地球温暖化への取り組みとして、国際社会はSDGsをめざすなどの積極的なアクションを開始しています。この大きな問題に対しては、私たち一人ひとりが日々の生活の中でできることもたくさんあり、小さなことでも実践していくことが大切です。
そこで知っておきたいのが、「エシカル消費」という考え方。これを知っておくと、地球や社会に配慮した暮らしを積極的に実践することができます。今回は、「エシカル消費とは何か」「エシカル消費の具体例」などを解説していきます。
「エシカル」「エシカル消費」の意味は?
エシカル(ethical)とは、直訳すると「倫理的な」という英語です。高校の科目「倫理(ethics)」で覚えている方も多いでしょう。
「倫理」とは、法律で定められてはいないが多くの人が善だと感じること、あるいは「社会的な良識」といった意味です。
「エシカル消費(倫理的消費)」とは、より良い消費のことです。環境省によると、エシカル消費=「地域の活性化や雇用なども含む、人や社会・環境に配慮した消費行動」とされています。わかりやすく言うと、エシカル消費とは、人・社会・環境にやさしい商品やサービスを選ぶことです。
消費行動における「エシカル消費」の考え方は1980年代頃からありましたが、近年特に重視されています。その背景にはいうまでもなく、人権問題や環境破壊が深刻化している世界の状況があります。地球環境のため、一人ひとりがエシカル消費を実践することが求められています。
エシカル消費とは、「より安い」を見直して「より良い」を選ぶこと
「エシカル消費」とは、具体的にはどんなことでしょうか。
普段、私たちが物やサービスを購入するときの選び方を考えてみましょう。チョコレート1箱を購入する場合を例にとります。
普段チョコレート1箱を買うとき一番重視するのは「価格が安い」「おいしい」の2つではないでしょうか。自分の好みに合う味で、価格が手ごろな商品を選択するでしょう。その他の判断基準として、「ポリフェノールが多い」「糖質が少ない」のような健康への配慮や、「パッケージがかわいい」といった付加価値を重視する人もいるでしょう。
エシカル消費では、このような今までの基準に加えて、「人・環境・社会にやさしい商品か?」を考えます。
チョコレートの主原料であるカカオは、アフリカのコートジボワール、ガーナ、東南アジアのインドネシア、南米のブラジル、エクアドルなど。2000年代に入り一部の開発途上国のカカオ農園では、子どもたちが学校に行くかわりにカカオ農園で働いているという報告がされ問題となりました。
こうした生産地では農園で過剰な農薬使用や森林伐採で環境破壊が進行していることもあります。こうした実態はなぜ起きているのかといえば、「カカオを安く調達するため」です。つまり、より安い商品を選ぶという一人ひとりの行動が、巡り巡って子どもの人権問題や環境破壊の原因になっている可能性があるのです。
エシカル消費では、人権や環境や社会に配慮して作られたチョコレートを選びます。つまり、「より安い」ではなく「より良い」商品をえらぶこと、それがエシカル消費です。
ただし「安い」「おいしい」チョコレートを選ぶのはダメというわけではありません。より安くておいしくて、自分が欲しいと感じるチョコレートを買うのは消費者の権利です。それを前提に、商品選びの基準にエシカルな視点をプラスしてみる、といったスタンスで、自分の生活にエシカル消費を取り入れていくことが望まれます。
東京都消費生活総合センターが中学生向け教材として提供している「買い物なびげ~しょん」の「Tシャツに隠された事実」の項目では、Tシャツのエシカル消費についてわかりやすく解説しているので、こちらも参考になります。
エシカル消費の選択基準には、上記のような生産に関する情報のほか、原材料や工場から輸送のために使用されたエネルギーや、廃棄される紙やプラスチックの包装なども含まれます。まとめると以下のようになります。
今までの消費とエシカル消費はどう違う? チョコレートの選び方(例)
今までの消費の基準 | エシカル消費の基準 | |
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人にやさしい |
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環境にやさしい |
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社会にやさしい |
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しかしこの表を見て「エシカル消費って難しい」と多くの人は思ってしまうのではないでしょうか。店に並ぶチョコレートを購入するとき、多くの人は商品の製造過程や会社について知ることはできません。買い物をするときに情報を調べようにも限界があります。
そこで役立つのが各種の「認証マーク」です。次に、各種の認証マークについて解説します。
エシカル消費に役立つ認証ラベル・マーク
消費者がエシカル消費を選択する助けとなる各種の認証ラベル・認証マークがあります。これらを知っておくと商品選びがしやすくなります。
※ラベル・マークは掲載許可を得たものを掲載しています。
エコマーク
生産から廃棄までのライフサイクル全般で環境負荷が少ない商品につけられるラベルです。ラベルと一緒に「ちきゅうにやさしい」という言葉が表示されていることもあります。
国際フェアトレード認証ラベル
製品の原料が生産され、輸出入、加工、製造されるまでの間に、国際フェアトレードラベル機構が定めた基準が守られていることを示しています。
世界フェアトレード連盟ラベル
