エシカル消費のひとつとして「エシカルコスメ」にも注目が集まっています。エシカルコスメと似た言葉で「オーガニックコスメ」「無添加コスメ」などがありますが、これらはどう違うのでしょうか。
今回は、エシカルコスメの定義とオーガニックコスメとの違い、エシカルコスメの取り入れ方についてご紹介します。
エシカルコスメとはどんなもの? オーガニックコスメとの違いは?
エシカルコスメとは、人・環境・社会にやさしい「エシカル消費」の原則にかなう化粧品のことをいいます。詳しくは以下の通り です。
人・環境・社会にやさしいエシカルコスメ(例)
人にやさしい | フェアトレードで生産者の労働環境を守っている 化学成分を控えるなど、使う人の健康に配慮した製品である |
環境にやさしい | オーガニックまたは自然由来の原材料を使用している 動物実験を行わない 製造や輸送の過程で環境負荷を最小限に抑えている 過剰包装をせず環境に配慮した容器を使用している |
社会にやさしい | 地域の資源を活用している 地域の地場産業や伝統技術、雇用を守っている |
「人にやさしい」には2つの側面があります。
ひとつは生産者にやさしいという意味です。現地の生産者の報酬などの労働環境が適正に守られていること。これをフェアトレードといい、守られることにより現地の雇用促進・経済成長に貢献します。
もうひとつはコスメを使う消費者にやさしいという意味です。一般の化粧品には様々な化学物質が含まれていて、その多くは石油から作られます。化学物質のために肌トラブルを起こす人もいるので、より安心・安全な自然由来の成分を原材料としているコスメがあります。
(※ただし自然由来成分であれば肌トラブルは起きないというわけではありません。)
「環境にやさしい」という条件は、近年SDGs(持続可能な開発目標)でも提唱されている世界の緊急課題と関連しています。急速に進行する地球温暖化を抑えるためにはCO2排出量の削減が急務。そのためには石油など化石燃料を使用せず、資源のムダ使いをやめ可能な限りリサイクル、製造過程で自然環境を破壊しない、など、あらゆる配慮が必要です。
「社会にやさしい」というのもエシカルコスメの要件です。コスメを使う人が住んでいる地域の資源を活用し雇用を創出している製品はエシカルといえます。米や日本酒の副産物を原材料とした国産コスメなどが一例です。
一方、オーガニックコスメは「オーガニックな原材料を使っているコスメ」ということでエシカルコスメに含まれます。オーガニックな原材料とは、農薬や化学肥料を使わず有機栽培された(※農産物の場合はさらに詳細な基準あり)植物のことです。
ここで、「ナチュラルコスメ」「無添加コスメ」などについても合わせて整理しておきます。
名称 | 大まかな定義 | 注意点 |
エシカルコスメ | 人・環境・社会にやさしいコスメ | 何がエシカルなのか情報を確認する |
オーガニックコスメ | オーガニックな原材料を使用したコスメ | 日本にはオーガニックコスメの基準がない |
自然派コスメ ナチュラルコスメ |
植物など天然・自然成分を原材料としたコスメ | 日本には自然派・ナチュラルコスメの基準がない |
無添加コスメ | 何らかの成分が添加されていないコスメ | 自分の肌に合わない成分が含まれていないか確認する |
表に示した通り、実は「オーガニックコスメ」「自然派コスメ」などの表記に日本では明確な基準が定められていません。オーガニックコスメの場合、オーガニックな原材料を全体の何%使用しているのか、化学成分を添加しているのかなどが不明瞭です。ナチュラルコスメや自然派コスメという表現でも同様です。
したがって私たちは、エシカルコスメ、オーガニックコスメなどを選ぶとき、パッケージの表示だけでなく原材料表示などを細かく読み込んで選ぶ必要があります。
一方、欧州ではコスメのオーガニック認証基準が制度化されており(次項参照)、定められた世界基準を元に認証が行われています。
基準があいまいなエシカルコスメ、オーガニックコスメをどう選ぶ?
