MIRAI Times社会の未来を育てるウェブメディア

Q&A

物の値段の決め方

——誰がどうやって値段を決めるの?

みんながお店で買う物「商品」の値段は、基本的にはそれを売るお店の人が決めます。ただしその人たちが好き勝手に決めているわけではありません。どれぐらい買いたい人がいて、どれぐらい売りたい人がいるかというのを判断して決めます。

買いたい量を「需要」、売りたい量を「供給」と言います。

この需要と供給は、変化します。今年「新型コロナウィルス」の感染拡大で、マスクがなかなか買えずに困ったのを覚えていますか? 病気の流行がはじまって、人びとの間に感染の不安が広がりはじめると、マスクを買う人が増えました。

売る人は、少し高くても買ってくれる人がいるので、値段を高くしました。つまり、売っている量(供給)に対して、買いたい量(需要)が増えたことで値段が上がりました。それからしばらくは、マスクが売り切れてしまい、買えない状態が続きました。

買いたい人はいるのに、売っている量が少ないので、値段が高い状態が続きました。その間に、マスクが高く売れることに目をつけ、中国などから輸入してマスクを売ろうとする人が増えました。その結果、今度はマスクを買いたい量(需要)に対して、売りたい量(供給)が増えすぎてしまい、値段が下がりました。

小学生が大学の先生に質問

このように、需要と供給のバランスで、値段は変わるのです。

お店ごとの値段の違い

——同じ物でもお店によって値段が違うのはなぜ?

同じマスクでも商品によって値段が違うことがあります。これは、多くの場合、「原産国」つまり商品をつくった国や会社の違いによるものです。日本でつくったマスクに比べて、中国でつくったマスクのほうが安いのは、マスクをつくるのにかかる材料代や働く人のお給料が、日本より中国のほうが安いからです。

しかし、全く同じ商品でも、お店によって値段が違うこともありますね。これは、お店の人が値段を決めるときに、「仕入れ値」と「もうけ」を考えるからです。「仕入れ値」というのは、お店で売る商品を買ってくるときの値段です。

多くの場合、たくさん買うことで仕入れ値は安くなります。「もうけ」はお客さんに商品を売って、売った値段から仕入れ値を引いた金額です。お店を経営する人は、もうけから、お店の家賃や働く人のお給料を払うことになります。

同じ商品でもほかのお店より安いとき、その理由として、仕入れを大量にしたことで仕入れ値が安い場合、もしくは、お店の家賃や働く人のお給料が安いのでもうけが小さくてもいい場合が考えられます。

小学生が大学の先生に質問

そのほかに値段に影響するもの

——急に高くなったり安くなったりしないのはなぜ?

物の値段を決めるのは、需要と供給が原則ですが、需要と供給のいずれかに急な増減があっても、ふつうは値段が極端に上がったり下がったりはしません。先ほどコロナウィルスの影響でマスクが買えなくなったお話をしましたが、それでも薬局などで売られていたマスクの金額は、そんなに高くはなりませんでした。

理由はいくつか考えられますが、ひとつは売る人がお店としての信頼を守るために、買う人の信用をなくすようなメチャクチャな値段はつけられない、ということ。そしてもう一つ、「フルコスト原則」という考え方があります。

これは、物の値段は、材料費やつくるのにかかったお給料など、その物をつくるためにかかった費用の積み重ねで決まるというものです。物をつくる人も、「もうけ」がないとつくれません。かかった費用よりも安く売ることはできないので、極端に値段を下げることはしない、ということです。

どうですか? 物の値段について考える中で、人の考えや気持ちが見えてきますよね。「経済学」はお金に関わることを勉強する学問ですが、同時に人間の行動を分析する学問でもあるので、とても面白いですよ。

田原慎二(たはら・しんじ)
商経学部専任講師。経済学博士。横浜国立大学、内閣府経済社会総合研究所を経て、現職。経済の中でも特に、製造業、商業、サービス業といったさまざまな産業の割合が変わっていく「産業構造変化」や、技術革新などにより経済の規模が拡大する「経済成長」についての研究をしている。

この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)

SDGs目標4質の高い教育をみんなにSDGs目標10人や国の不平等をなくそうSDGs目標16平和と公正をすべての人に
Twitterロゴ

この記事が気に入ったらフォローしませんか。
千葉商科大学公式TwitterではMIRAI Timesの最新情報を配信しています。

千葉商科大学公式Twitter

関連記事