インタビュー
25年以上にわたり、持続可能な社会をテーマとした数多くの作品を手がけてきたカール-A・フェヒナー監督。2010年に初監督を務めたドキュメンタリー映画『第4の革命-エネルギー・デモクラシー』は、その年ドイツで最も観られたドキュメンタリー映画となり、これまで38カ国で公開されました。
2016年には『POWER TO CHANGE』を製作。第3作目となる『気候戦士~クライメート・ウォーリアーズ~』は、現在世界が抱えている気候変動問題に立ち向かう気候活動家たちの挑戦に密着しています。 今回、本作のプロモーションで来日した監督が本学を訪問。インタビューを行いました。
——この映画を製作しようと思ったきっかけを教えてください。
私はこれまで「環境問題解決のために今できることは何か」を、約70本の映像作品を通して人々に訴えかけてきました。実は、2010年に公開されたドキュメンタリー映画『第4の革命-エネルギー・デモクラシー』の反響が非常に大きかったことで「自分の役目は終わった」と思ったのですが、周囲から「もっと多くの作品を世の中に送り出してほしい」という声を受け、製作を続けることにしたのです。
本作では、社会に変化を起こしているのはどのような人物なのかを探るため、気候変動という人類への脅威に立ち向かっている気候活動家たちにフォーカスを当てました。環境問題や社会問題を取り上げたドキュメンタリーは多いですが、なぜかどれも問題点ばかりに着目していますよね。私はその逆で、観た後にポジティブな答えを出せるような作品となるよう心がけました。
——映画に登場する人物で特に印象に残っている人はいますか?
約半年の撮影期間で、本当に様々な人物に会いました。なかでもイギリスの原子力発電所の元従業員、ピーター・スミスさんが印象に残っています。彼はそこに勤務しながら原発の廃止を唱えていました。映画には入っていませんが、そのために多くの友人や仲間も失っています。彼はスピーチで「国営の会社だから信じていたけれど、入社後の研修でメルトダウンや事故が起きた際の対処法を教わらなかった。考えれば考えるほど、原発には安全の保証がないと思った」と言っていました。
私も平和のために活動することが正しいと信じ、約10年間軍隊に入っていました。考えが変わり、ジャーナリズムの道を歩むことになったわけですが、自分の信じていたことが実は間違っていたと気づいた時のショックは大きかったです。自分と似たストーリーを持つ彼にすごく共感しましたね。
——日本では、8年前の東日本大震災以降、市民の間で原発への反対意識が高まっているものの、政府は原発再稼働の方針を変えていません。このような日本の現状に対して思うことはありますか?
福島第一原発事故の後で何度も日本を訪れたのですが、実際に福島の惨状を目の当たりにして、大変ショックを受けました。そして、これだけの事故があったにも関わらず、人々が脱原発に向けて本気で動き出していないことに疑問や葛藤もありました。
しかし、今回、千葉商科大学の「自然エネルギー100%大学(※大学所有のメガソーラー発電所などの発電量と大学の総エネルギー使用量を同量にするもので、日本国内の大学で初の試みとして挑戦している)」の取り組みを聞いて、非常に感銘を受けました。特に、電力ではすでに自然エネルギー率(創出エネルギー量を消費エネルギー量で割った値)100%を達成しているという事実が、多くの人に希望を与えるだろうと思います。
私は絶対に社会も人も変えることができると信じています。ドイツでも、2022年までに原子力発電を完全撤廃することが発表されました。間違いなく日本でも変化は起こせるでしょう。
——地球温暖化対策として、個人ができることを教えてください。
私自身が、環境のために実践していることが3つあります。
1つ目が、省エネ住宅「パッシブハウス」に住むこと。使用するエネルギーは、すべてソーラーパネルで太陽光発電を行いまかなっています。ビジュアル的にも美しいし、暮らしているだけでエネルギーの循環を感じられるのが嬉しいです。
2つ目が、国内移動では飛行機を使わず、電気自動車を使うこと。今までの倍以上の時間はかかりますが、移動が充実感を得られる時間に変わりました。静かでクリーンで、一度電気自動車を体験してしまったら、二度とガソリンで走る車を運転したいと思わないですね。
3つ目が、肉食をやめたこと。肉を食べる量を減らすことで、温室効果ガスの排出を抑えられるといわれています。健康にも良い効果を感じているので、これからも続けるつもりです。
これらはあくまで私の選択。身近なところでは、「グローバル気候マーチ」へ参加して地球温暖化や気候変動への対策を求めるなど、何千という選択肢があります。
——最後に、これから映画を観る方へ向けてメッセージをお願いします。
私たちは気候変動が今まさに起きていて、とてつもない脅威であることを事実として認識しています。環境問題を起こす側、解決する側のどちらの立場に立ちたいかを考えた時に、解決する側に立ちたいと思ったならば、どんな小さな行動でもいいので起こして欲しいです。解決する側の立場は自分自身にとても大きな幸福度、満足度をもたらします。皆さんにはぜひそれを実感してほしいです!
カール-A・フェヒナー
映画監督。25年以上にわたって、気候変動問題を追っている。2010年に再生可能エネルギーをテーマにしたドキュメンタリー映画『第4の革命-エネルギー・デモクラシー』で初めて監督を務めた。この映画はドイツで13万人を動員し、同年ドイツで最も観られたドキュメンタリー映画となった。『気候戦士~クライメート・ウォーリアーズ~』は監督として3作目の作品。
『気候戦士~クライメート・ウォーリアーズ~』
気候変動を止める気候活動家たちの挑戦に密着したドキュメンタリー。温室効果ガスの削減に向けて米国政府を提訴した17歳の米国人活動家や、再生可能エネルギー普及に取り組む研究家などの姿を追う。ヒューマントラストシネマ渋谷(東京都渋谷区)、横浜シネマリン(横浜市中区)で公開中、全国で順次公開予定。
http://unitedpeople.jp/climate/
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