日本では認証制度がなく、表示基準があいまいな「エシカルコスメ」や「オーガニックコスメ」などをどのように選べばいいでしょうか。以下のような方法があります。
1.オーガニック認証を受けたコスメを選ぶ
欧州では、フランス、ドイツ、イタリア、イギリスの設立団体がCOSMOS-standard AISBL(国際非営利社団法人)を立ち上げ、2017年から統一基準による「コスモス認証」がスタートしました。日本では、エコサート・ジャパン株式会社が国内で唯一、認証を行っています。
2.原材料表示で化学物質の有無を確認する
日本のコスメには「すべての成分を記載する」「含有量の割合が多い成分から順に記載する」「含有量1%以下の成分の表示順は自由」という規定があります。したがって、成分表示はコスメ選びの重要な手掛かりです。
一般の化粧品には多くの化学物質が含まれています。例を挙げると「パラベン」「ワセリン」「グリセリン」「ジメチコン」「ブチレングリコール」などなど。これらの成分は安全性が確かめられたものであり一定の保湿・美白・抗菌などの効果や機能が認められているもので、化学物質が一概に悪いとはいえないのですが、エシカルであるとはいえません。
オーガニックコスメ、自然派コスメといった表記をしていても、成分表示を見ると多数の化学物質が使用されている場合もあるので、詳細な成分表示を確認しましょう。
3.「××不使用」「××フリー」を手掛かりに選ぶ
例えば、以下のような表記が参考になります。
- 「無香料」「無着色」
余分なものは加えないという考え方です。 - 「ノンシリコン」
シャンプーなどに含まれるシリコンが頭皮や肌に刺激となることがあり、ノンシリコンシャンプーも増えています。 - 「パラベンフリー」
防腐剤として添加されるパラベンを不使用としているコスメもあります。 - 「(合成)界面活性剤不使用」
界面活性剤は洗顔料やシャンプーによく使われています。自然環境へ排出されると分解されにくいものがあり、環境破壊の一因とされます。 - 「鉱物油不使用」
石油の一種である鉱物油を使っていないコスメです。
4.ウェブサイトでコスメブランドのコンセプトや製造過程を確認する
気になるコスメブランドがあったら、ウェブサイトに公開されている情報をよく読んで確認してみましょう。自信をもってエシカルやオーガニックのコスメを提供しているブランドほど、製造過程や原材料調達ポリシーなどをわかりやすく明確に記載しています。
会社がSDGsや環境への積極的な取り組みをしている情報も得られるかもしれません。製品のコンセプトや企業理念に共感できるコスメを選びましょう。
5.試供品などを試してみる
どんな化粧品でも自分に合うものでなければ使い続けることができません。エシカルコスメやオーガニックコスメは一般化粧品よりは低刺激で肌トラブルが起きにくい傾向はありますが、自然由来の特定成分が肌に合わないこともあります。製品コンセプトに共感できて、かつ自分にとって使い心地がいいコスメラインを見つけましょう。
人・環境・社会にやさしいエシカル消費はコスメ以外にも食品・ファッションなど様々な商品やサービスが対象となりますが、コスメの場合、エシカルコスメは髪や肌にもやさしいので自分が心地よくなれることが多く、「環境にいいものを選ぶことは自分にとってもいいこと」を実感できます。エシカル消費のなかで、価格も手ごろなエシカルコスメは取り入れやすいのではないでしょうか。
海外ブランドのエシカルコスメ
主に日本で買いやすい海外コスメをいくつかご紹介します。
THE BODY SHOP
イギリスに、自然派化粧品のお店をオープンするところから始まったコスメブランドで、日本には1990年に初出店。主力商品の原材料としてガーナのトゥンテイヤにてコミュニティートレード(ザ・ボディショップ独自のフェアトレードプログラム)によりシアバターを調達。同時に医療や教育などの支援も行っています。
LUSH
イギリスのコスメブランドで、製品はすべてベジタリアンの原材料のみを使って手作りしている。原材料を調達するときはコミュニティや地域に貢献する責任を果たし、フェアトレードを実践。絶滅危惧種の保護にも取り組んでいます。パッケージが一切ない「ネイキッド商品」としてシャンプー、ソープなどを販売しています。
L'OCCITANE
フランス・プロヴァンスのエッセンシャルオイル販売から始まったブランド。2025年までに容器の100%をリサイクルプラスチックにすることを宣言し、自然環境の保護、生産者とのフェアトレード、伝統技術の継承、女性の自立支援などにも取り組んでいます。同社は植樹活動の一環で2019年に南相馬市に1301本の苗木を植えました。
rms beauty
アメリカのナチュラルコスメブランド。有害な化学物質、防腐剤、遺伝子組み換え成分などを不使用。ナチュラルな原材料に含まれる栄養素を極力損なわない製造工程に特徴があります。
