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コラム

千葉県は農業も水産業も盛んですが、都心から遠い地域は人口が減っていて、8市5町が対策をとるべき過疎地域とされています。

そんな過疎地域のひとつである鋸南町に2015年にオープンした「都市交流施設・道の駅保田小学校」が人気です。特に注目を集めているのが廃校を活用した宿泊施設です。学校という地元の資産をうまく活用したこのような試みも、地産地消のひとつです。校舎を建て替えることなく、机や椅子もそのまま利用している点は、SDGsの観点からも望ましいことです。

もうひとつ道の駅の例を挙げます。千葉県長生郡睦沢町にある「むつざわ つどいの郷」は、地元で産出する天然ガスや太陽光で電気をまかなう防災拠点機能を備えた施設として2019年9月1日にオープン。その直後の9日、台風15号により県内は広域にわたって停電しました。
全面復旧まで19日間かかり、エアコンが使えないために熱中症になる人も多くいましたが、「むつざわ つどいの郷」は被害を受けず、冷房・充電設備・シャワーを町内外の人に提供しました。

このように、「エネルギーの地産地消」にも大きなメリットがあります。

地産地消は、わたしたちが普段の生活の中でSDGsに貢献するためにも、そして地元を楽しむためにも取り入れたいアクションといえます。今回は、地産地消のメリットや事例、今できることを紹介していきます。

地産地消とは

地産地消とは、文字通り「地域の産物を地域で消費すること」です。地元産の食べ物を食べることがまず頭に浮かびますが、以下のように、地産地消は衣食住など生活全般にわたります。

地産地消の具体例
  • 地元企業が作った衣服、国産の衣服を選ぶ
  • 近隣で衣類を譲り合う、リメイクする
  • 古着をリサイクルする
  • 地元で生産された農産物、水産物を食べる
  • 地元の食材を地元で加工した食品を食べる
  • 地元の旬の食材を食べる(旬産旬消)
  • 自分で野菜を育てる(自産自消)
  • 地域内で家具や電化製品をリユースする
  • 国産の木材や土を使って家を建てる、リフォームする
  • 古民家、空き家、廃校を解体せずに活用する
  • 廃材を活用する
その他
  • 自宅に太陽光パネルを設置する(自産自消)
  • 地元の再生可能エネルギーを使う
  • 地元の公園や観光スポットで楽しむ
  • 地元の祭やイベントに参加する
  • 近隣のエコツーリズムに参加する
  • 遠方への旅行で、その地域ならではの食や体験を選ぶ

上の表にある「旬産旬消」「自産自消」も地産地消に含めて考えられることが多く、環境負荷が少ないおすすめの方法です。

「旬産旬消」は旬の食材を旬の時期に食べることです。旬の食材は温室栽培よりも暖房や肥料の使用量が最も少なくCO2排出量も少ないうえ、栄養価が高く健康にもいいとされています。

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地産地消にはメリットがたくさんある

地産地消には多くのメリットがあります。以下に地産地消を実践するときのメリットとデメリットをまとめました。

地産地消のメリットとデメリット
  メリット デメリット
消費者
  • 旬ごとの新鮮で栄養価の高い食材を食べられる
  • 野菜や水産品を安く入手できる
  • 生産工程がわかるので食材、素材に安心感がある
  • 地元の文化や伝統を理解し愛着を持てる
  • 地域の人との交流のきっかけになる
  • 食や地元の自然で日本の四季を楽しめる
  • わけあり野菜、古着、廃材などの利用で節約できる
  • 地元産の食材、素材が割高のこともある
  • 選べる商品、サービスの選択肢が少ない
生産者
  • 直接消費者に売ることで収益が高くなる
  • ムダなく生産して売り切ることが比較的容易
  • 消費者ニーズに合う加工品などの商品開発でさらに収益を上げられる
  • 消費者向けの販売にコストと手間がかかる
  • 安定供給の責任が生じる
地域
  • 地域経済が活性化する
  • ジビエ料理、林業など新しい産業を創出できる
  • 地元の生物多様性や環境を保全できる
  • 地元の雇用が創出され、住む人が増える
  • CO2排出量を抑えられる
  • 食料の地産地消は安全保障に役立つ
  • エネルギーの地産地消は送電ロス削減と防災に役立つ
  • 持続可能なサーキュラーエコノミー(循環型経済)が実現する
  • 人材を確保する必要がある
  • 初期投資費用がかかる
  • 事業として成功するためのプランが必要

日本の食料自給率と食料事情

ここで日本の食料自給率を確認しておきましょう。

食料自給率には「品目別自給率」と「総合食料自給率」の2種類があります。このうち「総合食料自給率」は、「カロリーベース」「生産額ベース」の2通りの数値が算出されています。それぞれ以下の通りです。