世界フェアトレード連盟(World Fair Trade Organization)が示すフェアトレードの基準(※)を満たす製品につけられるラベルです。
※基準の詳細については本記事の最後をご覧ください。
MSC認証
海洋環境や水産資源に配慮した漁業で獲られた天然の水産物につけられるラベルです。「海のエコラベル」と呼ばれています。
ASC認証
環境や社会に配慮し、健全に養殖された水産物につけられる認証ロゴです。
FSC®認証
責任ある管理をされた森林と、限りある森林資源を将来にわたって使い続けられるよう適切に調達された林産物に対する国際森林認証制度です。
レインフォレスト・アライアンス認証
環境や働く人に配慮し、より持続可能な生産を行う農園産の商品に付けられるマークです。コーヒー、紅茶、バナナなどについています。
有機JASマーク
農薬や化学肥料などの化学物質に頼らないで、自然界の力で生産された食品を表しており、農産物、加工食品、飼料および畜産物に付けられています。
RSPO認証
環境に対して責任を持ち、農園や工場の従業員及び影響を受ける地域住民へ配慮しながら生産されたパーム油を使用した商品の認証です。洗剤、石鹸、チョコレート、お菓子などについています。
OCS認証
原料から最終製品までの履歴を確認し、その商品がオーガニック繊維製品であることを証明するマークです。
GOTS認証
GOTS(オーガニックテキスタイル世界基準)は、生態系、環境、社会に配慮したオーガニック繊維の加工における世界基準です。
コスモスオーガニック認証
フランス、ドイツ、イタリア、イギリスの設立団体が立ち上げたCOSMOS-standard AISBL(国際非営利社団法人)が制定した、オーガニック・ナチュラル化粧品の国際基準です。
※世界フェアトレード連盟(World Fair Trade Organization)が示すフェアトレードの基準
- 生産者に機会提供
家族経営や小規模生産者が不安定な所得や貧困から脱して、経済的に自立するのを支援する。 - 事業の透明性と説明責任
経営や取引において透明性を保ち、意思決定プロセスにおいて従業員や生産者等が参加できるようにする。 - 公正な取引
取引において、購入する側が利益だけを追求するのではなく、生産者が社会的、経済的に幸福な状態にあることを配慮する。生産者から希望があれば、場合によって無利子で前払いする。許可なく製品を複製せず、生産者の文化的アイデンティティや伝統的スキルを保護する。 - 公正な支払い
生産者に対し、その地域で暮らすのに必要な賃金を支払う。支払いは男女平等にする。 - 児童労働、強制労働の廃止
子どもの権利に関する国連条約を守り、強制労働をさせていない。子どもが働く場合は、子どもの安全や教育に悪影響を与えない。 - 差別をせず、男女平等と労働組合結成の自由
人種、カースト、出身国、宗教、障害、性別、性的指向、組合員数、政治的所属などについて差別をしない。労働組合の結成や参加を阻害しない。 - 良好な労働環境
従業員に安全で健康的な職場環境を提供する。 - 生産者のスキルアップ支援
生産者のマネジメントスキル、生産力向上、市場との取引について支援する。 - フェアトレードの推進
フェアトレードの目的と必要性を認識し、より多くの人にフェアトレードを知ってもらえるよう啓発する。 - 環境への配慮
地元原産物など持続可能な方法で取得できる原料を使い、できる限り温室効果ガスの排出を最小限に抑える。農業ではなるべく低農薬を使う。梱包には、可能な限りリサイクル素材や生分解性の材料を使用し、発送はできる限り船便にする。
毎日のエシカル消費により、一人ひとりがSDGsに貢献!
ここまで読んできた方は、エシカル消費がSDGsの推進に役立つことがすでにおわかりだと思います。エシカル消費はたとえば以下のようなSDGsの個別目標の達成に大きく関わっています。
[1 貧困をなくそう]
[3 すべての人に健康と福祉を]
[4 質の高い教育をみんなに]
[10 人や国の不平等をなくそう]
フェアトレード認証の食品やオーガニック認証がつけられた衣料品を選ぶことにより、よりよい生産現場で生産した製品が選ばれ、結果としてSDGs1、3、4、10のような目標に近づくことができます。
[12 つくる責任 つかう責任]
[13 気候変動に具体的な対策を]
[14 海の豊かさを守ろう]
[15 陸の豊かさも守ろう]
エコマークやMSC、FSCなどの認証マークがついた商品を購入することで、SDGs12、13、14、15といった目標の達成に貢献することができます。
SDGsの17の目標は互いに関連し合っているので、エシカル消費は上記以外のSDGs目標にも当然関わっています。
日本のGDPに占める家計消費の割合は50%。金額にして約300兆円にも上ります。(2017年時点)
参照:消費者庁「平成30年版消費者白書」
一人ひとりの小さな消費行動の積み重ねによってSDGsの達成に近づくことができます。
自分のできることから、ライフスタイルにエシカル消費を取り入れてみてはいかがでしょうか。
参考
- 環境省「平成30年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」第2節持続可能な消費行動への転換 http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h30/html/hj18010302.html
この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)
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