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インタビュー

SDGsやCSRに対する姿勢が問われる今、日本企業・団体はそれらにどう取り組んでいるのでしょうか。MIRAI Timesでは、SDGsやCSRに取り組む企業・団体の事例を連載でご紹介します。具体的な取り組み内容について、千葉商科大学の学生記者が取材しました。

シリーズ第7弾は、「サラヤ株式会社」。取材に応じていただいたのは、コミュニケーション本部広報宣伝統括部で統括部長を務めていらっしゃる廣岡竜也さんと秋吉道太さんです。

アフリカで「手洗い」を広めて子どもたちの命を守りたい

学生記者:御社は、ビジネスを通じて社会問題の解決を図るため、さまざまなプロジェクトを進められています。そのひとつ、2010年に始められた「100万人の手洗いプロジェクト」について教えてください。

廣岡さん:手洗い石けんや除菌スプレーといったサラヤの一般向け衛生用品などのメーカー出荷額の1%を公益財団法人日本ユニセフ協会に寄付し、アフリカ・ウガンダでの手洗い環境整備や啓発活動を支援するプロジェクトです。

サラヤ株式会社

学生記者:「100万人」と大きな数字を掲げていらっしゃいますが、アフリカでの手洗いの実情はどのようなものでしょうか。

廣岡さん:世界では、水不足や不衛生なトイレ環境などが原因で肺炎や下痢性疾患にかかり、命を落とす子どもが年間約150万人いると言われています。特にウガンダを含むサブサハラ・アフリカの乳児死亡数は世界全体の47%。こうした子たちを救うもっともシンプルな方法が、石けんを使った「正しい手洗い」です。「手洗い世界No.1企業」を目指すサラヤでは、プロジェクトを通してその方法を広く伝え、多くの人の命を守ることを目標としています。

学生記者:手洗いを浸透させるために、具体的にはどのような活動をされているのですか?

廣岡さん:まずは簡易手洗い装置「ティッピー・タップ」の設置を進めています。また、設置するだけでなく、現地の人々に実際に手洗いの方法を見せたり、5歳未満の子どもを持つお母さんへ手洗いの大切さを伝えたりすることで、習慣化を図っています。ウガンダでの手洗い普及率は、2007年は14%だったところ2018年には36%にまであがり、5歳児未満の死亡率も大幅に減少しました。

サトウキビの絞りかすを再利用し、消毒液を製造・販売

学生記者:すばらしい成果ですね! ウガンダでは、2012年から病院での衛生普及活動も始められたそうですが。

秋吉さん:「病院で手の消毒100%プロジェクト」のことですね。ウガンダとのかかわりを深めていく中で、現地の病院では出産時の敗血症などで亡くなる妊婦が全体の0.4%もいること、その原因が不衛生な洗浄・消毒環境による院内感染や二次感染であることを知りました。そこでサラヤは、ウガンダで現地法人SARAYA EAST AFRICA(現Saraya Manufacturing (U) Ltd.)を設立し、医療向けのアルコール消毒剤の現地開発をスタートしました。今は、製糖会社の協力を得て、サトウキビの絞りかすを再利用した高品質で安価な消毒剤「Alsoft V」を製造・販売しています。

サラヤ株式会社

学生記者:アルコール消毒剤を現地で一から作って売るには、ご苦労があったんじゃないでしょうか。

秋吉さん:はい。現地政府は予防より治療を重視する方針でしたし、予算も少なかったため、はじめの数年は赤字が続きました。でもウガンダ大統領の働きかけもあり、2017年に悲願だった公立病院への公共調達の入札を勝ち取り、2019年からは黒字に転じました。また、新型コロナウイルス感染拡大により需要が急増し、2020年は、3月半ばの時点で2019年の総出荷量の5倍もの受注が入っています。

学生記者:根気強く取り組まれた結果ですね。「Alsoft V」を導入した病院で、成果はありましたか?

秋吉さん:院内で手指消毒が守られたことで、小児科の子どもの下痢性疾患や帝王切開後の敗血症がゼロになった月もあります。さらに、従来廃棄していた資源を有効活用した現地生産は、環境保護や地元の人びとの雇用創出にもつながっています。

サラヤ株式会社

「サラヤの商品を買ってよかった」と思ってもらえるように

学生記者:プロジェクトを継続的に進めるための工夫はありますか?

廣岡さん:「100万人の手洗いプロジェクト」のように売り上げの一部を寄付するということは、サラヤの商品を買ってくださる消費者の方々からの信頼を、お金として寄付しているということ。ですから、プロジェクトの状況をわかりやすく広報し、サラヤの商品を買ってよかったと思っていただくことがとても大切だと考えています。

学生記者:御社にとってSDGsとはなんでしょう?

廣岡さん:サラヤはこれまでも社会問題の解決のために活動してきました。昨今SDGsという言葉が身近になり、SDGsのゴールとサラヤの活動を紐づけることで、より消費者の方々に理解を深めていただけると考えています。

学生記者:若い世代に期待することはありますか?

廣岡さん:SDGsが教育に組み込まれ、若者のなかには社会問題に関心が高い「SDGsネイティブ」も増えてきています。私たちの活動も、若い方に支援していただくことが多くなっていますので、これからも同じゴールに向かって一緒に活動していければと思います。

学生記者:今日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

サラヤ株式会社

企業プロフィール
洗浄剤・消毒剤などの衛生用品と薬液供給機器の開発・製造・販売事業を展開するサラヤ株式会社。家庭用から業務用、医療用まで幅広い商品を扱っている。1952年の創業以来、世界の「衛生・環境・健康」の向上に貢献することを事業目的とし、ビジネスを通じて環境問題や社会課題の解決を図ってきた。社会的な活動と優れた成果が認められ、日本政府「第1回 ジャパンSDGsアワード/SDGs推進副本部長(外務大臣)表彰」(2017年)、公益財団法人中小企業研究センター「第53回グッドカンパニー大賞 優秀企業賞」(2020年)など、受賞多数。

この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)

SDGs目標3すべての人に健康と福祉をSDGs目標6安全な水とトイレを世界中にSDGs目標8働きがいも 経済成長もSDGs目標17パートナーシップで目標を達成しよう
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