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Q&A

——レジ袋が有料化されたのはなぜなのでしょうか?

小学生が大学の先生に質問

まず、あなたの身の回りにある自然のものを想像してみてください。草食動物は肉食動物に食べられ、肉食動物はやがて土に還り、植物の栄養になる。必ず誰かの役に立っているでしょう?

でも、レジ袋の原料であるプラスチックは人間が科学の力を借りて作ったもの。便利だけれど、自然に還ることができないために、いろいろな悪さをして持続可能な地球を損ねてしまう原因になるのです。

例えば、レジ袋が海に流れて粉々になったマイクロプラスチックには、発ガン性があると言われています。これを小さな魚が食べ、それを大きな魚が食べて、結果的には人間が食べることになります。

また、クマやシカなど陸の動物がレジ袋を誤って食べて死んでしまうケースも少なくなく、生態系に大きな影響を及ぼしているのです。

さらに、プラスチックは地球温暖化の要因にもなります。日本国内では、レジ袋をはじめプラスチックごみが年間900万トン発生していますが、そのうちの57%は焼却されます。その際に出されるCO2(二酸化炭素)が気候変動に大きな影響を与えるのです。このところ毎年のように発生している豪雨は、この地球温暖化が原因のひとつだとされていますね。

こうした弊害のあるプラスチックを使わない生活を推し進めていくための第一歩として、2020年7月1日から、レジ袋が有料化されることになったのです。

——レジ袋を減らすことによって何が変わるんですか?

実はレジ袋がプラスチックごみに占める割合は、わずか2%にすぎません。それなら今まで通り無料でもいいんじゃないか、と思うかもしれませんね。でも、私たちにとって身近な存在であるレジ袋を有料化することで、「プラスチックを使わない社会をめざそう」というメッセージを多くの人に伝えることができるのです。

最後はごみになってしまう人工物が出回る社会を「ワンウェイ(一方通行)型」と呼びますが、私たちがめざすのは「サーキュラー(循環)型」の社会。

つまり、できるかぎりごみを出さずに、出てしまったごみはリサイクルして使う社会です。江戸時代の日本は、「ごみゼロ社会」を実現していたんですよ。現代に生きる私たちも、このサーキュラー型の社会に変えていく努力をしていく必要があるでしょう。

2050年には、海に流し出されるプラスチックの量が、海に生息する魚の量と同じになるという推計が出されています。レジ袋を使わないという小さな行動が、プラスチック全体への意識を高め、ごみを出さない社会について考えるきっかけになることを願っています。私も、買い物をするときは必ずエコバックを持って出かけることにしていますよ。

小学生が大学の先生に質問

三橋規宏(みつはし・ただひろ)
千葉商科大学名誉教授。経済・環境ジャーナリスト。1964年、日本経済新聞社に入社。主として財政金融政策などマクロ経済政策を担当。ロンドン支局長、日経ビジネス編集長などを歴任後、地球環境問題の深刻さに衝撃を受け、環境問題の研究に乗り出す。国連大学が提唱したゼロエミッション運動の推進者の一人として活躍、2001年4月に第1回ゼロエミッション賞を受賞。97年1月に経済人の環境NGO、「環境を考える経済人の会21、略称B-LIFE21」を立ち上げ、経済人と環境NGO/NPOとの交流を促進する一方、複数の大学で環境講座を開設し、経営者と学生との直接対話に道を開くなど独自の立場から実践活動を続ける。

この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)

SDGs目標12つくる責任 つかう責任SDGs目標13気候変動に具体的な対策をSDGs目標14海の豊かさを守ろう
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