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コラム

近年、日本でも猛暑や大雨被害が増えてきていると感じます。そして世界からも熱波や干ばつ、大規模な洪水のニュースが届きます。
これらの気候変動は「地球温暖化」によるもので、さらに地球温暖化の原因は二酸化炭素(CO2)なのだと、今ではかなり多くの人が認識するようになっています。

しかし、地球温暖化によりなぜ気候変動が起きるのか、今後地球温暖化はどこまで進むのかなどについて正確に知っている人はそれほど多くないかもしれません。

今回は、地球温暖化の原因である温室効果ガス、気候変動が起きるメカニズムなどについて、分かりやすく解説していきます。

近年の気候変動の状況は?

まず、最近の気候変動の状況を見ていきます。日頃私たちは、極端な暑さや空梅雨、季節外れの大雨などを「異常気象」と呼んでいますが、これらが気候変動の具体例です。

2022年に報じられた熱波、干ばつ、洪水などのニュースからいくつか挙げてみます。

オーストラリアで過去最高気温や山火事(2022年1月)

オーストラリアの西部で気温が50℃以上となり、同国の最高記録に並びました。また、2021年から引き続き山火事の被害も発生しています。

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パキスタンの大洪水(2022年6~8月)

パキスタンでは6月から記録的な豪雨が続き、国土の1/3が冠水しました。約1,700人以上が死亡、3,300万人が被災し被害額は400億ドル(約6兆円)と報じられています。シャリフ首相は2022年のCOP27(国連気候変動会議)で、「パキスタンの二酸化炭素排出量は非常に少ないにもかかわらず、破滅的な洪水が起きて犠牲者になった。これは人災だ」と述べています。

ヨーロッパの熱波と干ばつ(2022年6~8月)

フランス、イギリス、スペイン、イタリアその他ヨーロッパ全土で最高気温が40℃を超える熱波と干ばつに見舞われました。EUは調査の結果「少なくとも過去500年で最悪」とコメント。農作物の不作、山火事などの深刻な被害が出ています。

中国長江流域の干ばつ(2022年7~9月)

中国は7月以降、1961年の観測開始以来最も強い熱波に襲われ、長江流域では高温と干ばつが続きました。農産物被害や山火事の他、湖北省では長江の水位低下により水力発電量が減少し、電力不足も発生しました。今季の農産物収量減も心配されています。

ナイジェリアの洪水(2022年10月)

過去10年間で最も深刻な洪水が起きて国内36州のうち34州が被害に遭い、約200万人が被災しました。水不足や衛生環境の悪化によるコレラなどの感染症拡大も報告されています。

日本で初夏に異例の猛暑(2022年6~7月)

日本では6月から7月にかけて異例の猛暑が続きました。東京都心で9日連続の猛暑日は過去最長、年間猛暑日16日も過去最多の記録となりました。

2022年は、この他に南スーダン、バングラデシュ、ブラジルの洪水、アメリカ・カリフォルニアの山火事などもありました。

気象庁は2006年からの世界の異常気象を年ごとにまとめ、Webページに掲載しています。以下は2021年、2020年の状況です。

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出典 気象庁「世界の年ごとの異常気象」(https://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/monitor/annual/annual_2021.html)

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出典 気象庁「世界の年ごとの異常気象」(https://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/monitor/annual/annual_2020.html)

直近3年の動向を見てきましたが、異常気象による被害は毎年数多く発生していることが分かります。

次節から、気候変動をもたらしている地球温暖化と、その原因である温室効果ガスについて解説していきます。

地球温暖化とは何か

地球温暖化とは、1850~1900年以降で急速に地球の平均気温が上昇している現象をいいます。以下の図が示すように、現在までに約1℃上昇しています。特に、1960年代頃から急上昇していることも分かります。

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出典 IPCC第6次評価報告書/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(https://www.jccca.org/)より

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この気温上昇の始まりは、18世紀後半から19世紀にかけての産業革命の時代と重なります。石炭・石油などの化石燃料をエネルギーとして使用するようになり、大気中に多くの二酸化炭素が排出されるようになりました。

しかしもっと以前にも似たような気温上昇はあったのかもしれず、これだけで産業革命と気温上昇に因果関係があるとは言い切れないと感じる方もいるでしょう。

そこでもうひとつ、過去約1400年の北半球の気温を推計した図があります。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第4次評価報告書の中で提示されました。
機器による気温のデータが残るのは1850年以降ですが、それ以前の気候は樹木の年輪や化石などから推定されます。図には北半球の複数の地点、複数の分析方法による推計値が表示されています。

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出典 環境省「IPCC第4次評価報告書(AR4)」(https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar4/index.html)

報告は、「20世紀後半の北半球の平均気温は、過去500年間のどの50年間よりも高かった可能性が非常に高く、少なくとも過去1300年間で最も高かった可能性が高い」と結論付けました。

