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Q&A

児童労働が多い国と数

——働く子どもはどれぐらいいるの?

世界には学校に行けずに働いている子どもがたくさんいます。

「国際労働機関(ILO)」という機関が調べた統計によると、5歳から17歳で働く子どもは1億5,200万人います。そして、そのうち7,300万人ほどが危険な仕事をしていると推算されています。その約30%を占めるのがアフリカの子どもたちです。ユニセフの報告では、チャド、カメルーン、コンゴ民主共和国、ニジェール、ナイジェリアといった国に多いようです。

ただし、こうした国ではきちんと契約を結ばずに働く仕事がとても多いため、統計で数えられていない働く子どもたちもたくさんいます。子どもが働くことを「児童労働」と言いますが、児童労働の正確な数はもっともっと多いことが予想されているのです。

アフリカの子どもの労働内容

——働く子どもたちはどんな仕事をしているの?

働く子どもたちの仕事はいろいろとあります。例えば、牛の世話や水くみ、薪拾いなど、農村地帯で家族を手伝って働く子どもは多く、これも深刻な問題になっていますが、私の専門であるアフリカで問題になっているのが、子どもの鉱山での労働です。

アフリカには金が採れる国がたくさんあって、南アフリカ共和国、ガーナ、タンザニア、マリなどの国があります。例えばマリでは1年に42万トンもの金が採れています。

こうした国々では金を採る「採掘」作業を行うのに「露天掘り」という方法が多く使われています。地下に穴を掘って機械などで発掘作業を行うのではなく、地表から順々に直接掘っていく方法です。

マリの南側には、350カ所ほどの露天掘りの採掘所があって、きちんと契約をすることなく40万人もの人が働いていると言われています。そのうちの約4万人が子どもです。子どもたちは、大人と一緒に穴を掘り、地下で金を出す作業をします。

小学生が大学の先生に質問

金を掘り出す作業では、「水銀」という身体に害がある物質を使うことから、健康に被害が出ることが多く、マリの露天掘り鉱山で働くほとんどの子どもが、身体に何らかの影響を受けていると言われています。

もちろんこうした違法な採掘が行われているのはマリだけではありません。コンゴ民主共和国には200万人、タンザニアには150万人がいると言われていて、その中にはたくさんの子どもが含まれているのです。

子どもが働く理由

——どうして子どもが働くの?

では、どうしてそうした危険な仕事を子どもがする必要があるのでしょうか。

もちろん国によって事情はそれぞれですが、簡単に言うと、国が貧しいことが原因です。アフリカには、紛争が多く起こって政治が不安定だったり、人口が増加したりすることで、貧しさから抜け出させない国が多数あります。

もう50年以上貧しいままの国もあり、そうした国の農村部では、90%の人が1日約200円で生活しているといわれています。食べものや飲みものなど、生きていくために必要なものを買うために、子どもも働いて、お金を得なければならないのです。

小学生が大学の先生に質問

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そして、子どもが働くために学校に行かないと、生活に必要な文字の読み書きができる人の割合「識字率」が低くなります。すると、正しく契約を結んで働く機会が減ってしまい、貧困が解消されないという悪循環が生まれてしまいます。

この問題を解決するのは簡単ではありません。特に日本のようなアフリカから遠く離れた豊かな国でできることは少ないように思えてしまいます。

しかし、例えばアメリカでは、違法な採掘で取られた金や宝石などの鉱物を使用してつくっている製品の販売を禁止するという法律ができました。こうした法律を作ることで、違法な労働や、金などで得られるお金を原因に起こる紛争を減らすことを目指しているのです。

著書紹介

アフリカ経済の真実『アフリカ経済の真実─資源開発と紛争の論理』(筑摩書房2020年刊)
豊富な資源があっても、国民のほとんどが貧しい。外資が開発をしても、豊かになれない。そして、終わりなき紛争と大量の難民……。アフリカは、これから発展する「希望の大陸」ともいわれていますが現実は違っており、その貧困には日本を含めた先進国の人々も大きく関わっています。アルジェリア、コンゴ、マダガスカル、マリ、エチオピア、モザンビーク……日本ではあまり知られていない各国の問題点や世界的な搾取の構造を、マクロな視点とフィールドマークで得た経験により明らかにします。


吉田敦(よしだ・あつし)
人間社会学部准教授。商学博士。明治大学商学部助教を経て、2014年から現職。専門は国際経済論、アフリカ経済論、資源開発論、国際関係論。大学生の時に語学研修でイギリスやフランスをまわり、北アフリカ移民のフランス人と友達になったことをきっかけに、アフリカ研究を始めた。学びは「知ること・出会うこと」を信条に、台湾、ベトナム、カンボジア、ミャンマーと、毎年スタディーツアーを開催し、学生を引率。現地の学生との交流を重視し、自主的な学びの姿勢の創造に努めている。2020年7月に『アフリカ経済の真実─資源開発と紛争の論理』(ちくま新書)を上梓。

この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)

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