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インタビュー

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海に捨てられるプラスチックは年間800万トン。それらは永久に分解されず、微小なマイクロプラスチックとなって海中を漂い続ける、あるいは海底に沈むと言われています。こうした海洋汚染の実態を、さまざまな角度から浮き彫りにした映画が、本記事で紹介する『プラスチックの海』です。

監督は、シロナガスクジラに魅せられ、幼い頃からその生態を追い続けていたというクレイグ・リーソン。短縮版が国連総会で上映されるほどの話題作です。2016年に制作されて以降、世界70カ国以上で公開されてきましたが、今回、日本でも上映されることになりました。

MIRAI Times編集部では映画公開に先立ち、本作を配給するユナイテッドピープル株式会社 代表取締役 関根健次氏に単独インタビュー。配給を決めた理由や見どころ、海洋プラスチック問題についての見解を聞きました。

——まず、この映画を日本に紹介しようと思った理由からお伺いしたいです。

この作品を見た時に、「届けなければならない」という義務感を感じたんです。なぜかというと、本作が局地的なあるエリアの特定の事象だけではなく、プラスチックゴミが地球に与える影響の全体像を教えてくれる作品だからです。

たとえば、プラスチックゴミの中で暮らすフィリピンの人たちや、知識不足がゆえにプラスチックを着火剤として使用し健康被害にあうフィジーの人たち。さらには、人間だけではなく廃棄されたプラスチックゴミによって、被害を受ける海洋生物に対しても目を向けさせてくれます。全体像が分かるという意味で、非常によくできた作品だと感じました。

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また、調査していく姿勢に感銘を受けたことも、配給を決めた理由のひとつです。映画の中には複数の科学者が登場しますが、さまざまな角度からこの問題を提示してくれます。海ひとつとっても、海の正面だけではなく、潜水艦を使って海底に沈んでいるプラスチックゴミも取材しています。この作品から、製作者・監督の「プラスチックゴミをなんとかしたい」という強い意志を感じました。

強い意志というのは、グリーンエコノミーに便乗してひと儲けしようというものではありません。本当に純粋な、生命や未来の世代に対する愛なんです。この純粋なメッセージが僕自身にズドンと届き、そのエネルギーをそのまま伝えたいという気持ちにさせてくれました。これが、本作の配給を決めた理由です。

——さまざまな角度から海洋プラスチック問題について描かれている本作ですが、中でも海鳥の胃袋から大量のプラスチックが出てくるシーンに衝撃を受けました。関根さんの中で、特に印象に残っているシーンは?

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海鳥の胃袋に大量のプラスチックがたまっている様子は、写真では何度も見たことがありました。しかし実際、映像として見るのは今回が初めてで。研究者が海鳥の死骸にメスを入れて、取り出して見せてくれるわけですが、写真ではなく前後も含めて一連の様子を目の当たりにすると、生物にどれだけダメージを与えているのかと、悲しくなりますよね。

海鳥のシーンは印象に残っているシーンのひとつですが、それともう1箇所、アザラシの首のまわりに漁具のような紐が絡まって、逃げようとしているにも関わらず逃げられないシーンもショックでした。僕自身、漁業の直接的な影響について、あの映像を見るまで知らなかったんです。

実は今、福岡の海沿いに住んでいて、海岸のゴミ拾いをすることがあるのですが、漁業系のゴミはたくさん落ちています。先日も、バスケットボールほどの大きさのブイを拾ったばかりです。日本語表記のものも多いですが、中には中国語や韓国語表記のものもたくさんあります。

漁具のほかにも、使い捨ての髭剃りや歯ブラシなどが、アジアからたくさん漂着しています。これだけ見ても、海はつながっているので、日本だけではなく世界が一緒になって、この海洋プラスチック問題に取り組んでいく必要があると分かります。

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——豊富な海外経験をお持ちの関根さんから見て、海洋プラスチック問題に対する日本の意識は、世界と比較してどうでしょうか。

主観になりますが、日本の環境意識は比較的高いほうだと思います。今年の7月にレジ袋が有料化されました。これはドイツなどと比較すると遅くはあるのですが、世界200カ国弱ある中では早いほうです。ゴミ問題に関しては環境省を含めて一生懸命に取り組んでいます。また、国民一人ひとりの環境意識も高いと感じます。

僕は環境立国であるコスタリカに住んでいましたが、コスタリカではリーダーたちの環境意識が高くても、国民意識がついていかないんです。それに対して、日本人はルールができるとそれを守りますし、トレンドに乗りやすい国民性でもあります。なので、トレンドさえ作ってしまえば、こういった問題は解決に結びつきやすいと思いますね。