さらに2021年のIPCC第6次評価報告書では、気温上昇は「過去10万年間で最も温暖だった数百年間の推定気温と比べても前例のないもの」であると明記されました。

今までのところわずか1℃の気温上昇ですが、この温暖化により、地球環境には例えば以下のような変化が起きています。

  • 熱波や寒波、洪水などの気候変動
  • 氷河の融解と海面の上昇
  • 生態系の変化
  • 土地の砂漠化

これらについて、このあと詳しく見ていきます。

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地球温暖化の原因、温室効果ガスとは

地球温暖化の原因は、二酸化炭素(CO2)を含む温室効果ガスです。

温室効果ガスには二酸化炭素の他、メタン、一酸化二窒素、フロン類などがあります。これらの気体は赤外線を吸収して再び放出する性質があり、本来は地球を温暖に保つためになくてはならないものです。温室効果ガスにより地球の平均気温は約14℃に保たれていますが、これらの気体がなかった場合、地球の平均気温は-19℃程度になるといわれています。長い間、温室効果ガスにより適温が保たれてきましたが、現在は急増する温室効果ガスとその影響が問題になっています。

IPCC第6次評価報告書「人為起源GHG排出量の推移」

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出典 IPCC第6次評価報告書「人為起源GHG排出量の推移」より作成/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(https://www.jccca.org/)より

石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料の使用で発生する二酸化炭素が、温室効果ガスを増やす主要因です。二酸化炭素の次に多いメタンは、化石燃料使用や農畜産業などにより発生します。割合は二酸化炭素より低いものの、地球温暖化への寄与度は二酸化炭素の28倍といわれています。

温室効果ガスの排出量は世界で増加傾向です。以下は、世界のCO2排出量の推移です。

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出典 3-04 世界の二酸化炭素排出量の推移/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(https://www.jccca.org/)より

1850年以降から増加が始まり、1950年頃からは急上昇しています。また、先進諸国では温室効果ガスの排出量は減少傾向にあるものの全体に占める割合はまだ大きいこと、アジアでは特に排出量が増えていることも分かります。

排出された二酸化炭素CO2は安定した分子で、空気中に長くとどまります。CO2は植物によって吸収されますが、地球上の森林が減少しているため吸収力が低下しています。

「2015年の12月に全大気中の平均二酸化炭素濃度が初めて400ppmを越えた」という報道がありました。そして、2021年の世界の二酸化炭素濃度の平均は415.7ppmです。産業革命より以前の平均的な値は278.3ppmでしたが今やその約1.5倍になっています。

この他、世界のメタン放出量もCO2ほどではありませんが増えています。「世界メタン収支2000-2017」(2020年)は、大気中のメタン濃度の増加が一時的に停滞した期間(2000~2006年)と収支評価を行った最後の年(2017年)のメタン収支を比較すると、2017年は放出量が約9%増加したと報告しました。

地球温暖化により気候変動が起きるメカニズム

先ほど、世界の平均気温が約1℃上昇したことを述べました。体感温度が1℃上昇するだけであれば生活はそれほど変わらないはずですが、それがなぜ史上最悪の洪水や熱波などの深刻な気候危機をもたらすのでしょうか。以下、その理由を見ていきましょう。

大気中の水蒸気量の増加

気温が1℃上がるごとに、空気が含むことのできる最大の水蒸気量(飽和水蒸気量)は約7%増加します。温暖化により大気中に多くの水蒸気が含まれるようになると、飽和水蒸気量を超えたときに大雨をもたらします。

南極などの永久凍土の融解

アラスカやシベリアでは温暖化により地表気温が上昇し、永久凍土が融解しています。永久凍土からは温室効果ガスであるメタンや二酸化炭素が放出され、温暖化をさらに加速させる懸念があります。

海面温度の上昇と台風の発達

台風は熱帯の海で発生し、上空の風の影響を受けて北上します。熱帯から温帯への移動に伴い海面温度は低くなり、台風に供給される水蒸気の量も減少して勢力は次第に弱まるのが従来の図式でした。しかし、世界の海面水温はこの100年で0.60℃上昇しています。温帯地域の海面温度も高くなり、台風が衰えにくくなって各地に被害をもたらしています。

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気候災害による温暖化の加速化

熱波や寒波では冷暖房を使うためにCO2の排出量が増えます。また、乾燥により山火事が発生すればやはりCO2が排出されます。洪水で多くの家屋が焼失すると廃棄物が増え、焼却処分をするためにCO2が増えます。このように、地球温暖化が気候変動を起こし、気候変動が地球温暖化を加速させるという悪循環が起きています。

