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インタビュー

SDGsやCSRに対する姿勢が問われる今、日本企業・団体はそれらにどう取り組んでいるのでしょうか。MIRAI Timesでは、SDGsやCSRに取り組む企業・団体の事例を連載でご紹介します。具体的な取り組み内容について、千葉商科大学の学生記者が取材しました。

第3弾は、「特定非営利活動法人APLA」。取材に応じていただいたのは、同法人にて事務局長代行を務める野川未央さんです。

特定非営利活動法人APLA訪問

援助から支援へ 農業を軸にした自立のサポート

学生記者:まず、APLAさんの掲げるビジョンや活動内容について教えてください。

野川さん:私たちは、日本を含むアジア各地で、「農を軸にした地域自立」を目指す人たちが出会い、経験を分かち合い、協働する場をつくり出すことを目的に活動しています。具体的な活動内容として、フィリピン・ネグロス島で研修農場を運営し、循環型農業の実践や若手農民の育成に取り組んでいます。

また、民衆交易(フェアトレード)を推進したり、アジア地域の農民の交流を促したりと、活動内容は多岐にわたります。最近では、フィリピンから日本に輸入されるバナナの倫理性を問う「エシカルバナナ・キャンペーン」なども行っています。

学生記者:どのようなきっかけで、アジア地域の農業支援に取り組むことになったのですか。

特定非営利活動法人APLA訪問

野川さん:1985年に砂糖の一大産地であるフィリピン・ネグロス島で、砂糖の国際価格の暴落により、大規模な飢餓が発生しました。当時からネグロス島は少数の大地主により、労働者を搾取する構造が固定化していましたから、価格大暴落によって多くの労働者が仕事を失い、飢餓に苦しむ結果となったのです。

そこで日本が各地で募金を集め、緊急救援活動を開始しました。これが、APLAの前身団体である日本ネグロス・キャンペーン委員会(JCNC)となりました。

ただ、支援が落ち着いてくると、現地の農業労働者から「自分たちは魚ではなく、魚を捕る網が必要だ」という声があがるようになりました。そこで、JCNCは「援助」ではなく「自立支援」を行う組織へと方針を切り替えます。

元農園労働者が自営農民になれるよう、道具や技術などの支援や、農業計画のサポートを行うようになりました。また、姉妹企業と連携し、現地で生産された黒砂糖やバナナが公正な価格で取引されるよう、民衆交易の仕組みを構築しました。

2008年には、こうした経験を他の地域の人たちにも共有するため、任意団体であるJCNCから法人格を持つ「特定非営利活動法人APLA」へと生まれ変わり、新たな一歩を踏み出したのです。

学生記者:飢餓や貧困問題を解決する取り組みからスタートし、その活動が発展して、現地農民の「自立支援」へとシフトしたということですね。

特定非営利活動法人APLA訪問

若手農民の交流を促す研修農場

学生記者:ネグロス島で運営されている研修農場についても、詳しくお伺いしたいです。

特定非営利活動法人APLA訪問

野川さん:農業支援の活動を続ける中で、「後継者が育たない」という課題がありました。そこで、農民たちが集まって農法や技術に関する学びや経験を共有する場「カネシゲファーム・ルーラルキャンパス」を、2009年に開校したのです。

ここでは、農薬や化学肥料を使わずに自然にあるものを循環させて農作物を生産する方法を実践したり、色んな動物を一緒に育て、動物の糞尿を堆肥にして循環させる有畜複合農業に取り組んだりと、循環型農業を行っています。

ほかにも、フィリピン、東ティモール、ラオスの3地域に住む若手農民の交流プログラムなども実施しています。

学生記者:若手農民の交流を促すことで、どのような効果が見込めるのでしょうか。

野川さん:私たちは、それぞれの地域に住む人たちが、主体性を持って自分たちの地域でやりたいことを見つけることが大事だと考えています。交流を通じて、生きるための知恵を分かち合い、「何かをやってみよう」という気持ちを育めればと思っています。

学生記者:最後に、仕事のやりがいについて教えてください。

野川さん:プロジェクトを通じて、小学生から大学生まで幅広い年齢の学生たちに関わることができます。「こんなことが起こっていると知れてよかったです」と言ってくれる人に出会えると、やりがいを感じます。

特定非営利活動法人APLA訪問

また、現地の人たちとは家族のような関係を構築できています。一緒に時間を過ごし、一緒に笑って泣いて、一緒に悩みながら生きていくことは、普通の仕事では体験できないことだと思いますね。

学生記者:ありがとうございました。

団体プロフィール
特定非営利活動法人APLA(Alternative People’s Linkage in Asia)は、アジア各国で農業支援を行う非営利団体。主な活動拠点はフィリピン、東ティモール、インドネシアで、持続可能な地域づくりのための支援を行っている。姉妹企業である株式会社オルター・トレード・ジャパン(ATJ)と協力し、バナナやエビ、コーヒーなどの民衆交易も推進している。

この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)

SDGs目標1貧困をなくそうSDGs目標2飢餓をゼロにSDGs目標3すべての人に健康と福祉をSDGs目標4質の高い教育をみんなにSDGs目標8働きがいも 経済成長もSDGs目標9産業と技術革新の基盤をつくろうSDGs目標10人や国の不平等をなくそうSDGs目標11住み続けられるまちづくりをSDGs目標15陸の豊かさも守ろうSDGs目標16平和と公正をすべての人にSDGs目標17パートナーシップで目標を達成しよう
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