——レジ袋有料化をきっかけに、レジ袋をもらう人が減りました。これ以外に、僕たち個人はどのようなことを心がけていくべきですか。

リユース(繰り返し使うこと)とリデュース(ごみの発生、資源の消費をもとから減らすこと) を進めていくことが重要です。レジ袋を例にあげるなら、1回で捨てていたレジ袋を10回使ったり、マイバッグに置き換えたりです。

では、どれだけのアイテムで、リユースとリデュースを進めるべきかというと、数え切れないほどあります。たとえばペットボトル。驚くべきことに、アメリカだけでも年間数十億本ものペットボトルが捨てられています。

ビニール傘もプラスチック関連アイテムですが、日本では年間1億本以上の傘が捨てられているとの推計もあります。この廃棄されたプラスチックの一部が、海まで到達してマイクロプラスチックになっています。

どんな素材であれ、世界中の人たちが「すぐに捨ててしまうのはもったいない」「再利用できないか」と考える必要があるでしょう。意識のない消費者から、意識のある消費者への転換が重要なんです。

僕はマイボトルを何本か持ち歩いているので、ペットボトルを使うことは皆無ですし、愛用のマイ傘を使い始めてからビニール傘を買わなくなりました。一人ひとりが少しずつ行動を変えていけば、この世界の大きな問題も解決につながるだろうと考えています。

——なるほど。一人ひとりが「意識のある消費者になる」ということですね。

はい。よく「買い物は投票だ」と言われるんですが、何を買うかによって、その先にある企業や産業を応援することになります。たとえば、ECOALF(エコアルフ)というスペインのファッションブランドは、ペットボトル、漁網、タイヤなどの再生素材や環境負荷の低い天然素材のみで製品を作っています。

僕もペットボトルをリサイクルしたレインコート を愛用しているのですが、そういった商品を買うことで、サーキュラーエコノミーを応援することができます。ですから、ひとつはお金の使う先を変えることです。

もうひとつは、そもそも買わないという選択肢を考えること。WANTSとNEEDSはまるで違います。服を例にあげると、シーズン毎に新しいものを買う必要があるのかどうかを、買う前に立ち止まって考えるべきです。

サイクルの短いファストファッションではなく、たとえ価格が10倍であってもハイブランドのものを買って、それを長く使い続けるという選択肢もあります。そうすれば、必要以上に買うことがなくなるはずです。こういった意識のアップデートを至るところで行っていけば、トータルで莫大な量の資源が捨てられずにすむのです。

——最後に、この映画をどのような人たちに見てほしいですか。これから映画を見る人に向けてメッセージをお願いします。

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未来に長く生きるのは若い世代ですが、今の社会を動かしているのは社会人や有権者の方たちです。学生さんにはもちろん見てほしいのですが、社会人・有権者の皆さんにも見てほしいですね。そして、行動を起こしながら社会変革につなげてほしいと思っています。

どんな社会変革かというと、政策への反映です。認識が変わり、行動を変えようとする人が増えれば、社会の雰囲気は変わります。その連続の中で、レジ袋有料化のような動きが生まれます。こうした動きは、他の分野へも広げられるはずです。

ある人から、「もう啓蒙だけでは間に合わない」という話を聞き、「その通りだな」と思いました。当社も啓蒙活動にとどまるつもりはありません。社会変革につなげていきたいと考えています。この映画を見て、僕のように心を揺さぶられたら、ぜひ行動を変えてほしいです。

ユナイテッドピープル株式会社 代表取締役 関根健次(せきね・けんじ)
ベロイト大学経済学部卒。2002年、世界の課題解決を事業目的とするユナイテッドピープル株式会社を創業。2009年から映画事業を開始し、社会課題やSDGsをテーマとした映画の配給を行う。映画『もったいないキッチン』プロデューサー。著書に『ユナイテッドピープル』がある。国際平和映像祭代表理事、ピースデー・ジャパン共同代表、PEACE DAY財団理事も務める。

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『プラスチックの海』
海に捨てられるプラスチックは年間800万トン——。それらは永久に分解されず、微小なマイクロプラスチックとなって海中を漂い続ける、あるいは海底に沈むと言われています。こうした海洋汚染の実態を、さまざまな角度から浮き彫りにするドキュメンタリー映画。2020年11月13日(金) アップリンク渋谷・吉祥寺・京都ほか全国順次ロードショー! 最新情報は映画公式HPより。https://unitedpeople.jp/plasticocean/

この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)

SDGs目標14海の豊かさを守ろうSDGs目標17パートナーシップで目標を達成しよう
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