カロリーベース食料自給率 38%(2021年度)
生産額ベース食料自給率 63%(2021年度)

カロリーベース食料自給率38%という数字は直近10年でほぼ横ばいです。生産額ベース自給率は2012年には68%だったので、やや自給率が低くなっています。

世界の国との食料自給率の比較は以下です。

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出典 農林水産省「世界の食料自給率」(https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/013.html)

諸外国と比較すると日本の食料自給率は低いことがわかります。2022年はロシアによるウクライナ侵略による穀物の高騰、さらに円安という事態が発生しました。しかし、食料の輸入を減らすことはできないため、日本のように輸入依存度が高いと物価高騰は避けられません。このような有事の際の弊害を避けるため、食料自給率を高めるべきという考え方があります。

木材自給率は上昇の傾向

以下は木材の自給率の推移です。最新の木材自給率は41.1%となっています。

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出典 林野庁「『令和4年木材需給表』の公表について」(https://www.rinya.maff.go.jp/j/press/kikaku/230929.html)

2022年にこの数値が発表されたとき、「木材自給率が半世紀ぶりに4割台に回復」というのが大きなニュースになりました。建物での国産材利用のほか、木質バイオマス発電でも森林資源が利用されています。林業者が収益を得ることにより、森林の環境が保全され、地域活性化にも役立ちます。

また、木は成長の過程でCO2を多く吸収するといわれており、政府がめざす温室効果ガスの排出をゼロにする「カーボンニュートラル」の観点からも木材自給率の上昇は望ましい傾向といえます。

食べ物でも木材でも、国産であれば国際情勢の影響を受けにくく安定的に入手しやすいというメリットがあります。ほかにもうひとつ、先ほどふれた温室効果ガスの排出を減らす面からも、自給率を高めること、地産地消をもっと増やすことは有効です。次では、CO2の排出削減に寄与すると注目されている「カーボンフットプリント」について解説します。

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カーボンフットプリントとは?

カーボンフットプリントとは、直訳すると「炭素の足跡」です。商品やサービスがつくられてから消費者のもとで使用され、廃棄されるまでには多くの温室効果ガスを排出しています。カーボンフットプリントは、各過程で排出される温室効果ガスをCO2排出量に換算して表示したものです。

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出典 環境省「原材料の調達から廃棄に至るまでの環境負荷」(https://www.env.go.jp/policy/hozen/green/g-law/jirei_db/haifusiryo/ha_r_H22kanto_tokyo_kogi1_61-80.pdf)

以下はカーボンフットプリントから見た日本の温室効果ガス排出割合です。

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出典 環境省「サステナブルで健康な食生活の提案」(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/sustainable-syoku/mat01-1.pdf)

この図より、家計が占めるカーボンフットプリントの割合は6割以上で、割合の高い順に住居、食と移動、消費財、レジャーやサービスと続くことがわかります。

すべての商品やサービスにカーボンフットプリントが表示されているわけではありませんが、住居や食、レジャーなどわたしたちが生活するなかで意識して行動を変えることでCO2排出量の削減につながります。

地元で生産された商品を購入する地産地消も特に有効です。地元で生産されているので、生産物の流通時などに排出されるCO2量を削減できます。そのほか、食品ロスを少なくする、近い場所には自転車や徒歩で行くなど行動変容もCO2の削減に役立ちます。

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地産地消の課題

冒頭で千葉県の施設の成功例をご紹介しました。鋸南町は過疎とはいえ東京に近く、車でのアクセスもいいので多くの人を集めるという点では有利な条件が整っています。しかし、都市部から離れていて過疎も進んでいるような地域で地産地消を促進しようとしたとき、以下のような課題があります。

担い手と耕作地の減少

地域には農林水産業の担い手の高齢化と不足という問題があります。高齢化や過疎化が進んだ地域では、地産地消を実践しようにも生産者が足りず、耕作放棄地も増えています。地球環境保全やCO2削減のためにも新たな就農者を増やして農地を維持することが求められています。

買い手が十分でなく採算がとれない

生産者が野菜などを持ち込み、一般の人に購入してもらう産地直売所が各地で人気を集めています。地方でも一定の買い手がいる都市部の近くでは成功しやすいのですが、人口が減少している地域では難しいという現実があります。

アイディア・人材・資金の不足

それぞれの地域では地元産品を売るほか、写真に撮ると美しい観光スポットや景観を宣伝するなどの工夫で人を呼び込める可能性があります。しかし、何を売りにするのか、ビジネスの視点で地産地消を考えることができる人材やそのための資金が不足していることもあります。

