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インタビュー

SDGsやCSRに対する姿勢が問われる今、日本企業・団体はそれらにどう取り組んでいるのでしょうか。MIRAI Timesでは、SDGsやCSRに取り組む企業・団体の事例を連載でご紹介します。具体的な取り組み内容について、千葉商科大学の学生記者が取材しました。

シリーズ第12弾は、「有限会社ネパリ・バザーロ」。取材に応じていただいたのは、代表取締役の高橋百合香さんです。

ネパールでの経験を震災復興支援に生かす「東北 椿油プロジェクト」

有限会社ネパリ・バザーロ

学生記者:ネパリ・バザーロは、ネパールの子どもこどもたちの教育支援を目的につくられたそうですね。

高橋さん:はい。私たちはネパールの子どもたちの教育支援を目的として1991年に活動を開始しました。しかしすぐに、子どもたちが学校へ通えない背景には、学校の有無ではなく、その家庭の貧困問題があることに気が付きました。貧困改善のために、仕事の機会を創出し経済的な自立を促すことが必要と考え、1992年にネパリ・バザーロを設立しました。それから今日まで、ネパールの人々の就業機会の拡大を目指し、ネパールのハンディクラフトや食品の企画開発をし、ネパールで生産した商品を継続輸入して販売する、フェアトレード事業を行っています。

学生記者:今回お話を伺う「東北 椿油プロジェクト」はどのような経緯で始まったのでしょうか。

高橋さん:事業を始めた頃から、障がいのある方たちなど、日本国内の立場の弱い人々の仕事づくりにも注力していました。そこで母体であり、福祉事業を担う「ベルダレルネーヨ(2014年にNPO法人格を取得)」と協働し、事業を通して、支え合い、助け合い、共に生きる社会の実現を目指して活動してきました。
2011年3月11日に東日本大震災が発生した際、ネパリ・バザーロは内戦やインフラストラクチャーの不十分なネパールでの支援の経験を生かし、東日本大震災で被害を受けた陸前高田への支援を行うことになりました。復興のための長期的支援を目指す中で、注目したのが椿油です。

椿油の生産で、雇用機会の提供と地域活性化を図る

学生記者:どうして椿油に目をつけたのですか。

高橋さん:椿は海岸に植えれば防風・防潮にも役立つものです。東日本大震災の津波で防砂林として植えられていた松は流されてしまいましたが、椿は耐え残っていました。
陸前高田市で災害支援を行う中で、地元の方々から、「昔は椿の種から油を搾って食べていた」というお話を伺い、ネパールで行っているフェアトレードの経験を生かして、地元の方々と共に地元の素材を生かした椿油を生産し、販売すれば、雇用の創出と地域活性化につなげられるのではないかと考えたのです。

学生記者:プロジェクト開始当初は椿が採れなかったと聞きました。

高橋さん:はい。当初は江戸時代から椿で有名だった利島や他の地域から実を分けてもらって椿油を生産していました。陸前高田に植樹した椿の木の実は、2019年から収穫ができるようになり、2020年にようやく陸前高田産椿油の生産にこぎつけることができました。わずか6本でしたが、この時の喜びは何ものにも代えがたく、本当に嬉しかったですね。大きな災害も、時間の経過と共に忘れられてしまうものです。しかし商品ができたことで、震災で受けた被害の記憶を風化させない大きな力になると思います。
椿油プロジェクトは椿を売ってくれた地域、工房を建設してくださった現地の工務店や、支援をしてくれた人々など、ネパリ・バザーロの椿油プロジェクトに対する思いに賛同してくれた人々の協力で支えられているプロジェクトです。

有限会社ネパリ・バザーロ

「体験しなきゃわからないことは絶対ある」

学生記者:製品は、食用椿油以外にも広がっているそうですね。

高橋さん:2013年に自然由来の原材料を使用した安全な化粧品ブランド「クーネ」が誕生しました。椿油に加え、大船渡のゆずの種子、宮古の真崎わかめ、陸前高田の自根きゅうり、ネパールのはちみつなどを原材料に用いていて、東日本大震災の被災地だけでなく、2015年に大地震の被害を受けたネパールの復興も同時に企図しています。

学生記者:取り組みの成果として「地域活性化」を実感した出来事があれば教えてください。

高橋さん:地元の中学生がボランティアを希望しボランティアに参加してくれたことや、地元の小学生が工房見学に来てくれたことです。プロジェクトは数年で完結するものではないと考えています。次の世代に宝を残したいという思いでスタートさせたこのプロジェクトに、地元の子供たちが興味をもってくれ、実際に体験してくれたことはとても嬉しかったです。
私たちは「体験すること」をとても重要だと考えています。椿油プロジェクトも、災害支援で陸前高田に入り、炊き出しや生活用品の支給などを行ったからこそ、地元の方々と「地域にあるもので産業を起こしたい」「椿の里にしたい」という思いを共にすることができ、生まれたものです。体験しなきゃわからないことは絶対あるのです。

学生記者:今日お話を伺って、ネパリ・バザーロさんは、企業の利益だけでなく、人と人のつながりを大切にされていて、経済的にも精神的にも被災地の方々を支えておられるのだと感じました。私たちもボランティア活動など、まずは行動し、「体験」してみようと思います。今日はありがとうございました。

企業プロフィール
「ネパリ・バザーロ」は、現地の人々の自立を目指し、ネパールや東北で、自然農法で栽培された食品、自然派化粧品、天然素材の衣類や雑貨など、作り手の顔が見えて安全・安心な商品を開発・生産し、販売しているフェアトレード団体。福祉プログラムを展開している「特定非営利活動法人ベルダレルネーヨ」と協働しながら、人々の尊厳が守られ、誰もが幸せに暮らせる社会の実現を目指している。「東北 椿油プロジェクト」は2011年にスタートし、翌2012年10月に岩手県陸前高田市に製油工房「椿のみち」をオープン。2013年にプロジェクトから派生して誕生した自然派化粧品ブランド「クーネ」の製品は、2016年の「国際化粧品展」で高評価を獲得。2017年の「ソーシャルプロダクツ・アワード2017」で特別賞「東北」を受賞している。

※記事内容は2022年3月25日時点の情報です。

この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)

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