ethique
ニュージーランドから世界初のパッケージのない「固形バー」ブランド。ナチュラルな原材料で製造したシャンプーやコンディショナーを固形石鹸のような形で販売しています。「ごみゼロ」が特徴ですが、旅行などに持ち運びやすい実用性もありそうです。
IDUN
スウェーデンのミネラルコスメ。スウェーデン人研究者、皮膚科医が独自成分を開発してつくられたコスメで、同国の気管支喘息アレルギー協会が推奨しています。100%ヴィーガン製品を目指し、常に研究を重ねより良い成分の採用、製品開発に取り組んでいます。
日本ブランドのエシカルコスメ
クーネ
ネパールの教育支援などに取り組む「ネパリ・バザーロ」が展開するコスメ「クーネ」シリーズ。椿油、ゆずエキスなど日本各地の天然成分とネパールの天然はちみつなど、植物由来の成分や原料を優先して使用しています。
フプの森
持続可能なまちづくりモデルとして評価を受けている北海道下川町が、森林資源を活用するために始めた精油事業です。森のモミエッセンシャルオイルを配合した天然成分の石けん、子どもにも安心して使える虫よけスプレーなどを製造販売しています。
エコーレア
創業100年の石けんメーカー。石油系界面活性剤、保存料などの人や環境に不安のある原料は一切使っていません。石けんを活かした無添加のスキンケア・ヘアケア・オーラルケアを提案しています。
Spoon Spoon
無農薬・無化学肥料栽培の原料で作られた国産オーガニックコスメ。国産のダマスクローズをメインに国産の米、大豆、ヒマワリなどを原材料として製造されています。障がい者雇用や自然環境保全にも力を入れています。
RUHAKU
沖縄の「月桃」「シークワーサー」「クチャ(粘土)」などを主原料とするオーガニックコスメを製造販売しています。
HANAオーガニック
石油由来の成分不使用、国際的なオーガニック認証基準に基づく独自基準を掲げ、オーガニックスキンケアコスメを提供しています。各種の肌の悩みと目的に合わせたバリエーションを用意しています。
ゆきくら
酒蔵が造った日本酒由来の化粧品ブランドのひとつ。製法特許を取得した「美白水」は、防腐剤等無添加なので要冷蔵。お酒の天然成分、米発酵液を主成分としています。
以上、いくつかをご紹介しますが、これらはほんの一部です。現在、日本各地でそれぞれの地域の特性を活かしたエシカルコスメが増えてきています。まず自分の住んでいる地域の資源を活用したエシカルコスメから探してみるのもいいかもしれません。
「エシカルコスメ」だけじゃない、美容のエシカルな選択肢とは?
今回はエシカルコスメについてご紹介してきました。ここまで読んでくると、地球環境に配慮するなら、一般の化粧品をやめてエシカルコスメに切り替えましょう、という結論になるかもしれません。それも一理はあるのですが、エシカル消費という大きな視点から考えると、それほど単純ではありません。人それぞれのライフスタイルに合うエシカルな選択肢は以下のように、他にも考えられます。
スキンケアコスメを手づくりする
市販のスキンケアコスメではなかなか肌に合うものが見つからないとき、簡単にできる化粧水を手づくりして使ってみたら肌の調子がぐっとよくなった、という経験をする人もいます。これはシンプルケアにより、肌が本来持っている自然治癒力が発揮されやすくなるからだと考えられます。
もっとレベルアップして、ファンデーションやアイカラーなどを手づくりする人も増えています。手づくりコスメのいいところは、化粧品に必要な成分、不必要な成分について実体験で学べること。市販の商品に満足できない方はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
今使用しているコスメのアイテム数を減らして、シンプルケアにする
「過剰なケア」が肌の呼吸や新陳代謝を阻害してしまうこともあります。毎日複数のスキンケアアイテムで丁寧に手入れをしていても肌トラブルに悩んでいたら、思い切ってシンプルケアに変える方法もあります。
エシカルコスメ、オーガニックコスメは日々のスキンケアに使うアイテム数が少なめなので、切り替えてみてもし肌に合えば結果的にはトータルのコストが減らせるかもしれません。
食生活や運動習慣によって健康と肌の状態を改善させる
体にいい食品、適切な休養、毎日の適度な運動によって肌の状態もよくなります。ライフスタイル全体をエシカルな視点で見直すことが、心身の健康と美容につながります。
この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)
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