輸入品や安売り品との競争

日本の果物や牛肉など、世界標準で国際競争力がある商品も出てきました。さらに最近は円安傾向でやや国産品が有利になっています。しかし、国産品は常に海外からの輸入品との競争があります。また、新鮮さ・季節感・手作りの安心感などが魅力の地元の品は、少量生産のためさほど安価にならない場合もあり、輸入・国産を問わず大量生産された安い商品との競争があります。

SDGsと地産地消

SDGsは、2015年に国連で採択された世界共通の目標です。世界中のすべての人々が人間らしく暮らしていくための17の目標(ゴール)が設定されており、地産地消は主に以下のSDGsの目標と関わっています。

7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに

SDGs目標7

地元のバイオマス・地熱・風力などのエネルギーや自宅に設置した太陽光パネルによるエネルギーを使用すればクリーンで、遠方から送電される電力と比べると送電ロスや変換ロスを抑えられます。地元の産業に貢献もできます。

8 働きがいも 経済成長も

SDGs目標8

地産地消により生産者はより収益を上げられ、消費者はいいものを割安で入手することが可能です。農林水産業に従事する人や地元企業の雇用を増やして地域の経済成長を促します。

9 産業と技術革新の基盤をつくろう

SDGs目標9

地産地消は地域の資源を循環させるサーキュラーエコノミーの実現に役立ちます。地域の所得や税収が上がることで新たな技術への投資も可能になります。

11 住み続けられるまちづくりを

SDGs目標11

地域の自然や文化を保全し、よりよい環境にしようという人々の意識が高まります。地産地消の取り組みを介して人と人のつながりが増えることで、楽しく安心して生活でき、災害時に協力し合えるまちになります。

12 つくる責任 つかう責任

SDGs目標12

消費者としてどんな衣食住やエネルギー、サービスを購入するかを考えるとき、地産地消を手がかりにすると、SDGsにかなう選択ができます。生産者は農水産物を地元で販売する場合、規格外の野菜なども安くして売ったり、遠方に出荷する場合よりも包装を簡易にしたりしてムダをなくし、ゴミを減らすことができます。

13 気候変動に具体的な対策を

SDGs目標13

カーボンフットプリントの少ない地元の食材を食べることでCO2排出量を減らせます。また、温室や肥料をあまり必要としない旬の食材はさらにCO2排出量を少なくできます。食べ物以外では地元のエネルギーの選択、休日に地元で楽しむなどの方法により、CO2削減ができます。

14 海の豊かさを守ろう

SDGs目標14海の豊かさを守ろう

台風は熱帯の海で発生し、上空の風の影響を受けて北上します。熱帯から温帯への移動に伴い海面温度は低くなり、台風に供給される水蒸気の量も減少して勢力は次第に弱まるのが従来の図式でした。しかし、世界の海面水温はこの100年で0.56℃上昇しています。温帯地域の海面温度も高くなり、台風が衰えにくくなって各地に被害をもたらしています。

15 陸の豊かさも守ろう

SDGs目標15陸の豊かさも守ろう

消費者は自分が食べるものを作っている田畑の環境を確認できて安心感があり、地域の生物多様性や自然環境が守られます。国産木材を使用すれば収益により森林を保全できます。地産地消の実践により自然と共生しながら人が生活する日本固有の「里山」の伝統を継承していくことができます。

地産地消の事例

地産地消の取り組みの一例を紹介します。

全国の学校給食での地産地消メニューと食育

たとえば千葉県では特産物の落花生を使った「ピーナッツみそ」が学校給食のメニューになっています。給食に地産地消を取り入れる試みが多くの自治体で実践され、定着しています。地元産の食材を使った料理を食べながら食材や生産者について学ぶ機会もあり、食育にも貢献しています。農林水産省は2017年まで「地産地消給食等メニューコンテスト」を実施し、学校給食などで地元食材を活用することを奨励・促進しました。

稲作本店(栃木県那須郡)

米作り農家がクラウドファンディングを活用して「田んぼでカフェ」「田んぼでCAMP」などを開催し、地元小学生の農業体験も受け入れています。「田んぼ」をさまざまな体験ができるコミュニケーションの場として活用しています。農業を起点に2次、3次産業も組み合わせた6次産業化が成功した例でもあります。農林水産省地産地消等優良活動表彰の2021年度全国地産地消推進協議会会長賞受賞。

加古川パスタ(兵庫県加古川市)

