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コラム

こんにちは。
千葉商科大学サービス創造学部長の今井重男です。

皆さんは「ダイバーシティ」と聞くと、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。

電車やバスに乗ると「優先席」があって、高齢者や障がいをもった人などに席を譲るよう促していますね。こうした多様性は身近な問題かもしれませんが、例えばLGBT、国籍の問題についてはどうでしょうか。もしかしたら、あまり馴染みがないという人が多いかもしれません。

今回は、多様な人々が同じ地球で暮らしていくために、決して目を背けてはいけない「ダイバーシティ」について考えるための本をご紹介しましょう。

1.『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ著(新潮社2019年刊)

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

イギリスで生まれ、アイルランド人の父と日本人の母を持つ息子が選んだ中学校は、イギリスの「元底辺校」。人種差別、貧富の差、ジェンダーの悩みなど、さまざまなできごとに直面しながら成長していく息子の様子を、母親であるブレイディみかこさんが軽快な筆致で綴ったノンフィクションです。テレビでも取り上げられ、話題になりました。

ダイバーシティ先進国ともいえるイギリスでは、日本においてはタブー視されているような事柄も学校教育に織り込まれているようで、読んでいて幾度となく目からウロコが落ちるような思いをしました。

例えば、イギリスには「シティズンシップ教育」というものがあって、アフリカの女性器切除(FGM)の問題を取り上げることもあるそうです。この学校には、こうした慣習が残っている地域からやってきた女の子も通っているのでしょう。

日本で暮らしていると、国籍の問題はあまりピンとこないかもしれませんが、どこの国の出身かと聞かれるだけで、不快な思いをする人もいます。もしかしたら自分も、知らず知らずのうちに人を傷つけているかもしれない。そんな視点で、自分の行動を振り返るきっかけになればいいと思います。

2.『良心のトランペット』マーチン・ルーサー・キング著、中島和子訳(みすず書房1968年刊/新装版は2000年刊)

良心のトランペット

2020年5月、米国ミネアポリスで、黒人のジョージ・フロイドさんが白人警官に膝で押さえつけられて死亡した事件を契機に、世界中でBLM(Black Lives Matter:黒人の命は大切だ)運動が広がっています。あらためて黒人差別について考えたいと思って手にしたのがこの本です。

著者であるマーチン・ルーサー・キングは米国の公民権運動のリーダーで、1963年にワシントンDCで行われた「I Have a Dream(私には夢がある)」という演説で知られていますね。本書はキング牧師の講演を集めたもので、これが遺著となりました。

キング牧師は、徹底して非暴力による人種差別の撤廃を訴えました。私が心を打たれたのは、キング牧師らの行動に反対する人たちに対して、「われわれはあなたがたを愛しましょう」と呼びかけたこと。現在、各地で起こっている抗議活動は、キング牧師の表現方法とは少し違っていると感じます。

それにしても、キング牧師がこうしたメッセージを発信して、もう50年以上が経つというのに、いまだに黒人差別の問題はなくなっていません。その理由は何なのか、ぜひこの本を読みながら考えてみてください。

3.『ユニバーサルファッション おしゃれは心と身体のビタミン剤』見寺貞子・笹﨑綾野著(繊研新聞社2020年刊)

ユニバーサルファッション おしゃれは心と身体のビタミン剤

3冊目は、ちょっと違った視点からダイバーシティを考えてみましょう。

この考え方をファッション分野でどのように実現できるか——本書は、ファッションデザインの研究者である著者の、いわば研究の集大成といえるような本です。

ページを繰ると、車椅子に乗った人や障がいを持った人、高齢者が華やかに着飾り、ファッションショーのステージで笑顔を見せている写真が目に飛び込んできます。

そこで、こんな当たり前のことを思うのです。「車椅子に乗っている人がおしゃれをしてはいけない、などということはないんだ」と。例えば障がい者だから、義足だから、ということで、おしゃれをあきらめて機能一辺倒の洋服を着る必要なんてないのです。

どのような体型でも、年齢がいくつでも、ファッショナブルに着飾れば、気持ちがわくわくして、自信にもつながるかもしれません。そんなことを、再認識するのではないでしょうか。

本書ではユニバーサルファッションのデザインのポイントや作り方にまで言及されていますが、服飾を志す人でなくても気づきの多い1冊です。ファッションのような身近なトピックから、ダイバーシティについて考えてみませんか。

図らずもこの3冊が多様な方向性を示していたように、ダイバーシティというのはさまざまな要素を包摂しています。そのすべてに精通する必要はありませんが、世界の人々がもつべき大切な考え方だと思いますので、あらゆるシーンで意識してほしいと願います。

私は千葉商科大学の「ダイバーシティ推進体制検討プロジェクト」のリーダーとして、学内のダイバーシティ推進にも注力しています。まだ緒についたばかりという段階ですが、さまざまな人が集う大学の使命として、ダイバーシティを積極的に進めていきたいと考えています。

今井重男(いまい・しげお)
サービス創造学部長。1992年千葉商科大学商経学部卒業後、株式会社ヤナセ入社。営業職対象の商品研修担当に従事した後、1998年労働組合専従役員(労働協約に基づく休職)となり委員長を務める。2006年に復職し、本社営業推進部、リージョンHQ、その後子会社へ出向し総務課長を務める。企業勤務中に、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科(修士課程)、筑波大学大学院システム情報工学研究科(博士後期課程)で学ぶ。2010年より千葉商科大学大学サービス創造学部准教授、教授を経て、2017年4月より現職。ブライダル産業・サービス、労働市場(雇用戦略、労働市場分析)、多様就業、キャリア形成、労使関係、社会経済の構造変化と働き方の変化などを研究。

この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)

SDGs目標4質の高い教育をみんなにSDGs目標5ジェンダー平等を実現しようSDGs目標10人や国の不平等をなくそうSDGs目標16平和と公正をすべての人にSDGs目標17パートナーシップで目標を達成しよう
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