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コラム

こんにちは。
千葉商科大学商経学部教授の大平修司です。

皆さんは買い物をするとき、どんなことを気にしますか? トレンドや品質でしょうか。お得さでしょうか。

ものができる背景に目を向け、作り手の労働状況や環境問題などに配慮して商品を買うことを「エシカル(=ethical)消費」と呼び、昨今、こうした消費行動をとる人が増えています。

発展途上国の労働者支援につながるフェアトレード商品や、自然や人にやさしい無農薬野菜を買うこともエシカル消費のひとつですね。

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「エシカル消費」は直訳すると「倫理的消費」という意味ですが、具体的には「消費を通じて社会的課題を解決すること」と提示をしています。

環境破壊に心を傷めている。貧しい人のために何かしたい。でも何をすればいいのかわからない——そんな方はぜひ、今回おすすめする3冊を通してエシカルライフについて知っていただき、社会貢献の第一歩を踏み出してください。

1.『はじめてのエシカル 人、自然、未来にやさしい暮らしかた』末吉里花著(山川出版社2016年刊)

はじめてのエシカル 人、自然、未来にやさしい暮らしかた

まず、エシカルを知る手引き書として紹介するのがこの本です。著者は、フリーアナウンサーで、一般社団法人エシカル協会の代表を務める末吉里花さん。

彼女は、過去にテレビ番組『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターとして世界各地を訪れる中で、発展途上国の実情やファトレードの存在を知り、エシカルな行動を広げたいと思うようになったといいます。

エシカルという考え方はどういうものなのか、普段の暮らしの中で気軽に実践できることは何か、ということがわかりやすく書かれており、これから環境にやさしい行動を始めたいと思っている人にとって、ヒントがたくさんつまっている一冊です。

2.『おしゃれなエコが世界を救う 女社長のフェアトレード奮闘記』サフィア・ミニー著(日経BP社2008年刊)

おしゃれなエコが世界を救う 女社長のフェアトレード奮闘記

次にご紹介するのは、日本でいち早くフェアトレードの会社を設立し、エシカル消費を提案し続けてきたイギリス人女性、サフィア・ミニーさんの半生を綴ったノンフィクションです。2004年には「世界で最も傑出した社会起業家」(シュワブ財産)のひとりの選ばれているほど、この分野のパイオニアです。

彼女は、1990年に夫の仕事の関係で来日し、出産します。当時はバブル全盛期で、日本にはまだ環境問題に関心を持つ人が少なく、赤ちゃんの肌によいオーガニック製品を探すだけでも一苦労。そこで、31歳のとき、自分でフェアトレードブランド「ピープルツリー」を立ち上げました。

イギリス人でありながら日本でフェアトレードの第一人者となった彼女は、ビジネスパーソンであると同時に、妻、そして母でもあります。さまざまな一面を持ちながらも、地球環境や途上国への思いを胸に困難を乗り越えていく姿は、パワフルで刺激をもらえます。

3.『大量廃棄社会:アパレルとコンビニの不都合な真実』仲村和代・藤田さつき著(光文社2019年刊)

大量廃棄社会:アパレルとコンビニの不都合な真実

最後の1冊は、エシカルという考え方が広がった背景に視点を移したいと思います。本書では、洋服や食品の「大量生産」「大量廃棄」という恐ろしい実情を、2人の記者が取材し、リポートしています。

ひと昔前を思い返せば、ジーンズの値段は1万円が相場でした。しかし今はファストファッションのお店に行けば990円で手に入るようになりましたよね。この大幅な価格低下は、製造工程を途上国へ移し、人件費を削減した結果と言えます。

例えば、「世界のアパレル工場」となったバングラデシュ。2013年に複数の縫製工場が入ったビルが崩壊し、1,000人以上の死者が出る大惨事が起きました。もともとビルには亀裂が見つかっており、危険な状況だったにも関わらず、製造をストップすることができなかったのです。

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著者のリポートを読むと、私たちが普段手にする洋服の裏に、こうした劣悪な環境で働く人々がいることを思い知らされます。

そして、忘れてはならないのが、消費の次にある「廃棄行動」です。捨てられていく年間数億着の洋服、山のように余る恵方巻きなど、この本では大量廃棄の実態にも迫っています。

大量に作って、大量に捨てる。こうした現実を知ることは、私たちの消費行動を変えるきっかけになるかもしれません。

今回ご紹介した3冊は、1冊目でエシカルという考えに共感し、2冊目で実践する勇気をもらい、3冊目でその裏にある社会問題を考える、そんなひとつの流れにもなっています。ぜひセットで読んでみてください。

日本人の気風は、エシカルな暮らしに向いていると思います。最近では熊本地震の復興支援として、熊本県産のものを買うことで地域を支える「応援消費」が注目されましたが、ふるさと納税やアイドルへの消費など、「応援したい」「後押ししたい」といった気持ちが購買行動につながる傾向があります。

また企業側も、チョコレートを1個買うごとに1円が途上国へ送られるといった、気軽に社会貢献ができる商品を積極的に発売しています。ぜひ、あなたの社会に対する気持ちを、エシカル消費という形で表してみてはいかがでしょうか。

大平修司(おおひら・しゅうじ)
商経学部教授。専門はマーケティング、消費者行動論。著書に『消費者と社会的課題』(千倉書房)、『ソーシャル・イノベーションの創出と普及』(NTT出版)など。普段から積極的に有機野菜や寄附つき商品、コートやジーンズは本当に気に入ったもの、長く使えるものを選ぶようにしている。

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