SDGsやCSRに対する姿勢が問われる今、日本企業・団体はそれらにどう取り組んでいるのでしょうか。MIRAI Timesでは、SDGsやCSRに取り組む企業・団体の事例を連載でご紹介します。具体的な取り組み内容について、千葉商科大学の学生記者が取材しました。
シリーズ第11弾は、「凸版印刷」。取材に応じていただいたのは、ブランド統括部の今津秀紀さんです。
SDGsは「ファッション」ではなく「危機」ととらえよう
学生記者:凸版印刷といえば日本を代表する印刷会社ですが、SDGsのサポート事業をされていると聞いて驚きました。どのようなことを行っているのですか。
今津さん:SDGsへの関心が世界的に高まるなか、「SDGsの取り組みに参加したいが、どうしたらいいかわからない」「言葉は知っているが、具体的な内容はよく知らない」という企業に向けて、これまで培った「印刷テクノロジー」を糧に、SDGsのサポート事業を行っています。
具体的には、「SDGsに取り組むための5つのステップ」というコンサルティングメニューを用意しています。まずはSDGsを理解し、企業のニーズに沿った優先課題を決定したうえで「チャレンジ目標」を設定、有識者によるチェックや取締役会、経営会議等での承認を経て経営方針、経営戦略に反映できるようサポートしていきます。
学生記者:SDGsを理解するためのワークショップも開催されているのですね。
今津さん:ええ。まずはみなさんに、なぜ今、SDGsが世界で声高に言われているのか、といった本質的な部分と、次世代に地球をつなげていくためには、この10年が非常に大切であるということをお伝えしています。「10年で社会システムを変える」というくらいの気持ちで取り組まなければ、次世代の負担は甚大なものになります。企業の皆さまには、SDGsを「ファッション」ではなく「危機」として受け止めてほしいと思っています。
フードロス削減に期待がかかるパッケージ素材の製造
学生記者:そもそも、凸版印刷としてもSDGsの取り組みには力を入れていらっしゃるのですよね。
今津さん:そうですね。凸版印刷は「社会的価値創造企業」の実現をめざし、2019年にはSDGsの取り組みに関する基本的な考え方をまとめた「TOPPAN SDGs STATEMENT」を策定しました。この中で重要課題のひとつとして挙げているのが、海洋プラスチックや食品ロスの問題。パッケージ事業を手がけるメーカーとして、SDGsの12番目の目標である「つくる責任 つかう責任」を重視しているのです。
学生記者:具体的にはどのような取り組みが進んでいるのですか。
今津さん:例えば、お菓子や医療品などさまざまなパッケージで幅広く利用されている「GLフィルム」という透明バリアフィルムがあります。優れたバリア性能により、食品の消費/賞味期限を長くすることが可能で、フードロスの削減に貢献しています。このGLフィルムは世界45カ国、延べ1万5,000社に採用され、凸版印刷を代表するSDGs素材と言ってもいいかもしれません。2030年までには、パッケージや販促素材の100%をサステナブルなものにすることを視野に入れています。
企業や一人ひとりの「行動変容」を起こすために
学生記者:社会の課題解決に貢献していると同時に、ビジネスとしても成立しているのですね。
今津さん:SDGsへの対応は企業価値にも大きな影響を与えます。凸版印刷が印刷業で長年培ってきた経験や知識を発信し、多くの企業や社員の方々が未来へ向けた「行動変容」を起こし、さまざまな方向に良い影響を及ぼす「ポジティブインパクト」が生まれるようサポートすることが、私たちのミッションだと思っています。
こうしたサポート事業が本業に影響することも少なからずあります。凸版印刷が持つソリューションを提案するなかで、企業のSDGsのWebページや映像を制作したり、共同開発によってサステナブルな商品の製造につながった事例もありました。
学生記者:SDGsの取り組みについて、今後の抱負を聞かせてください。
今津さん:現在、社会的価値創造企業になろうと、社長自ら意欲的に発信しています。「TOPPAN SDGs STATEMENT」についても、社長が「SDGsを切り口に目標設定を」とさまざまな場面で言及したからこそ、社内に浸透していったのだと思います。今はそれを受けて、社員全員が社会に新たな価値をどれだけ提供できるかに重きを置き、目標達成に向けてさまざまなビジネスを展開する計画を進めています。
私個人としても、SDGsの取り組みにやりがいを感じています。企業の行動変容にビジネスで関わっていけることを大変うれしく思っているのです。
学生記者:私たちも、今抱えている問題をしっかり理解し、解決に向けて行動しなくてはいけないという意識が高まりました。今日はどうもありがとうございました。
企業プロフィール
1900年創業。売上高において世界市場シェア1位を誇る印刷会社。「印刷テクノロジー」をベースに「情報コミュニケーション事業分野」「生活・産業事業分野」「エレクトロニクス事業分野」の3分野にわたって幅広い事業活動を展開し、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を推進しながら、さまざまな顧客や社会の課題解決をめざす。SDGsの取り組みとしては、2019年に「TOPPAN SDGs STATEMENT」を策定。「社会的価値創造企業」の実現に向けて果敢な挑戦を続けている。
※記事内容は2021年3月26日時点の情報です。
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