の質が向上します。そのためにも、寝る2時間前にはカフェイン摂取と飲酒を控え、スマホも見ないようにしましょう。
また、適正な睡眠時間は人によって異なります。日中、眠くならなければ十分な睡眠が取れていると思ってよいでしょう。無理に睡眠時間を減らすことは「睡眠負債」となり、血圧上昇、糖尿病予備軍、肥満、免疫力の低下、そして老化にもつながります。
また、17時間起きていた場合の作業効率は、血中アルコール濃度0.05%の酩酊状態と同等とする実験報告も。スペースシャトルの事故もタンカーの事故も寝不足によるヒューマンエラーでした。睡眠不足は百害あって一利なしです!
それでも、平日はどうしても十分な睡眠時間を取れないという方は、休日の「寝坊」でリカバリーを図り、少しでも睡眠負債を減らしましょう。
どうしても眠い時はどうすればいいか
——日中、眠い時の解消方法はありますか。
最も効果的なのは仮眠を取ることです。あまり長く寝てしまうと深い眠りに入ってしまうため、20分以内がいいでしょう。仮眠ができない状況なら、ガムを噛む、カフェイン飲料を飲む、顔を洗う、ストレッチなども有効です。
ありきたりかもしれませんが、その効果は馬鹿にできません。筋肉を動かすと脳が「動かなきゃ」と思うので、特に「噛む」「ストレッチ」はおすすめですよ。
イルカの睡眠について
——先生が研究しているイルカの睡眠について教えてください。
哺乳類でありながら水の中で生活するイルカは、寝ている時でも水上でしっかり呼吸ができるよう、左右の大脳が交互に寝る「半球睡眠」を行っています。
泳ぎながら眠る「遊泳睡眠」のほか、成獣になれば水面に浮いたまま眠る「浮上睡眠」、水族館のイルカならプールの底に沈んで眠る「着底睡眠」など、睡眠のバリエーションが増えるのも特徴です。
ヒトも半球睡眠ができるかどうかは定かではありませんが、トレーニングを積めば、あるいはできるようになるのかもしれません。でもやっぱり、そんな夢は見ずにちゃんとぐっすり眠りましょう。
関口雄祐(せきぐち・ゆうすけ)
商経学部経営学科教授、博士(理学)。行動生理学、睡眠科学、特にイルカの睡眠行動(半球睡眠)に関する研究が専門。『眠れなくなるほどおもしろい睡眠の話』(陽泉社)では、ハエ、イルカに、ヒトの半球睡眠など、さまざまな種のさまざまな眠りから、生存に欠かすことのできない睡眠の謎に迫った。近著の『眠れる美しい生き物』(エクスナレッジ)では、おもしろ可愛い生き物たち全91種の奇妙な睡眠習慣を写真とともに解説している。
この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)
関連リンク
この記事が気に入ったらフォローしませんか。
千葉商科大学公式TwitterではMIRAI Timesの最新情報を配信しています。