農家が共同で立ち上げた農事組合法人八幡営農組合(現 株式会社八幡営農)により、加古川市の北部にある八幡町を中心に栽培されている、日本で初めて品種登録されたデュラム小麦「セトデュール」は、種子生産・栽培・加工までを加古川で行っています。これを原料とする日本初の純国産パスタ「加古川パスタ」が地元の人気商品となっています。農林水産省地産地消等優良活動表彰の2020年度農林水産大臣賞受賞。

わたしたちが実践したい地産地消のアクション

最後に、わたしたちが取り入れたい地産地消のアクションをまとめます。東京や大阪のような大都会に住んでいる人は、地元といえる場所の食材があまりないかもしれません。そんなときはできるだけ生産者が見える国産の食材や素材を選んでみましょう。

地元産、または地元に近い地域の食材を選ぶ

最近はスーパーマーケットでも地域の食材を置くところが増え、生産者の名前が入っている野菜も見かけます。地産地消に関心を持ってみる第一歩として手軽です。

住む場所から近い地産地消の施設へ行ってみる

道の駅、地産地消レストラン、農業体験ができる農園など、楽しみながら地産地消を体験できる場所がたくさんあります。とれたての野菜や市場に出回らない魚など、そこに行かなければ知らなかったおいしさに出会えることもあります。可能なら公共交通機関を利用しましょう。

自分で野菜を作る

自ら野菜や果物を栽培するのも楽しい試みです。小さい子どもがいる家庭では野菜を育てたり収穫したりといった体験は食育に効果的です。食べ物を大切にしてゴミを出さない習慣もつけられます。

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地元の食文化や伝統産業を学ぶ

東京では「江戸東京野菜」を復活させる活動が盛んですが、このような動きは全国で広がっています。伝統的な食文化や地場産業について学んだり体験したりすることで住む町の歴史や魅力を知ることができます。

太陽光パネルを設置してエネルギーを使う

戸建住宅に住んでいれば太陽光パネルや蓄電池を設置してCO2排出量を大きく減らすことができます。冒頭で紹介したように防災にも有効です。

地元の再生可能エネルギーを利用する

地元で契約可能なバイオマス、風力、地熱、太陽光などの再生可能エネルギーがあれば利用を検討してみましょう。

住まいから近い観光スポットを訪れる

自分が住む地域の観光スポットに行ったことがないというのはよく聞く話です。近隣の有名観光スポットはもちろんですが、商店街や公園、海辺や河川敷など、地元の探索も楽しめます。

遠方への旅行では一か所に長く滞在して、地域の食や体験を楽しむ

遠方や海外へ旅行するとき、ひとつの場所に長く滞在して自然や食を楽しみ、地域の人とも交流するというような旅のプランを選択肢に入れてみましょう。

住宅のリフォームや新築で、国産素材を使う

国産木材や国産の漆喰、珪藻土などを使った和風建築の家屋は調湿・断熱機能があり、日本の高温多湿な気候や風土に合っているといわれています。耐久性に優れた国産素材で建てた家を手入れして長く使うことも大事です。

空き家バンクなどを利用して移住する

地産地消を実践し、ときには自産自消もとりいれながら暮らすことができそうな場所へ生活の拠点を移すという選択をする人もいます。若い世代や子育て世代が地方に移住して、コミュニティが拡大している例も増えているようです。多くの自治体が移住受け入れに積極的で、割安で住める空き家やその他の便宜を提供しています。

以上のように小さなことから始まって、多様な地産地消の実践の方法があります。SDGsの目的にかない、地元のよさも発見できるアクションを生活に取り入れていきましょう。

まとめ

地産地消というと地元の食べ物を食べることがまず思い浮かびますが、地域の資源を地域で活用する方法は多岐にわたり、衣食住やレジャー、エネルギーの地産地消があります。

地産地消は消費者・生産者・地域に多くのメリットがあります。地域に雇用や経済成長をもたらします。

日本の食料自給率は諸外国と比べると低く、安全保障とCO2排出量削減の観点から自給率を上げるべきという考え方があります。木材自給率は近年上昇の傾向です。

わたしたちが実践したい地産地消のアクションは、地元の食材を選ぶこと、自分で野菜を作ること、再生可能エネルギーを利用すること、地元の文化や伝統を知り、体験を楽しむことなどです。

この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)

SDGs目標7エネルギーをみんなに そしてクリーンにSDGs目標8働きがいも 経済成長もSDGs目標9産業と技術革新の基盤をつくろうSDGs目標11住み続けられるまちづくりをSDGs目標12つくる責任 つかう責任SDGs目標13気候変動に具体的な対策をSDGs目標14海の豊かさを守ろうSDGs目標15陸の豊かさも守ろう
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