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インタビュー

SDGsやCSRに対する姿勢が問われる今、日本企業・団体はそれらにどう取り組んでいるのでしょうか。MIRAI Timesでは、SDGsやCSRに取り組む企業・団体の事例を連載でご紹介します。具体的な取り組み内容について、千葉商科大学の学生記者が取材しました。

シリーズ第8弾は、「フードバンクちば」。取材に応じていただいたのは、ワーカーズコープちば企業組合労協船橋事業団理事長で、フードバンクちば代表の菊地謙さんです。

食品ロスを引き取り必要な人に届ける「フードバンク」

学生記者:「フードバンク」とはどのような活動ですか。

菊地さん:フードバンクは、賞味期限が残っているにもかかわらず、包装の破損や印字ミス、過剰在庫などの理由で流通に出すことができない食品を企業や個人から無償で引き取り、必要としている福祉施設・団体などや生活困窮者に無償で提供する活動です。1967年にアメリカで始まり、日本では、2002年にセカンドハーベスト・ジャパン(認定NPO法人)が初のフードバンクとして設立されました。日本のフードバンク団体数は年々増加していて、2020年3月時点で120団体が活動しています。

学生記者:団体が増加した背景にはどのようなことがあるのでしょうか。

菊地さん:日本では年間2,550万トンの食品廃棄物が排出され、そのうちまだ安全に食べることができるにも関わらず廃棄されている、いわゆる「食品ロス」は、612万トンに及んでいます(2017年10月時点)。その一方で、経済状況の悪化に伴い、日本の相対的貧困率は15.4%という高い割合を示しており、子供の貧困率は13.5%、ひとり親世帯にいたっては48.1%と約半数に至っています(2018年時点)。生活困窮者の増大に伴い、フードバンクの需要が高まり、2019年5月にはフードバンク活動への支援が明記された初めての法律である「食品ロスの削減の推進に関する法律」(略称:食品ロス削減推進法)が制定されました。

フードバンクちば

千葉県内に生活の支え合いの仕組みをつくる

学生記者:「フードバンクちば」は、労働者協働組合「ワーカーズコープちば」を運営母体に、2012年5月に設立された団体ですね。

菊地さん:はい、労働者福祉中央協議会が主催した勉強会に参加した際に、講師を務めておられたセカンドハーベスト・ジャパンの方から、千葉県でのフードバンク設立について打診を受けました。その後、学習会や研修を経て、生活保護受給者の支援事業を受託し、その一環としてフードバンク活動を開始しました。

大量に食品が余っている一方で、ご飯を食べることができない人がいます。私たちは、生活困窮者の支援を中心に、さまざまな社会課題を解決すべく、「千葉県内での助け合いの社会的な仕組みづくり」を目標に活動しています。

学生記者:食品の寄付の推移を見ると、2012年度は企業13.3トン、個人1.9トンで計15.2トンでしたが、2019年度には企業23.5トン、個人38.1トンで計61.6トンとなっていて、約4倍に増加しています。個人からの寄付が約20倍に増加し、企業からの寄付よりも多くなっていることから、多くの人にフードバンク活動が知られるようになったことがわかります。

菊地さん:活動開始当初はこのように活動が広がるとは夢にも思わなかったですし、ニーズがあることがよくわかりました。これがビジネスであれば、確実に右肩上がりで喜ばしいのですが、フードバンク活動はビジネスではありません。

学生記者:新型コロナウイルス感染症拡大の影響が追い打ちをかけ、生活困窮者がますます増えているそうですね。

菊地さん:2020年2月26日から7月31日までの間に新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて「フードバンクちば」の支援が利用された件数は307件、利用者の年齢層も20代から50代の現役世代にまで広がっています。

生活保護の申請や社会福祉協議会による生活福祉資金の貸付などは、現金が支給されるまでにどうしても時間がかかってしまうのですが、フードバンクは申請があった次の日には食品を届けることができます。必要な時にすぐ支援できるという強みで、公的制度では行き届かない隙間を埋めながら、人々の暮らしを支えているのです。

フードバンクちば

フードバンクの輪を広げ、持続可能な「千葉モデル」を

学生記者:フードバンクは持続可能な活動と言えるのでしょうか。

菊地さん:活動の持続可能性はフードバンクの最大のテーマであり、活動している私たちにとっても悩ましい課題です。フードバンクの活動自体からは利益は生まれません。活動資金は、寄付・カンパ、会費、助成金、委託費などから成り立っていますが、常に資金不足の問題を抱えているのが実情です。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で寄付金や助成金は増加していますが、同時に利用者も増え、フードバンクへのニーズ、期待も大きくなっています。活動を持続可能なものにするために、千葉県内でどのような仕組みをつくるべきかを考えていく必要があります。

このような仕組みづくりは、私たちだけでは難しいので、企業や生協、市民などさまざまな方々に声掛けをし、どのようにすれば持続可能な仕組みができるかをみんなで考えるようにお願いしています。他の地域のフードバンクとは異なる私たちにしかできない「千葉モデル」をつくりたいですね。

学生記者:お話を伺って、生活困窮者についての理解不足と、現在の生活支援の不十分さを実感させられました。フードバンクによる支援の対象を生活困窮者やひとり親世帯だけではなく、ひとり暮らしや買い物が難しい高齢者、障がいを持った人たちなどにも広げていくことができれば、さらに社会から必要とされる取り組みになりそうですね。今日はありがとうございました。

フードバンクちば

企業プロフィール
フードバンクちばは、労働者協働組合「ワーカーズコープちば」を運営母体とし、2012年から千葉県内でフードバンクの活動を行う団体。活動に「集・届・働」の3つの柱を設けており、「市社会福祉協議会など約100カ所を受け取り窓口とし、年3回、企業や家庭で余った食品を集めるフードドライブ」、「集めた食品を千葉市、近隣の福祉施設・団体、外国人学校など必要な人や施設に届ける活動」、「就職困難者の働く場を広げる活動」を行っている。2020年9月には、株式会社千葉銀行、ちばぎん証券株式会社、千葉県社会福祉協議会と食品提供等に関する包括連携協定を締結。千葉県内のフードバンクの輪を広げている。

この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)

SDGs目標2飢餓をゼロに SDGs目標3すべての人に健康と福祉を SDGs目標10人や国の不平等をなくそう SDGs目標11住み続けられるまちづくりを SDGs目標12つくる責任 つかう責任 SDGs目標16平和と公正をすべての人に SDGs目標17パートナーシップで目標を達成しよう
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