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インタビュー

SDGsやCSRに対する姿勢が問われる今、日本企業・団体はそれらにどう取り組んでいるのでしょうか。MIRAI Timesでは、SDGsやCSRに取り組む企業・団体の事例を連載でご紹介します。具体的な取り組み内容について、千葉商科大学の学生記者が取材しました。

シリーズ第9弾は、「三和製作所」。取材に応じていただいたのは、代表取締役社長の小林広樹さんと「ハートブリッヂプロジェクト」のプロジェクトリーダー、小峰孝博さんです。

療育・自立支援用商品を開発する「ハートブリッヂプロジェクト」

ハートブリッヂプロジェクト

学生記者:「ハートブリッヂプロジェクト」はどのようなプロジェクトですか。

小林さん:三和製作所は、もともとは園芸用品を製造する会社でしたが、事業を営む中で培った加工技術を生かして、「健康」と「安全」と「教育」という3つの事業分野に関わるビジネスを始めました。CSR活動については、「何かひとの役には立てないか?」というサンワイズムに則り、理想とする共生社会の創造をめざして取り組んでいます。
ハートブリッヂプロジェクトは、主に障がいのある子どもたちに向けて、スモックやエプロンといった商品を企画・製作する取り組みで、小峰が立ち上げたものです。

小峰さん:障がいがある当事者や周囲の皆さんと、作り手である私たち、それぞれの想いにかけ橋が架かるように、モノやサービスをつくっていきたいという思いから、「ハートブリッヂ」と名付けました。

ハートブリッヂプロジェクト

障がいがある子どもの親として「できる」ことを増やしてあげたい

学生記者:小峰さんがこのプロジェクトを立ち上げたのはどうしてですか。

小峰さん:私には知的障がいがある子どもがいまして、彼女が小学生の時の出来事がきっかけになりました。学校の給食の時間に、スモックを着る習慣があったんですが、うまく着ることができなかったんです。そこで、私の妻がスモックのボタンの色や形にちょっとした工夫を施しました。すると娘は初めて自分でボタンをかけることができて、「できた!」と嬉しそうにしていたんですね。このことが、娘と私たち夫婦が「できた!」という達成感を共有した原体験となりました。

学生記者:それが最初の商品となったスモックが誕生したきっかけになったんですね。

小峰さん:はい。その後、子どもの発達の段階に合わせて、ボタンの難易度を変えられるように工夫しました。ハートブリッヂプロジェクトでは、障がいがある子ども達が、「できるかも」と思えることを大事に、一気にではなく、徐々にできるようになること、すなわちスモールステップを目指して、商品開発を行っています。
また、子どもだけでなく大人であっても、うまくできなかったことや、誰かの助けがないとできなかったことも、適切なモノやサービスを介在させると、うまくできるようになることがわかりました。スモックにはじまり、エプロン、風呂敷、片手で付けられるボタンなどと幅を広げ、また、障がいがある子ども向けの商品から高齢者向けの商品まで、対象も広げて展開しています。

学生記者:プロジェクトを立ち上げる際に苦労したことはありますか。

小峰さん:自分たちの思いがいかにうまく人に伝わるかで、人々のプロジェクトへの関心、ひいては商品の売り上げが変わってきます。強くぶれない気持ちを持つということは難なくできるのですが、それを伝えるという部分は難しく、今でも課題となっています。
商品を利用した障がいがある子どもの保護者の方々から、「私たちに寄り添ってもらえている気がして嬉しかった」といった感謝の声をいただくことがあって、それを励みに頑張っています。

ハートブリッヂプロジェクト

社会と障がいを持つ人の間にある「見えない壁」を取り除くために

学生記者:三和製作所では、他にも障がいを持つ方に向けた商品を販売されているそうですね。

小林さん:そうですね。弊社には、ハートブリッヂプロジェクトの商品のように、社内で企画・製作している商品もあれば、外部から仕入れを行っている商品もあります。例えばパラリンピック競技種目であるボッチャの用具セットは全国の教育委員会によって小学校へ配布され、子どもたちが障がい者スポーツを体験できる機会につながりました。
私は、子どもたちになるべく早いうちから、障がい者について考えてもらうことが重要だと考えています。障がい者スポーツを体験することが、そのきっかけになればと期待を寄せています。

学生記者:今後、人々の障がい者への印象がどう変わることを願っておられますか?

小林さん:今の日本にはまだ差別という「見えない壁」が存在しているように感じます。この壁を壊し、学校でも地域でも、どこでもみんなが分け隔てなく関わり、困っている人に自然に手が差し伸べられる、支えられた人は「ありがとう」と言える、そういう明るい社会になることを目指しています。
そのため、三和製作所では、社内に障がいのある子どもたちとご家族、地域の方々や教育関係の方々が集える交流施設「ハートブリッヂガーデン」を設けています。

学生記者:社会に「福祉の波」(福祉事業にいろいろな企業を巻き込んでいく動き)を起こすには、何が必要になるでしょうか?

小林さん:「福祉の波」を起こすためには、やはり日本人には少し意識改革が必要だと思っています。政府や福祉事業だけに任せず、自分たちも関わることです。一般の会社に入ったとしても、福祉のことを自分たちのことだと思って取り組めるかどうか。それによりその波が起きるか起きないかが決まってくると思います。

学生記者:私たち一人ひとりが、モノやサービス、そして心も含めて支援することが大切だといえますね。貴重なお話をありがとうございました。

ハートブリッヂプロジェクト

企業プロフィール
株式会社三和製作所は、『ひとの健康と安全と教育の「モノ・こと」を探求する』を事業コンセプトに掲げ、医療機器、介護用品、その他健康アイテム、教材・教具、 防犯・防災用品などを製造販売している。1963年の創業から、時代の変化と共に培ってきた「モノづくりの力」と「流通の力」を強みに、商品の開発、製造からカタログづくり、流通、販売までをトータルで行っている。事業を通じて「何かひとの役には立てないか?」を思慮する「サンワらしさ」を重視し、理想とする共生社会の実現のためのCSR活動にも力を入れている。「ハートブリッヂプロジェクト」は、独自に障がい者向けの療育・自立支援用商品を企画・製作するプロジェクトで、商品を通じて障がい者の自立や発達を支援することで、笑顔と夢に満ちた人のつながりをつくることを目的としている。

この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)

SDGs目標3すべての人に健康と福祉を SDGs目標4質の高い教育をみんなに SDGs目標10人や国の不平等をなくそう SDGs目標16平和と公正をすべての人に SDGs目標17パートナーシップで目標を達成しよう
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