地球温暖化に伴う、その他の地球環境の変化

人の活動が排出する温室効果ガスの増加は、気候変動以外にも地球環境の変化を引き起こしています。

海面の上昇

海洋温暖化による熱膨張と、南極大陸などの氷の融解により、海面が上昇しています。IPCC第6次評価報告書(2021年)によると、1901年から2018年の期間に世界平均海面水位は20㎝上昇しました。海抜の低いモルディブ、ツバル、バングラデシュなどの国では国土の一部が失われる可能性があります。

海洋酸性化

自然環境の海水は弱アルカリ性ですが、海水に溶け込む二酸化炭素が増えると海水のpHが下がり、酸性に傾きます。この「海洋酸性化」が進むと、サンゴや貝などが生息しにくくなり、海の生態系に深刻な影響があると懸念されています。また、海水が酸性化することにより二酸化炭素を吸収する能力が低下して、大気中のCO2がさらに増加するという問題もあります。

土地の砂漠化

人為的な森林伐採などでも砂漠化が進みますが、気候変動による水不足で砂漠化する地域も増えています。森林や草原はCO2を吸収できますが、砂漠化した土地はCO2を蓄積する力に乏しく、地球温暖化を加速させます。

農業・水産業への影響

地球温暖化により農作物の収量が増えた土地もある一方で、農地面積の減少や異常気象による収量の減少もあります。水産業では、海水温の上昇の影響として魚種による漁獲量の増減や、養殖時の寄生虫被害の増加などの影響があります。

動植物への影響

IUCN(国際自然保護連合)によると、4万2,100種以上の生物の絶滅が危惧されていて、これは全評価種の27%以上に相当します(2022年12月現在)。地球温暖化の影響を受けている動物として、北極の生息域が狭められているホッキョクグマやアフリカの水不足の影響を受けているアフリカゾウ、海の温暖化で白化するサンゴなどが有名ですが、他にも多くの生物が危機に瀕しています。

このように、温室効果ガスの増加や大気・海水の温度上昇は地球環境にさまざまな影響を与えています。すべての事象は相互に関連し合っていて、全体でより温暖化が進んでいく傾向です。

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地球温暖化はどこまで進むのか

IPCCの第6次評価報告書(2021年)では今後の世界平均気温の変化予測を提示しています。以下は、気候変動対策のシナリオ別の将来予測です。

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出典 2-15 世界平均気温の変化予測(観測と予測)/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(https://www.jccca.org/)より

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出典 2-14 IPCC第6次評価報告書におけるSSPシナリオとは/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(https://www.jccca.org/)より

上図では5つの将来予測が示されています。SSP(Shared Socioeconomic Pathways、共通社会経済経路)とは人が選択する社会経済のシナリオです。気温上昇を1.5℃以下に抑えることができる最も理想的なシナリオがSSP1-1.9、気候変動対策を全く行わなかった場合の最悪のシナリオがSSP5-8.5です。最も深刻なシナリオでは2100年までに地球の気温が最大5.7℃上昇すると予測されています。

どのシナリオでも今後しばらくは気温上昇が続きますが、気温上昇を2℃未満に抑えることができる2番目のシナリオまでであれば、その後の気温上昇が抑えられると予測されています。そのためには21世紀後半までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする必要があります。

この図から、今後の人の行動次第で地球温暖化の未来は変動することが読み取れます。そして、大幅な気温上昇による深刻な気候危機を避けるための行動は今すぐ、世界が団結して行う必要があるということも明らかです。

気候変動対策はSDGsの最重要課題

SDGs目標13

SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」は、上記5つのシナリオの中で「気温上昇2℃未満」を死守し、できれば「1.5℃未満」に近い値までにとどめるためのあらゆる対策を行うことです。国、企業、自治体、個人など全ての主体が地球温暖化と気候変動のことを理解し、重要性を認識して行動をすることが求められています。

まとめ

温室効果ガスの増加によって、産業革命以後に世界の平均気温は1℃上昇しました。人が化石燃料を使って経済・社会活動をしたために大気中に多くの二酸化炭素を排出したためです。

この「地球温暖化」により熱波や大雨などの異常気象、氷の融解による海面上昇、海洋酸性化、土地の砂漠化、生態系の変化などが起きています。

二酸化炭素の排出を抑制する対策をしなければ、2100年までに最大5.7℃気温が上昇すると言われています。一方、二酸化炭素の排出量を減らしていき、20世紀半ばまでに排出量を実質ゼロにできれば、気温上昇を2℃未満に抑えられると予測されています。国から個人まで全ての主体がこの現実を認識して、行動することが求められています。

この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)

SDGs目標11住み続けられるまちづくりをSDGs目標12つくる責任 つかう責任SDGs目標13気候変動に具体的な対策をSDGs目標14海の豊かさを守ろうSDGs目標15陸の豊かさも守ろう
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