戦争とは?
戦争とは、
1.たたかい。いくさ。合戦。
2.武力による国家間の闘争。
のことです。
※『広辞苑(第七版)』(2018)より引用
たとえば友達や家族とけんかになってしまう時はどんな時でしょうか。一つしかないものをひとりじめしたい時や、他の人よりたくさん物が欲しい時に争いが起こります。
では、それが人と人ではなく国と国だったらどうなるでしょうか。戦争について考えてみましょう。
戦争や紛争が起きる原因
——戦争や紛争はなぜ起きるの?
現在も世界のあちこちで戦争や紛争が起きています。「紛争」というのは戦争よりも少し規模が小さい争いごとのことです。まず、戦争や紛争の種類を大きく5つに分けて、その原因をご紹介します。
1つ目は「民族」の争いです。民族の異なる人たちが、その考えの違いから争いを起こすことがあります。
2つ目は「宗教」の争いです。信じる宗教の異なる人たちが、その考え方の違いから争いを起こすことがあります。
3つ目は「資源」の争いです。金やダイヤモンド、石油やウランなど、鉱物資源が出る国では、それをめぐった争いが起こることがあります。特に、武力で人を支配しようとする「武装グループ」が争いを起こすことが多く、グループ同士で戦ったり、一般の住民に暴行したりして、鉱物を独占し、お金を得ようとします。
4つ目は「政治」の争いです。例えば、ひとりや少人数が政治を独占する「独裁政権」が続いた時に、住民がその政治に反対して、国内の争い「内戦」を起こすことがあります。
5つ目は「領土」の争いです。例えばアフリカの場合、ヨーロッパの国がアフリカの国を支配する「植民地」の時代に、ヨーロッパの人たちの都合で勝手に国が分けられました。この時ひかれた国境線が実態と合わず、はっきりしないことが多いことから、国同士が領土を主張する紛争が起こることがあります。
ただし、実際には、これらいくつかの問題が組み合わさって争いに発展する場合が多く、戦争や紛争の原因を1つに特定するのは難しいものです。
アフリカの紛争
——アフリカではどんな紛争が起こっているの?
例として、私が専門にしているアフリカの紛争を見てみましょう。
アフリカで最も紛争が激しかったのは1990年代のことです。当時は、世界の紛争の3分の1がアフリカで発生していました。2000年代になって少しずつ減っていきましたが、2010年代に再び増加。2018年時点で21件の紛争が起こっていると言われています。いくつかの紛争を紹介します。
1つは、2010年から2012年に中東・北アフリカ地域の国々で起こった「アラブの春」と呼ばれるものです。チュニジアで始まった民主主義による政治を目指す運動が、隣のリビアに広がり、独裁政治を行っていたカダフィ大佐が殺されました。
しかし、その後リビアの政治は良くならず、周辺の国々も含めて、治安が悪い状態が続きました。
もう1つ、近年増えているのが「イスラム急進派」と呼ばれる人たちが起こす紛争です。イスラム教による統治を目指す人たちですが、いくつかのグループがあり、テロを実行する過激な勢力も出てきています。
政府軍との戦いに加えてグループ同士の戦い、グループ内での争いなどが繰り返されています。さらにその背景には、金やウラン、石油といった資源をめぐる争いもあり、複雑化しています。
紛争が起こす問題
——紛争が起きるとどうなるの?
戦争や紛争が起きると、その国に暮らす人たちは、住むところを失い避難します。多くの人が「難民」として安全な場所を求めて移動します。子どもたちは、教育を受けることができなくなり、児童労働の問題が増えます。
また国が国としての機能を失うと争いが長期化します。すると国の経済がストップしてしまうので、国も人々も貧しさから抜け出せず、悪循環が生まれてしまいます。
幸い、今の日本には紛争はありませんが、世界にはこの悪循環から抜け出せずに苦しんでいる人たちがたくさんいるのです。戦争や紛争を少しでも減らすためには、まずは「知る」ことが大切です。いろいろな国や地域、そしてそこに暮らす人たちについて学んでみましょう。
※画像の無断転載及び複製等の行為は禁止します。
著書紹介
『アフリカ経済の真実─資源開発と紛争の論理』(筑摩書房2020年刊)
豊富な資源があっても、国民のほとんどが貧しい。外資が開発をしても、豊かになれない。そして、終わりなき紛争と大量の難民……。アフリカは、これから発展する「希望の大陸」ともいわれていますが現実は違っており、その貧困には日本を含めた先進国の人々も大きく関わっています。アルジェリア、コンゴ、マダガスカル、マリ、エチオピア、モザンビーク……日本ではあまり知られていない各国の問題点や世界的な搾取の構造を、マクロな視点とフィールドマークで得た経験により明らかにします。
吉田敦(よしだ・あつし)
人間社会学部准教授。商学博士。明治大学商学部助教を経て、2014年から現職。専門は国際経済論、アフリカ経済論、資源開発論、国際関係論。大学生の時に語学研修でイギリスやフランスをまわり、北アフリカ移民のフランス人と友達になったことをきっかけに、アフリカ研究を始めた。学びは「知ること・出会うこと」を信条に、台湾、ベトナム、カンボジア、ミャンマーと、毎年スタディーツアーを開催し、学生を引率。現地の学生との交流を重視し、自主的な学びの姿勢の創造に努めている。2020年7月に『アフリカ経済の真実─資源開発と紛争の論理』(ちくま新書)を上梓。
この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)
関連リンク
この記事が気に入ったらフォローしませんか。
千葉商科大学公式TwitterではMIRAI Timesの最新情報を配信しています。