停電の原因
——停電はなぜ起こるの?
停電の多くは、皆さんのお家の近くに走る「配電線」が切れることで起こります。ただ、都市では配電線が密集してたくさん走っているので、簡単には停電しません。どこか1カ所が切れても、電気はほかの線を通ることができるからです。ところが田舎では、配電線が1本だけということがあり、1カ所が切れるとそれより下流のお家ですぐに停電してしまいます。
道路をイメージするとわかりやすいですね。都市では、たくさん道路が走っているので、どこか1本の道路が通行止めになっても、他の道を通って目的地へ行くことができます。ところが田舎では、1本道が多く、その道が通行止めになると目的地に行けなくなってしまいます。
そのほかの停電の原因として、災害などで「発電所」が壊れてしまう場合があります。ふだんは、一つの発電所が電気を作れなくなっても、近くの他の発電所がサポートをして電気を届けることになっています。しかし、大きな地震や津波で複数の発電所が壊れてしまった時は大変です。
壊れずに残った発電所が作る電気を、あまりにも広いエリアに届けようとするために、電気の圧力「電圧」が下がってしまいます。これは、流れている水をたくさんのホースで分けようとするのをイメージするといいでしょう。
通常は、発電量と使用量のバランスを保つことで電気の圧力「電圧」や1秒間の電気の波の数「周波数」を維持していますが、発電量が急に下がるとこのバランスが崩れ、発電機などの機器を守るために次から次に切り離されていきます。この結果、まるでドミノ倒しのように、あたり一帯が次々と停電してしまいます。これを「ブラックアウト」と言います。
2011年の東日本大震災のときは、津波の被害で、広い範囲の発電所が止まりました。その時に、ブラックアウトを起こさないように行ったのが「輪番(りんばん)停電」です。エリアごとに時間を決めて電気を使い、いくつかのエリアをわざと停電させることで、あまりにも広いエリアで電気を使うことによる電圧の低下を防ぐ取り組みです。
輪番停電で電気を流す量と使う量のバランスをとりながら、被害を受けた発電所の修理を急ぎました。このように計画的に停電を行うことを「計画停電」と言って、発電できる量に対して、電気を使う量が急激に増えている発展展途上国などでは頻繁に行われています。
停電からの復旧方法
——停電が起こったら、どうするの?
配電線が切れて起こった停電から復旧するためには、人の手で切れた電線をつなぐしかありません。
ただし、多くの場合、どこが切れているのかを見つけるのが難しく、切れている場所を探すことからはじめます。電気を送る会社の作業員の人が、切れているところを見つけてはつなぐという作業を繰り返していきます。
台風や大雪のときに、テレビニュースで、雨や雪の中、電柱に登って懸命に作業をする人が映し出されるのを見たことがあるでしょうか。私たちができるだけ早く電気を使えるようにと、大変な作業をしてくださる方々には頭が下がりますね。
配電線は、自然災害の影響や動物の衝突など、直接何かが触れることで切れてしまうことがほとんどです。配電線を地下にうめる「地中化」をすることで、停電のリスクを減らすことができます。日本ではまだ数パーセントしか進んでいないこの配電線の地中化ですが、オランダやデンマークでは、ほぼ100パーセントを達成しています。
手嶋進(てしま・すすむ)
基盤教育機構准教授。CUCエネルギー株式会社取締役。外資系コンサルティング会社勤務後、IT、Web解析など複数のベンチャー企業の役員として事業拡大に貢献。2015年から千葉商科大学、学長プロジェクト4のメンバーとして「自然エネルギー100%大学」をめざし、環境・エネルギー分野の研究、活動に携わっている。
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