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インタビュー

SDGsやCSRに対する姿勢が問われる今、日本企業・団体はそれらにどう取り組んでいるのでしょうか。MIRAI Timesでは、SDGsやCSRに取り組む企業・団体の事例を連載でご紹介します。具体的な取り組み内容について、千葉商科大学の学生記者が取材しました。

シリーズ第10弾は、「NPO法人市川子ども文化ステーション」。取材に応じていただいたのは、NPO法人市川こども文化ステーション 前理事長(現理事)の渡慶次(とけし)康子さんです。

NPO法人市川子ども文化ステーション

子どもたちが「まち」をつくる大人気イベント

学生記者:NPO法人市川子ども文化ステーションが実施しておられる「子どもがつくるまち・ミニいちかわ」(以下、ミニいちかわ)について、まずはどのようなイベントか教えてください。

渡慶次さん:年に1度、市川市の2つの会場で開催している「まち」を模した子どもの遊びのイベントです。会場となる「まち」の中で子どもが市民となり、好きな仕事を選んで働きます。報酬として専用通貨をもらい、その通貨を「まち」で自由に使って楽しみます。「まち」には、ゲームやアクセサリー、食べ物などのお店や、市役所・警察・銀行などの公共機関、新聞社や裁判所などがあるのですが、まちのルールやテーマを決めたり、店の準備をしていくのも子どもたちです。子どもたちの目線で子どもたちが作った1つの「コンパクトシティ」ですね。

NPO法人市川子ども文化ステーション

学生記者:ミニいちかわは、2003年から毎年開催されていて、2020年で18回目となるそうですね。2019年には、4日間で1日平均700人の子どもが参加、この18年間で参加した子どもの数は延べ約6万人と、市川市の子どもたちから絶大な人気を誇るイベントと言えますが、どのような経緯でスタートされたのですか。

渡慶次さん:かつて子どもたちは、遊びの中からさまざまなことを学んでいました。トラブルや失敗に合っても、子どもたち自身で工夫し、知恵を働かせ、人との関わりの中で解決してきました。ところが近年になって、子どもを取り巻く環境は大きく変化し、大人による禁止や管理が増えて、子どもたちが自由に遊ぶ場所や時間、仲間が少なくなってしまいました。かつてのように、遊びを通して、子どもたちに必要な"生きる力"を育んでもらいたいという思いから始まったのがこのプロジェクトです。
1974年にドイツ・ミュンヘンで生まれた子どものまち「ミニミュンヘン」をもとに、日本では2002年に初めて千葉県佐倉市で「ミニさくら」が実施され、次いで、2003年にこの「ミニいちかわ」が開催されました。

子どもの成長の場であり、大人の学びの場でもある

学生記者:この事業を行うにあたって、特に心掛けていることはありますか。

渡慶次さん:子どもたちが自分で考え、失敗から学ぶようにするため、子どもが危険なとき以外は、大人は手出しも口出しもしないようにしています。
ミニいちかわの活動の狙いには、子どもの自立を促すことに加えてもう1つ、子どもの力を信頼する大人を増やすことがあります。スタッフとして関わる大人は、子どもたちの活動をサポートしていく中で、さまざまな子どもの個性に出会い、子どもの発想や、やり遂げる力に驚きます。そこで、日常の中でいかに子どもたちに手出し口出ししていたかに気付き、子どもとの関わり方を見直していくことができるのです。参加する子どもの保護者も、子どもが自分で考え自分で決めることを経験できる貴重な場として、大きな期待をもって送り出してくれるようになりました。

「子どものまち」をさらに広げていくために

NPO法人市川子ども文化ステーション

学生記者:18年続けてこられて、「ミニいちかわ」の成果をどのように捉えておられますか。

渡慶次さん:子どもスタッフ(公募による運営委員)のアンケートには、「学校ではあまり意見を言わないけど、会議の雰囲気が良かったので意見を言えた」、「初対面の人とも仲良くなれた」などの回答があり、ミニいちかわの目的である「自己肯定感の向上」につながっていると感じています。
この「ミニいちかわ」は、2009年度千葉教育大賞(千葉日報社主催)準大賞を受賞しました。多くの後援団体との関わりや、NPOと企業、学校、自治体が一緒に活動できる場、行政の縦割りを超えた関わりを提供していく場として、このプロジェクトは子どもと大人社会をつなぐ架け橋になっていると感じています。

学生記者:子どもたちが、地域社会との関わりを体験できるというのは素晴らしいですね。今後規模を大きくする予定はありますか。

渡慶次さん:規模を大きくするというより、小規模でもいいので、この「子どものまち」の取り組を市内の各地で展開したいと考えています。そうすることで、これまで参加できなかった子どもたちにも機会を提供することができると考えています。

学生記者:この先も長く続けるための新しい施策などはありますか。

渡慶次さん:ミニいちかわの運営は、ボランティアと、協力団体からの支援によって支えられています。参加費や助成金、寄付金などを合計し、年平均320万円ほどの収入がありますが、テントなどの備品のレンタル代や材料費の支出のために収益はありません。非営利の活動ですが、持続可能な事業にしていくためには、運営事務局に専従のスタッフを配置し、育成していく必要があると考えています。TwitterやInstagramなどを使った情報発信を積極的に行って理解者を増やすと共に、クラウドファンディングなども考えていきたいですね。

学生記者:地域と協力して事業を行いながら、共にその地域の子どもを育てるという観点は、私たちの大学の理念「治道家を育てる」にも通じるものです。取材を通して、市川市には明るい未来が待っていると感じました。今日はありがとうございました。

NPO法人市川子ども文化ステーション

企業プロフィール
「市川子ども文化ステーション」は、文化的な体験活動を通して子どもが人とのつながりを感じあえる地域社会づくりを目指して活動するNPO法人。1983年に設立し、2001年にNPO法人として認証された。2003年から毎年秋に、「子どもがつくるまち・ミニいちかわ」を開催。この「ミニいちかわ」は、現在日本で200カ所ほどに広がっている「まち」を模した遊びのプログラム「子どものまち」の1つで、2009年度千葉教育大賞(千葉日報社主催)準大賞を受賞している。2012年に10周年を迎えた際には、全国の子どものまち主催者が集結する「子どもがつくるまち全国主催者サミット'12 in千葉」も開かれた。市川市、市川市教育委員会、市川市消防局や千葉県警行徳警察署などの協力に加え、約170件もの商店や企業が「ミニいちかわ」の開催を支援している。

この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)

SDGs目標4質の高い教育をみんなにSDGs目標11住み続けられるまちづくりをSDGs目標17パートナーシップで目標を達成しよう
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