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インタビュー

SDGsやCSRに対する姿勢が問われる今、日本企業・団体はそれらにどう取り組んでいるのでしょうか。MIRAI Timesでは、SDGsやCSRに取り組む企業・団体の事例を連載でご紹介します。具体的な取り組み内容について、千葉商科大学の学生記者が取材しました。

シリーズ第6弾は、「みんな電力株式会社」。取材に応じていただいたのは、同社の専務取締役で、事業本部の本部長を務めておられる三宅成也さんです。

生産者を選んで電気が買える「顔の見える電力™」

学生記者:御社の事業のひとつに「顔の見える電力™」がありますが、これはどのようなものでしょうか。

三宅さん:日本では2016年に電力小売完全自由化が完了し、誰もが自由に電気を作り、売ることができるようになりました。このいわば「電気の民主化」により、多くの新電力会社が参入し、消費者が電力会社や料金プランを自由に選べるようになりました。これを利用して、どの発電所の電気を使うか、生産者の顔から選べるようにしたのが「顔の見える電力™」です。

学生記者:ユニークなネーミングの事業ですが、その成り立ちを教えてください。

三宅さん:弊社代表の大石英司は元々印刷会社に勤めていて、電気に関する仕事の経験はなかったのですが、ある時、電車で向かい側に座っていた女性が、太陽電池付きのキーホルダーを付けていたそうです。ちょうどその時、携帯電話のバッテリーが尽きかけていて、ふと「この素敵な女性が太陽光でつくった電気だったら買いたいな」と思った、と(笑)。

学生記者:それが「顔の見える」というコンセプトにつながったのですね。

三宅さん:はい。電力の小売自由化が始まった際に、コンセントの先につながっている発電所が原子力発電所や火力発電所だったら使いづらいけど、例えば、知り合いが営む小さな工場に設置した太陽光発電だったら、安心して使うことができるのに……と考え、現在の仕組みを作り上げました。
「顔の見える電力™」として扱っているものは、火力発電や原子力発電などの環境へ悪影響を及ぼすものではなく、すべてが再生可能エネルギーとFIT電気です。これにより二酸化炭素排出の削減に貢献しています。

学生記者:しかし、再生可能エネルギーの電力供給は不安定ではないですか。

三宅さん:確かに、ひとつの発電所だけで見れば不安定ですが、太陽光や風力、水力などさまざまな発電所から電力を調達することで安定供給できます。また蓄電技術も日々進歩しています。
ちなみに、太陽光と風力で少なくとも日本の10%分の電力を賄っているんですよ。

学生記者:逆に、売れ残ってしまった電気はどうなるのですか。

三宅さん:余った電気は市場に売電して配分されるので、無駄になることはありません。

みんな電力株式会社

電気の利用者と生産者を結び付け、地域活性化にもつなげる

学生記者:「“顔の見える”電気生産者」は、どのような方々なのでしょうか。

三宅さん:畑の空いたスペースを使って太陽光で電気をつくっている農家の方や、風力発電所を持つ企業の方などさまざまですが、環境保全の観点から弊社で調査、確認の上提携しています。自然エネルギーを利用した発電所を建設するのに環境を破壊してしまっては本末転倒ですので。

学生記者:利用者は、全国各地にある地球環境に配慮した発電所の中から、生産者の顔を見て、利用する発電所を選択し、お金を支払うことができるというわけですね。

三宅さん:「顔の見える電力™」は、地球環境への意識が高い「こだわり層」の方を主なターゲットとして提供しているサービスです。支払われた電気代の一部が選んだ発電所の生産者に寄付されることになっていて、同じ発電所を何回か継続して使うと、生産者から利用者に米や特産品などの特典を受け取ることができます。他にも発電所ツアーなどを行っていて、生産者と購入者の交流が生まれているんですよ。
実はこうして、電気の生産者と使用者の間につながりができることで、地域の活性化にも役立っていく、というのが「顔の見える電力™」のもう一つの大きな特長なんです。

学生記者:なるほど、地域貢献にもつながるのですね。人気のある発電所の特長を教えてください。

三宅さん:発電所をつくるにあたってストーリーがあることや地域性のある発電所の人気が高いですね。例えば、福島の発電所は震災復興を目的としていることから多くの利用者に選ばれています。

みんな電力株式会社

「身体に良い野菜」を選ぶように、「地球に優しい電気」を選ぶ

学生記者:お話を伺って、電気に対する考え方が大きく変わりました。今まで、「電気の無駄遣い」は「電気代の無駄遣い」と思っていましたが、そうじゃないな、と。

三宅さん:そうですね。電気を無駄遣いしないことで、二酸化炭素の排出を削減することができます。そしてその小さな行動が、社会貢献につながっていくのです。

学生記者:自分たちが使用する電気が、誰からどのように届いているかを意識することでさらに関心が高まりますね。「生産者さんの顔が見えること」を何よりも大事にされている理由がよくわかりました。「身体に良い野菜」を選ぶように、今まさに「地球に優しい電気」を選ぶ時代が来ていると言えるのかもしれません。
最後に、御社の今後の目標を教えてください。

三宅さん:まずは「みんなで気候変動問題を解決」すべく、これからも再生可能エネルギーの普及に向け、サービスやテクノロジーのブラッシュアップに取り組んでいきます。それと共に今後は、電気に限らずに、さまざまな社会課題の解決に取り組んで行きたいと考えています。
私たちがめざすのは、「みんなの力で、あらゆる社会課題を解決するソーシャルアップデートカンパニー」です。

学生記者:今日はありがとうございました。

みんな電力株式会社
みんな電力株式会社

企業プロフィール
みんな電力株式会社は、2011年設立の再生可能エネルギー事業会社。電力の小売り自由化が始まった2016年に、発電者と生活者をつなぐ電力小売りサービス「顔の見える電力™」を開始。電気利用者が選んだ発電所に支払った電気料金の一部が支払われる仕組みで、電気を使うことでお気に入りの発電所を応援することができる。現在約500の発電所と契約し、ホームページ上で、発電者の顔やストーリーを積極的に開示している。個人向けだけでなく、法人向けにもサービスを展開。サービスエリアの拡大も続けている。

この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)

SDGs目標7エネルギーをみんなに そしてクリーンにSDGs目標11住み続けられるまちづくりをSDGs目標12つくる責任 つかう責任SDGs目標13気候変動に具体的な対策をSDGs目標17パートナーシップで目標を達成しよう
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