SDGsやCSRに対する姿勢が問われる今、日本企業・団体はそれらにどう取り組んでいるのでしょうか。MIRAI Timesでは、SDGsやCSRに取り組む企業・団体の事例を連載でご紹介します。具体的な取り組み内容について、千葉商科大学の学生記者が取材しました。
シリーズ第13弾は、「日本国際ボランティアセンター」。取材に応じていただいたのは、広報グループマネージャーの並木麻衣さんと木村茂さんです。
発端は、タイの難民キャンプに集まった若者たちの願い
学生記者:日本国際ボランティアセンター(以下、JVC)は、40年近くにわたってアジア、アフリカ、中東の国や地域で活動されている国際協力NGOですね。どのようなことに取り組まれているのか教えてください。
並木さん:私たちの活動の柱は3つあります。農業の研修などを通して農村の暮らしを支える「地域開発」、紛争地での医療支援などを通して人々の命を守る「人道支援」、そして、現場の声をもとに政府や国際社会に働きかける「政策提言」です。「問題の根本にこだわること」を信条に、世界10カ国で活動を展開しています。
学生記者:具体的にはどのような活動をされているのですか。
並木さん:例えば、「地域開発」の一例として、カンボジアでの農業支援があります。カンボジアでは貧困層の9割が農村で暮らしていますが、気候変動の影響で洪水や干ばつが起こり、安定した農業生産ができないことから、日々の食料を確保できない状況に陥っていました。そこでJVCは、井戸の掘削による給水システムの設置など環境に配慮した支援活動を実施し、農作物の生産性の改善につなげています。
学生記者:そもそも、JVCはどのような経緯で立ち上がったのでしょうか。
木村さん:インドシナ戦争によって、カンボジアやラオスから多くの難民がタイに逃れてきましたが、1980年に、こうした現状を知った日本の若者たちが「何か自分たちにできることはないか」とタイの難民キャンプに集まって発足したのがJVCです。以来、水、衛生、母子保健、職業訓練など幅広い支援を行ってきましたが、それでも難民の数は減少しませんでした。難民キャンプで暮らす人たちは、元々生活していた地域に帰ることを望んでいて、そのためには紛争などの根本的な問題を解決する必要があります。1982年からは「難民が出ない村づくり」を開始し、難民が地域に帰って生活できるよう、村の井戸づくりや農業技術の向上に取り組むようになりました。
与えるのではなく、新たに生み出す方法を共に考える
学生記者:支援にあたって、留意されているのはどんなことですか。
木村さん:弱い立場の人たちの気持ちや現状を知ることが重要だと考えています。現在の社会は、政府が大きなお金を動かして国全体での開発を行っていますが、すべての人の現状を把握して政策を実行するのは難しいでしょう。それどころか、地域の方々が望んでいない方向に進んでしまうことも少なくありません。JVCは、現地の人を主役として、足りないものを与えるのではなく、新たに村を、よりよい暮らしをつくる方法を一緒に考えながら人材を育成しています。同時に、紛争を起こさない道をつくる活動にも力を入れています。こうした取り組みが、現地の持続的な発展へとつながっていくものだと信じています。
学生記者:これまででいちばん大変だったと思われる地域はどこですか。
並木さん:私が関わった中では、パレスチナ自治区のガザ地区ですね。子どもの栄養失調を予防するために、ビタミンドロップを提供するだけでなく、地域の大人たちが子どもの栄養や健康を管理できるような知識を教え、支援が終わっても地域の人たちで支え合えるようなコミュニティづくりのお手伝いをしています。
でも、ガザ地区では3年に1度くらいの頻度で、パレスチナ勢力とイスラエル軍との間で紛争が起こります。そうすると、町はあっという間に瓦礫の山となって、そこで暮らしていた人たちは住む家を奪われてしまう。現地の子どもたちから家族が亡くなった話を聞くと、コミュニティづくりをしていたのに「なぜ戦争を止められなかったんだろう」という思いに駆られます。
広げていこう、私たちにもできる国際支援
学生記者:世界で起こっている問題や課題に対して、一人ひとりが自分にも関わりのある問題だと自覚することが大切ですね。活動の資金はどうされているのですか。
木村さん:支援金を集めるのはとても大変ですが、募金やクラウドファンディングを実施したり、国からの補助金も活用しています。また、JVCが活動している各所や現地の子どもたちの写真を使ったカレンダー販売による収益も活動資金に充てています。
学生記者:私たちにできることはあるのでしょうか。
木村さん:個人の方にも寄付のご協力をいただいています。例えば、毎月500円、1年間寄付していただくことで、パレスチナでは子どもの栄養失調を防ぐ調理実習に母親6人に参加してもらうことができます。3,000円の寄付1回で、紛争の影響で学校に通えない子ども10人に、補習校で学ぶための教材一式を渡すことができます。
学生記者:それなら私たちにもできそうですね。これからJVCが活動したい国や地域はどこですか。
並木さん:JVCの強みが生かせることを優先的に考えながら、支援する国や地域を検討しています。2023年には新しい活動拠点をつくろうと話し合っているところで、国際支援があまり行き届いていない国や地域に注目しつつ、今後もアジア、アフリカ、中東でバランスよく活動していきたいと思っています。
学生記者:国際支援というと、「物資を送る」というイメージがありましたが、物資だけでなく、「人を教育して次世代につなげる」支援の重要性を学びました。今日はどうもありがとうございました。
企業プロフィール
日本国際ボランティアセンター(JVC)は、1980年に、インドシナ難民の救援を機に発足した国際協力NGO。アジア、アフリカ、中東の国や地域で、環境保全型の農業を通して生活改善に協力したり、紛争の影響を受けて人々が暮らす土地では医療をはじめとした人道支援を行っている。足りないものをあげるのではなく、つくる方法を一緒に考える。紛争で傷ついた人を助けるだけではなく、紛争を起こさない道をつくる。「問題の根本にこだわる」のがJVCの信条だ。
※記事内容は2022年●月●日時点の情報です。
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