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インタビュー

SDGsやCSRに対する姿勢が問われる今、日本企業・団体はそれらにどう取り組んでいるのでしょうか。MIRAI Timesでは、SDGsやCSRに取り組む企業・団体の事例を連載でご紹介します。具体的な取り組み内容について、千葉商科大学の学生記者が取材しました。

第5弾は「TOTO株式会社」。取材に応じていただいたのは、同社のUD(ユニバーサルデザイン)・プレゼンテーション推進部 東京プレゼンテーショングループ企画主査 冨岡千花子さん(写真右)と、広報部東京広報グループ 岩崎愛さん(写真左)です。

TOTO株式会社訪問

ユニバーサルデザインのパブリックトイレ

学生記者:御社はユニバーサルデザイン(UD)を意識したパブリックトイレ(非住宅用トイレ)の開発に注力されています。なぜ、UDを重視するようになったのでしょうか。

冨岡さん:TOTOがUD視点を取り入れたパブリックトイレの開発に力を入れ始めたのは1960年頃ですが、背景には当時の社会的変化や法令が影響しています。影響が大きかったのが1964年に開催された東京オリンピック・パラリンピックです。

その頃から、車いす使用者が無理なく使えるパブリックトイレの開発に力を入れるようになりました。さらに、乳幼児連れや高齢者、オストメイト、視覚障がい者など、様々な方たちに配慮した製品開発に取り組むようになりました。

学生記者:視覚障がい者に配慮したパブリックトイレというのは、具体的にどのようなものなのでしょうか。

TOTO株式会社訪問

冨岡さん:視覚障がい者の方たちは、トイレのボタンを操作しようとする際、壁を触りながら確認をされます。その時、誤って非常用のボタンを押してしまい、警備員が来てしまうというトラブルが見受けられました。

そこで、ボタンの位置を統一するために、国がJIS(日本の産業製品に関する国家規格)を制定したのです。そうすることで、押し間違いによるトラブルを減らすことができました。

岩崎さん:また、最近では「機能の分散配置」にも取り組んでいます。これまで、一カ所の多機能トイレに、様々な人へ配慮した設備を集中させていました。しかし、結果として多機能トイレが混みあってしまい、使いたい時に使えないという問題が発生していました。

そこで、ひとつのトイレ空間に、それぞれの機能を分散させて設置する提案を強化したのです。分散させれば、利用者が自分の必要とする機能を備えたトイレを選んで使うことができ、混雑を緩和できます。より快適なトイレ空間を実現できると考えました。

性的マイノリティに配慮したトイレづくり

学生記者:2015年頃から、性的マイノリティの方たちに配慮したパブリックトイレづくりにも取り組まれていると聞きました。

TOTO株式会社訪問

冨岡さん:はい。まず、性的マイノリティの方たちに配慮したトイレを企画するために、性的マイノリティに関する調査研究を行いました。すると、当事者たちは「どこのトイレに入ったらよいか分からない」「小さい頃からトイレに入るのが苦手だった」といった悩みをお持ちであることが分かりました。

そこで、男性用トイレ、女性用トイレに加えて、「男女共用のトイレ」を設置する提案を始めました。「男女共用のトイレ」とは、少し広めのスペースを確保し、性別関係なく使えるトイレのことです。

学生記者:性的マイノリティに配慮したパブリックトイレの企画・設計をするにあたって、苦労した点などはありましたか。

冨岡さん:一部の当事者たちは、自分の悩みについてカミングアウトしておらず、自分たちが話題にされることを嫌がる方もいらっしゃいます。そこに葛藤がありました。

TOTO株式会社訪問

しかし、困っている方を見ると、そのままにしておけないという思いもあります。そのため、当事者を含め社会の皆さんに、様々なパブリックトイレの必要性について、調査結果や冊子を用いて伝えるようにしました。

学生記者:今後さらにパグリックトイレを発展させるにあたり、どのような方たちを対象にしようとお考えですか。

TOTO株式会社訪問

岩崎さん:障がい者や高齢者、性的マイノリティの方たちに限らず、「一人でも多くの方に」快適にトイレを使っていただくことが私たちの目標です。そういう思いを持って、常日頃から色々な人から話を伺ったり、現場を見たりして、日々発見をしながら、追求をしています。

その中から、たとえば知的障がい者の方などが、トイレに不安を抱えていることが見えてきたので、さらなる研究を進めているところです。これからも、UDの視点を大切にしながら、今以上に調査・研究・提案を進化させていきたいですね。

学生記者:ありがとうございました。

企業プロフィール
TOTO株式会社は、1917年に福岡県北九州市で創業した住宅設備機器メーカー。衛生陶器や水栓金具、浴槽などの水回りに関する研究開発・製造・販売を行っている。「日本のトイレ文化を世界に発信し、世界中にTOTOファンを増やしていく」ことを目標に掲げ、ウォシュレット(※)やトルネード洗浄、セフィオンテクトを始めとするトイレ技術や「きれいといれ文化」を世界に発信・広めている。
※ウォシュレットはTOTO株式会社の登録商標です。

この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)

SDGs目標3すべての人に健康と福祉をSDGs目標5ジェンダー平等を実現しようSDGs目標6安全な水とトイレを世界中にSDGs目標11住み続けられるまちづくりをSDGs目標17パートナーシップで目標を達成しよう
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